街の農薬汚染にもどる
t16701#緑の安全推進協会「人の健康や環境へのリスクを低減した樹木等の病害虫防除に関する手引き」を発表#05-07
 【参考資料】農水省消費・安全局長通知
 【参考資料】電子版「脱農薬てんとう資料集」No.1
       <住宅地や学校での農薬散布について>
 【関連記事】記事t16501 記事t16602

 6月は農薬危害防止月間でしたが、相変わらず、生活環境での農薬撒布に関して2003年の通知「住宅地等における農薬使用について」(以下「通知」)が守られていないという相談が相次ぎました。各地の会員からの報告によると、通知には強制力がないから守る必要はないなどというところもあったようです。通知が出てからまもなく2年になろうとしているのに、この周知の不十分さはどういうことでしょう。
★昨年の要望  昨年7月、反農薬東京グループは、農水省消費安全局長宛に「樹木等農薬使用にかんする要望書」を提出しました(記事t15601)。  −中略−  農薬対策室は今年5月16日に、新たに全省庁に対して「住宅地等に近接する官有地等における農薬使用について」という消費・安全局長通知(17消安第1142号)を出し、迎賓館や議員会館などの官有地での農薬散布に注意を喚起しています(記事t16503参照)。また、個別の事例に丁寧に対応したり、努力していることは評価に値します。
 しかし、それにしてもモグラたたきであることには変わりありません。病害虫の有無にかかわらず定期散布することや、病害虫が発生したとしても他の方法を検討せず、いきなり農薬散布することに対しては罰則を考えるべきではないでしょうか。特に、大量・多種の農薬を日常的に使用する防除業者に対して規制を厳しくすべきです。2001年度22,516あった防除業者の数すら現在では、把握できなくなっています。

★樹木の病害虫防除に手引き
 こうした中で、農薬対策室は(社)緑の安全推進協会に依頼して「人の健康や環境へのリスクを低減した樹木等の病害虫防除に関する手引き」(以下「手引き」)を作成しました。7月5日に緑の安全推進協会のホームページに載った手引きの内容は、通知「住宅地等における農薬使用について」の内容を詳しくし、具体的な方法を解説したものです。昨年、私たちが要望した内容のAにも即しているでしょう。
 この手引きは、私たちの情報提供や東京都の子どもガイドライン「殺虫剤樹木散布編」パンフレット詳細版)などを参考にしているようです。しかし、東京都のガイドラインに関しては、昨年、私たちが要望して訂正されている箇所がいくつかありますが、それが反映されていません。12頁に「関係者への通知例」として表が載っていますがこれは東京都が訂正する前の古い表です。
 この表には例として毒毛虫(チャドクガ)が発生したのでカルホス乳剤を散布するとありますが、東京都の訂正後の表にはチャドクガは除かれています。チャドクガは農薬散布して殺しても毒毛が残り、それで被害を受けるのでしっかり防護して手取りする以外ありません。この点を考慮して東京都はチャドクガを表から除いているのです。これを使うのであれば、やはり、訂正後の表を使うべきだと思います
。  参考資料には「屋外樹木に発生しやすい害虫の発見ポイントと防除の注意点」とか、樹種別発生しやすい害虫と発生時期、農薬以外の防除法」などが掲載されていて参考になります。
 できたら、まちがってテントウムシやヒラタアブの幼虫を殺したりしないよう、またほうっておいてもいい虫などわかるように虫の写真を入れてしてほしかったと思います。なにしろ、農薬散布を委託する行政担当者は、虫を十把ひとからげに「毛虫」と呼び、見つけたら直ちに農薬散布!と叫ぶ人が多いものですから。また、そのような情報提供は一般の人にも大いに参考になるでしょう。
 また、手引きでは、人の健康や環境リスクを低減した病害虫防除の優良事例として、東京都や埼玉県、世田谷区などの事例のホームページや、防除の実施の際に参考になるその他の情報としていくつかの行政のホームページも紹介しています。これも参考になるのではないでしょうか。でも、反農薬東京グループのホームページが載っていないのは腑に落ちませんが。

★農薬の毒性も周知するようにと
やむを得ず、農薬散布する場合には事前に周辺住民などに周知することになっていますが、その内容はまちまちです。この手引きでは、農薬散布についての告知事項として
  ・散布予定日時、及び中止・延期する場合の条件
  ・防除対象の病害虫名と発生状況
  ・対象となる植物の種類と位置
  ・散布する農薬の名称と散布予定量
  ・散布する農薬の主なハザード(使用方法等に関わらず農薬が個々に有する有害な
   性質)とリスク(飛散した場合や適切に使用された場合に被害を及ぼす可能性な
   ど)と対処方法
  ・散布前後の具体的な注意事項
があげられています。農薬の主なハザード(毒性)を知らせるというのは、今までにない提起で評価できます。これを厳密に実行してもらいたいものです。
 また、「施設管理者は農薬散布の記録を3年以上保管し、要望があれば公開できるようにする」という注意書きもあって、通知の「一定期間」を具体化しています。と、思って続きを見ると「農薬を使用する際の実施基準」の「農薬の散布記録」の項にはやはり「一定期間」とあり、統一されていません。

★風速3m以下の根拠は?  −省略−

★薬液が乾けば安全?  −省略−

★通知は、樹幹注入を推奨しているが  −省略−
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★どうやって手引きを周知するのか
 手引きはいくつか不満もありますが(直してほしいところを要望しようと思っています)、通知以上に踏み込んだところもあり、大いに評価できると思います。これを自治体などの農薬散布委託者や防除業者に是非とも守っていただきたいと思いますが、農水省の消費・安全局長の通知すら周知されていない現実があります。どうしたらこの手引きが人々に知られ、権威あるものとして受け入れられるでしょうか。
 まずは、この手引きが農水省の方針であることをはっきりさせるために、農薬対策室は、ホームページのリンクだけでなく、消費安全局長のお墨付きを与えることが必要かと思います。手引きの前文に書いたらいいでしょう。何しろ、お役所は権威主義ですから、緑の安全推進協会の手引きでは守る必要はないと言いかねません。
 また、ホームページだけでは無理だと思います。冊子にした上で少なくとも市町村レベルまでに配布する必要があります。
 さらに、手引きは、農薬の適正使用を指導・推進する資格認定者として、緑の安全管理士、農薬管理指導士、農薬適正使用アドバイザー、防除指導員、植物保護技術士などをあげていますので、まず、この人たちに徹底して実践してもらえるよう指導していただきたいと思います。そうしてはじめて、緑の安全推進協会に委託したメリットが出てくるでしょう。

【参考となる行政のHP】埼玉県 東京都世田谷区 石川県金沢市
   大阪府・食とみどり技術センター 高知県農林水産部環境農業課


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作成:2005-07-25