農薬空中散布・松枯れにもどる
t16703#浜松遠州浜空散での県の健康被害調査のいいかげんさ〜国会で健康被害はなかったと答弁した林野庁長官の責任を問う#05-07

   【参考資料】無人ヘリによる松くい虫防除に関する運用基準作成のための検討会
       10月 4日:第1回の概要配布資料一覧 議事録
       10月25日:第2回の概要配布資料一覧 議事録
       12月 7日:第3回の概要配布資料一覧

 記事t16601でお知らせしたように、6月13日、岡崎トミ子議員が参議院行政監視委員会(05/06/13の参議院議事録)で、浜松市遠州浜での農薬空中散布に関して質問しました。その中の健康被害の質問に対して、前田林野庁長官は、以下のように答弁しました。

 「政府参考人(前田直登君) 今、先生お話ございました地元の市民団体、こちらの方々がこの特別防除実施後の早々にアンケート調査を実施したと。その結果、体に異常を感じた人が百十人中三十五人いたという話を、私どもも地元の市民団体の方々から直接お話をお聞きしたところでございます。このために、私ども直ちに静岡県に連絡して聞きましたところ、六月六日に県が医療機関あるいは幼稚園を含みます防除実施区域の周辺の住民に対しまして健康被害に関する聞き取りを行ったということのようでありますが、その中では薬剤散布との因果関係のある健康被害が発生したということの事実は確認できないということでございました。」

★電話で聞き取りとは
 市民団体のアンケート調査は信用できないので、県が聞き取り調査をしたら、健康被害の事実は確認できなかったという答弁です。岡崎議員がその調査結果を要求したところ、半月以上もたってから林野庁が静岡県からの報告を送ってきました。「静岡県浜松市遠州浜における平成17年度松くい虫薬剤散布に関する健康被害調査」と麗々しく銘打っていますが、A4一枚の簡単なものです。聞き取り調査の担当は静岡県環境部森林整備室です。
 どのような科学的調査をしたのか見てみましょう。
 まず、調査対象は、A幼稚園(副園長)、B医院内科(医院長)、C幼稚園(園長)、D小学校(教頭)、E連合自治会長(会長)、F自治会(会長)、浜松市担当部署(生活衛生課、生活増進課、保健所の担当者)、浜松市農政課、静岡県西部農林事務所森林整備課です。主に電話ですが、市の担当者などは直接聞き取りとなっています。
 まず、施設の責任者への電話での聞き取りという方法が問題です。そもそも、県も市も空散後、どのような健康被害が出る可能性があるかを知らせておりません。浜松市・静岡県西部農林事務所の出した「松くい虫防除のための空中散布のお知らせ」は、平成9年5月8日付け事務連絡「特別防除の医療機関等への周知徹底について」で指示されている農薬中毒の症状、万一に備えての病院の紹介などが書かれていませんでした。
 農薬中毒の軽症の症状として、頭痛、吐き気、めまい、下痢などがありますが、こうした症状を書き、周辺住民に注意を促すことになっています。また、万一に備えて病院を紹介し、そこには「農薬中毒の症状と治療法」を送っておかなければなりません。もし、そうした準備をした医療機関があれば、そこに患者が来たかどうか聞けばいいのです。

★行政の末端ばかりに聞いてどうする
 さらに、電話をかけた相手は、施設の責任者か、市の職員など空散推進派ばかりです。被害を受けるのは周辺住民であり、子供であり、農薬弱者です。このような人に直接聞かないで、空散を支持している人々にいくら聞いても、健康被害の実態がわかるはずがありません。
 空散実施の要望書を出した自治会長は「散布後、体調が悪くなった人がいるというのは聞いていない。アンケートが行われていたことも聞いていない」「アンケートをとったことも、体調が悪くなった子供がいることも噂すら耳にしていない」と答えたということです。
 この人たちは、「もし、体調が悪くなったら、自治会長に報告してください」と周知していたのでしょうか。個人の症状は風邪とほとんど変わらないため、それが農薬によるものであるか判断できません。症状を知らせて広範に調査して初めてわかるものです。そういった作業をせずに、回答するのは無責任ではないでしょうか。
 空散の実施主体の市農政課や県西部農林事務所は自分で自分に聞いていますが、回答は「アンケート結果以外では市民からの健康被害等の訴えはなし」です。この回答は、市民団体のアンケート調査を頭から無視しています。35人の健康被害がないものとして扱っています。

★調査した上で回答すべき
 また、回答した側の問題点ですが、空散実施者の行政から電話で空散時に農薬中毒患者が出たかと聞かれたら、少なくとも「調査しますから待ってください」と答えるべきではないでしょうか。B医院は「中毒症状の人は来ていない」と回答したということですが、頭痛や、吐き気、めまいなどが軽症の農薬中毒であることを認識していたか不明です。
 また、A幼稚園は「23日に体調を崩した子供、鼻血を出した子供もいた。しかし、そのような子供が出るのは、散布日に限ったことではない」という回答だということですが、その前後の状況を調査して異常であったかなかったか判断するべきです。  D小学校は教頭が「23日に具合の悪くなった子供はいなかった」と答えたということですが、養護の教員に聞いたのでしょうか。それとも、保護者に問い合わせたのでしょうか。それこそ、アンケート調査をした上で回答すべきです。
 県や市が行った聞き取り調査は、行政の圧力の元での電話取材であり、しかも、回答者が本人でない管理者であって、バイアスがかかっているものです。市民の調査を否定するために行われたとしか思えません。
 これなら、市民団体が実施したアンケート調査の方がずっと科学的です。少なくとも110人に聞いています。このようないいかげんな調査をもって、国会で「健康被害はなかった」と答弁した林野庁長官の責任が問われるべきでしょう。
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作成:2005-12-25