街の農薬汚染にもどる
t17302#通知「住宅地等における農薬使用について」に関するアンケート調査結果(1)通知があっても、健康被害が多数発生#06-01
   (2)散布者の半数は業者
   (3)半数が通知を知らない、今後は罰則強化の声が多い

 05年11月にてんとう虫情報の読者の皆様を対象に、農薬散布による健康被害と03年9月の農水省消費安全局長通知「住宅地等における農薬使用について」(以下、通知)に関するアンケートをお願いしました。回答してくださった皆様にあつくお礼申し上げます。
【アンケート調査用紙】はこちら
 期日までに100通の回答を得ました。このうち、4通はシロアリ駆除剤やゴキブリ駆除剤の被害であったため省き、通知に関して「てんとう虫情報」に投稿していただいた事例16件を加えて113件の事例を分析しました。対象が「てんとう虫情報」の読者であったため、問題意識は非常に高く、ほとんどの方が解決のために何らかの行動を起こしています。しかし、すんなり中止という事例は少なく、依然として通知の遵守がなされていない実態が浮き彫りになりました。

 問題となった事例が発生した時期ですが、通知が出される以前の事例は28件(24%)で、四分の三は、通知以後に起きたことです。
 以下、アンケート結果を報告します(紙面の関係で2、3回に分けて掲載する予定)。  なお、各設問の該当件数の合計は回答総数の113とは、必ずしも一致しませんが、これは、複数の回答が記載されている場合であり、農薬散布の実態が複雑なことの現れです。

1,問題事例について
★発生した場所<113中回答なし1件>
 場所別の件数を図1に示しました。

    図1 散布場所別件数 −省略−

 農地(水田、畑、果樹園、その他)が35件で最も多く、ついで、近隣の個人宅が24件、団地・マンション18件という順になっています。自治体などには通知を遵守するようクレームをつけやすいのですが、個人宅だとなかなか言いにくいという面もあり、今後の課題といえます。
また、その他の場所26件を見ると、以下のように非常に広範囲にわたっており、あらゆるところで農薬散布がなされていることがうかがわれます。
 病院/観光地:3件/公共の施設:5件/寺/神社/職場/側溝路線の除草/学校と隣接する野球場/住宅地空き地/駐車場:4件/集合住宅バルコニー/動物園/社宅/中学の近く/ビルの植え込み/山林/国の施設

★散布形態 <113中回答なし3件>
 農薬散布の形態別の件数は図2のようでした。

    図2 農薬の散布形態別件数 −省略−

 やはり、動力噴霧による地上散布が圧倒的に多く、76件ありました。また、最初のアンケートの選択肢には「手で散布」という項目が抜けていましたが、「個人が散布」に分類した16件の中には、除草剤や殺虫剤をジョウロで散布するとか、手で粉末の除草剤を撒くが6件あります。農薬の危険性を認識していない人が安易に撒いているということが推察されます。

★農薬の種類 <113中回答なし4件>
 では、どのような農薬を散布されたのでしょうか。図3に薬剤別件数を示しました。

    図3 農薬の種類別件数 −省略−

 殺虫剤が79件と半分を占めています。除草剤が35件あり、生活環境で安易に除草剤が使われていることがわかります。

2,健康被害について ★健康被害 <113中回答なし20件>
 健康被害を受けたと報告した事例が93ありました。回答のない人には健康被害を受ける前に中止してもらった人や、事前に問い合わせて散布場所へ行かなかった人などが5件含まれます。

○健康被害を受けた人
 本人66、子供28、知人9、その他1 となっています。
 本人が健康被害を受けた例が一番多くなっています。子供が28というのは、予想より少ない感じがしますが、同一家族で複数人数が被害を受けている例もありました。

    表 健康被害の内容 −省略−
 からだがだるい42件や頭が重い・痛い38件を筆頭に、呼吸器系や消化器系、目鼻や喉の異常を訴える症状が多くみられます。
 表以外に、その他としてあげられている症状は下記の通りさまざまです。意識障害、意識混濁や一過性記憶喪失は別々の人が報告していますが、重篤なものであれば大変です。
     右半身しびれ/鼻が痛い/脳神経障害(テレビの音で気持ちが悪くなる、
     将棋をするとめまいがして立てなくなる)/筋肉痛/関節痛/胸痛/
     血圧上昇/大腸の働きが鈍くなる/体が重くて起きあがれない/眠り続ける/
     湿疹/思考力・運動機能の低下・身体硬化/リンパ腺が腫れる/昼間なのに目の
     前が薄暗くなる/意識障害/舌が痛くなる/血痰がでる/動悸/手が真っ赤に
     腫れた/顔がひりひりして赤くなった/冷や汗/体中が痛む/目の奥から頭の
     後ろがものすごく痛む/口の中・肺が痛い/首・肩が痛い/唇周辺のしびれ/
     上あご粘膜の痛み/目の痛み/目が開かずまぶたが腫れる/咳発作/3週間続き
     寝込んだ/血圧・脈・粘膜などの異常/肩に人が10人くらい乗ってきた感じ/
     腸閉塞のような症状/一過性記憶喪失/とにかく苦しい/嘔吐を伴う激しい頭痛/
     目やに/頻尿/手足の皮の一部がなくなり腫れる/意識混濁、
★健康被害以外の悪影響 <113中回答なし61件>
   健康被害以外にどのような影響を受けたのかという設問で、自由記入してもらい、52件の回答を得ました。
 犬・猫の被害や農作物等・自転車への農薬飛散による物損のほか、精神的、経済的、心理的被害も数多く寄せられています。
 室内汚染は、農薬の直接飛散によるものでしょうか、それとも気化した農薬による空気汚染のせいでしょうか。
 健康被害防止のため、登校をやめざるを得ない子どもたちがいることも問題です。
○自分が栽培している農作物等への被害
 ミツバチ12群/自宅庭で栽培の果物にかかる/子供たち(小学校)の畑のイチゴがスミチオン液で
 白くじょぼじょぼになり抜いた/無農薬栽培をしているのに農産物に農薬がかかる/自宅に空散さ
 れた
○人間関係
 人間関係のギクシャク/自治会長と喧嘩して胃が痛くなった/散布者に問い合わせたり、申し出た
 りしたことで一時非常に関係が悪化し、精神的にダメージ
○室内汚染
 室内汚染/家中が農薬で汚染されてしまった。後始末が大変。/室内汚染(臭いが復活する)/
 除草剤がガス化して部屋に入り、洗面所、風呂場が使用不可能になった/布団、洗濯物に散布され、
 農薬が直接付着し、臭いがいつまでも消えないと苦情が多くあった/部屋に薬剤が入り、寝室が
 半年使えなかった/冷蔵庫、冷凍庫、他食料品、寝具などの汚染のため処分/家財道具すべてが
 汚染され、使用できなくなった。着の身着のままで避難せざるを得なかった
○生活への支障 
 干し物、仕事などを始め電話すらできない/うろたえて前後不覚。思考力、記憶力の減退/
 買い物にいけなくなった/洗濯物が干せない/除草剤の撒き方がひどく、気持ちが悪くて歩けない

○引っ越しせざるを得なかった 4件
 家を建てたばかりだったが引っ越ししなければならなかった/その家に住めない。他県の実家で
 暮らす。経済的損失大/引っ越しせざるを得なかった。精神的苦痛、経済的負担を強いられた/
 3日間避難した
○犬や猫などの被害
 散歩の犬が被害にあった話を聞いた/草を食べた猫が吐いた/他の人数名から聞いたことですが、
 農薬使用後のところに犬を散歩に行ったため、犬が吐いてぐったりした/
 魚が浮いていた(刈谷市いがや公園)
○自転車などに農薬がかかった
 自宅や自転車に散布剤が付着しべたべたする/自宅や自宅前に止めておいたバイクに散布剤が付着。
 しばらくバイクに乗れなかった/自転車にかかった
○経済的負担
 定期散布の都度、避難するので出費がかさむ/仕事ができなくなる/職場散布のために失職した
○心理的負担
 自律神経が冒されたため、物事にこらえることができなくなり、怒りっぽくなり、
 キレやすくなった/現在2歳になる娘への影響が心配/心理的にストレス/「オイ!オマエ何やっ
 てんねん」と何回も男の人の声が聞こえてきた。玄関に虫を集めておいてあった。5,6匹。別の日
 には白い液体がかかっていた。/臭いがいや/木に水をホースでかけるように農薬を撒いているの
 を見るだけで気分が悪くなる。
○登校できない
 学校と隣接していたため登校できなかった/農薬散布後、学校のクラスの教室へ入れなくなった/
 散布が子供が参加する予定の行事の直前であれば、参加できなくなる可能性があった/通知を守っ
 ておらず、看板等の掲示もなく、通行人等への影響が心配/子供が遠足に参加できなくなる可能性
 があった/授業を受けられなくなった/学校に行けない/学校帰りの小学生に農薬がかかっていた

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作成:2006-06-26