空中散布・松枯れにもどる
t17402#無人ヘリコプター農薬散布の防除業者には免許が必要〜農水省は考えていないというが#06-03
【関連資料】無人ヘリコプター関係のリンク集

 前号で、農林水産航空協会に関する質問と農水省回答を掲載しましたが、今号では、無人ヘリコプター防除業者の規制強化についての質問に対する同省回答を紹介します。
【質問1】地方自治体の中には、無人ヘリによる農薬散布を地上散布に準ずると考え
  るところもあれば、有人ヘリ散布に準ずると考えるところもある。
   貴省は、空中散布の定義をどのように考えているか。無人ヘリの位置付けを明
   確にされたい。
【回答】 有人ヘリコプターによる農薬の空中散布は、組織が実施主体となり、広域
  な地域において一斉に共同防除を実施することから、使用する農薬を事前に十分
  検討し、実施に当たっては周辺への影響に十分留意する必要があるため、「農薬
  を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」の第4条において、以下のとおり
  定められています。−第四条 引用略−
 2 また、有人ヘリコプターによる農林水産航空事業を安全かつ適正に実施するため、
  「農林水産航空事業の実施について」(以下「依命通知」通知という。)及び「農
  林水産航空事業実施ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)において、
  実施体制、実施方法等について定めているところです。
 3 一方、無人ヘリコプターによる農薬の空中散布は、有人へリコプダーの利用が困
  難な場合における補完防除として開発、普及されたことから、個人の農業者が小規
  模なほ場を防除する場合等を考慮した無人ヘリコプター用の指導指針等を策定し関
  係者への指導を行っているところです。
 4 しかしながら、近年、組織が実施主体となり、一度に数台の無人ヘリコプターを
  利用した広域な防除(約l00ha/日)が行われる場合もみられることから、関係機
  関に対しては、有人ヘリコプターによる防除の安全対策に関する経験を踏まえ、
  引き続き安全対策に万全を期すよう指導に努めているところです。
【コメント】無人ヘリコプターでは、登録農薬の使用に際して、地上散布よりも100倍
  も高濃度の希釈液を散布することもあります。また、混合剤で農薬登録がないもの
  は、急性毒性試験の実施のないまま、現地混用で散布している実態もあります。
  有人ヘリよりは、飛散範囲は狭いというものの、10数機の無人ヘリによる一斉散布
  が行われていることは、農水省も知っています。
   たとえ、一機での散布でも、適用外の作物に高濃度の薬剤がドリフトすれば、「
  残留基準]や「一律基準」を超え、流通規制される恐れが強くなるので、地上散布
  と同等には扱えません。

【質問2】地方自治体の中で、無人ヘリ防除業者に、防除業者届出制度を採用している
  ところ、散布主体に散布計画等の提出を求めているところはどこか。私たちが前文
  で指摘した4県以外の都道府県があったら示されたい。
【回答】1 貴方の調査結果にあるとおり、滋賀県及び兵庫県においては、防除を業と
   している者に対し防除業の届け出を求めていることは承知していますが、その他
   の都道府県の状況については把握していません。
  2 また、ほとんどの府県において、無人ヘリコプターによる散布計画等の情報の
   把握に努めていると聞いています。
【コメント】都道府県の状況を把握していないのは職務怠慢です。きちんと調べて報告
   すべきです。

【質問3】農薬散布用無人ヘリコプターの機体トラブルや事故は、どの部署に報告され
  ることになるのか、教えてほしい。トラブルや事故の発生件数を年度毎に示してほ
  しい。その際、発生年月日、場所、場所、事故内容、原因、対策を一覧で示された
  い。
【回答】1 各都道府県において、農業用無人ヘリコプターによる人身事故等が発生し
  た場合、各県の農林水産部局から地方農政局の担当部局を通じで、消費・安全局植
  物防疫課農業航空班に報告するよう依頼しているところです。また、農林水産航空
  協会等の関係団体を通じても、情報の把握に努めているところです。
 2 過去10年間における事故件数は、表1のとおりです。
   表1 過去10年における事故件数 −略−
       
 (1)人身事故
  人身事故の概要、事故原因等は表2のとおりで、人身事故については、無人ヘリコ
  プターの利用が始まった平成元から16年までに3件発生しています
  (表1に掲載していない元年〜6年度には人身事故の報告はありません)。

  表2 無人ヘリコプターによる人身事故の概要
  ★H8.8   福岡県 	
   事故概要 オペレーターが無人ヘリコプターを離陸させた直後、防除用マスク
    のずれを直そうとしたところ、操作を誤った。無人ヘリコプターは降下し、
    回転翼がオペレーターの側面を直撃し、オペレーターが死亡した。 
 
  ★H9.7   愛媛県 	
   事故概要 農薬散布中に機体が墜落した。エンジンが停止していない状態で、
    オペレーターが不用意に機体に近づいたところ、突然回転翼が回転し、腕に
    接触して骨折

  ★H15.7  佐賀県 
    事故概要 後進飛行により農薬散布中に、操作ミスで、ヘリコプターがオペ
     レーターの後方で停止した。オペレーターは振り返り機体を元に戻そうと
     操作を開始したが、対面飛行の経験がなく、動揺し操作を誤 った。ヘリ
     コプターはオペレーターに接触し、右足切断、左足骨折

 (2)物損事故
   物損事故については、事故原因のほとんどが初歩的な操作ミスによる電線等への
   接触による墜落事故です。
   なお、平成16年6月、宮城県で無人ヘリコプターが鉄道(JR常磐線)架線に引っ
   掛かり、約2時間にわたり電車を停止させる事故が発生しました。事故の原因は、
   機体の方向を変えるモーターの一部断線によるものであり、過去に類似の故障例
   がなく、本事故機固有の不良が原因と考えられました。しかしながら、農林水産
   航空協会は、実施主体及びヘリコプターメーカーに対して、直ちに当該機種につ
   いて該当個所の点検を行うよう要請を行い、異常のないことが確認されました。
   今後、このような事故が発生しないよう、引き続き安全対策については万全を期
   すよう指導に努めます。
【コメント】
   報告されているのは重大事故のみです。機体トラブル等について発生件数は不明
   です。事故を起こしたオペレーターは認定者か、経験者か。再教育はなされるか
   も知りたいですね。

【質問4】ヘリコプターの操縦技術習得や機体の整備、人の健康被害防止や農作物・環
   境汚染防止等の観点から、無人、有人ヘリを問わず、農薬空中散布を規制する法
   律を制定されるべきと考える。
   また、法律が制定されるまでの間は、有人ヘリコプターによる空中散布の規制を
   無人ヘリコプターに当てはめるべきと考える。貴省のお考えを示されたい。
【回答】1 現在、有人ヘリコプター及び無人ヘリコプターにこよる空中散布について
   は、依命通知、ガイドライン、指導指針等により、安全かつ適正に実施するよう
   指導に努めているところであり、安全に実施されているものと考えています。
   このため、現時点では法律を制定する必要牲はないと考えています。
  2 しかしながら、近年、農業分野における無人ヘリコプターの利用が増加してい
   ることから、引き続き安全対策については万全を期すよう指導に努めます。
【コメント】依命通知、ガイドライン、指導指針の法律面での位置付けは、どうなって
   いるのでしょう。罰則もありません。農水省が、今後の無人ヘリコプター機数や
   オペレーター数の増加を想定するなら、法律の制定が必要です。

【質問5】農薬取締法第十二条に基づく「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める
   省令」で、無人ヘリ防除業者に防除業者届の提出、散布計画と散布実績の届出、
   散布記録の記帳等を義務付けられたい。
【回答】前略−
   無人ヘリを用いた農薬散布については、有人ヘリによる農薬散布に比べて、飛行
   高度が低く、飛散が小さいことから、その防除業者にまで使用計画書の提出等を
   義務づける必要はないと考えています。
【コメント】すでに、防除業者の届出や散布計画の提出を求めている県もあり、これは、
   一般的な農薬散布よりも、農作物や環境、人への影響が多いとの認識があるから
   です。
   防除業者は、多種多量の農薬を散布するわけで、高度の知識が必要です。無人ヘ
   リコプター防除業者はなおさらです。それを、家庭での散布と同等に扱うのは絶
   対納得できません。

【質問6】無人ヘリによる農薬散布は、ローター接触など事故の危険性が高いことや、
   多種多様で高濃度の農薬を取り扱うことから、一般より高度な技能・技術が要求
   される。このため、無人ヘリを用いる防除業者に、農薬に関する公的な講習・研
   修を義務付け、試験に合格した者でなければ扱えない免許制度にすべきと考える。
   貴省のお考えを示されたい。
【回答】1 現在、農業用無人ヘリコプターにより農薬散布等を行っている操作要員、
   民間の研修機関において、農薬に関する基礎的知識、無人ヘリコプターの機体に
   関する知識、操作技術等を習得した後に、実際の業務を行っています。
   また、研修機関におけ研修指導員は、無人ヘリコプターの操縦技術に熟練してい
   る者であり、社団法人農林水産航空協会が行う指導員研修等を受講し、農薬散布
   及び無人ヘリコプターに関する専門的な技能を有する者が務めています。
   このため、現行の制度を維持・強化することによって、無人ヘリコプターによる
   農薬散布等の安全性を担保することは可能であると考えており、現時点で免許制
   度を導入する必要性はないと考えます。
  2 また、現在農業用として利用されている無人ヘリコプターについては、機体の
   異常確認を知らせる装置、機体異常時の自動着陸装置等の安全装置が装備されて
   おり、操作要員が冷静に操作すれば、安全性の高い機能を有しているとされてい
   ます。無人ヘリコプターメーカー等に対しては、今後も機体等の安全性確保のた
   めの技術開発等を図るよう引き続き要請していく所存です。
  3 なお、初歩的な操作ミスによる事故が発生している事実にかんがみ、操作要員
   に対しては、基本的な注意事項の遵守を徹底するよう、指導の強化に努めたいと
   考えています。
【コメント】業界認定がなくとも無人ヘリコプターで農薬散布が可能である点が問題です。
   一万人以上のオペレーターを免許制度にする法律が必要です。事故を起こしたオ
   ペレーターの免許取消、再教育も必要、2000機以上ある機体(中には、300kg以
   上の大型もある)の整備等の義務付けに加え、機体の整備や操縦技術取得など、
   法律で規制すべき点は多々あります。

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作成:2006-05-26