空中散布・松枯れにもどる
t17501#本山教授の無人ヘリ散布の健康影響調査は問題ありと千葉大園芸学部長が回答#06-03
  【参考資料】無人ヘリによる松くい虫防除に関する運用基準作成のための検討会
              10月 4日:第1回の概要配布資料一覧
              10月25日:第2回の概要配布資料一覧
              12月 7日:第3回の概要配布資料一覧
               2月 1日:第4回の概要配布資料一覧
           林野庁:無人ヘリコプターによる松くい虫防除の実施に関する運用基準(案)に
           ついて意見・情報の募集と運用基準

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 本誌で何度も報告していますが、林野庁は「無人ヘリによる松くい虫防除の関する運用基準作成のための検討会」を開いてきました。
 第1回検討会で千葉大園芸学部の本山直樹教授の「静岡県新居町における無人ヘリコプターによるスミパイン乳剤散布に伴う薬剤飛散状況ならびに健康影響調査結果(概略)」が公表されました。これは概略のみで、気中濃度や飛散調査の詳しいデータがなく、また、健康影響調査に関しても、学生やオペレーターの健康診断のみで「健康診断の結果、調査に参加した被験者全員、ならびに最も曝露量が多いと思われる無人ヘリコプターのオペレーターとナビゲーターにも、健康影響を示すデータは認められなかった。」とされました。この点に関しては第2回検討会の参考人の意見で、早急に詳しいデータを示すよう批判しています。
 しかし、林野庁は新たなデータを示すことなく、第4回検討会で、論点整理をしました。その中で「本山委員が静岡県の新居町で実施した調査結果をどのように評価するのか」という項目を立て、5点に渡りこの調査をほめあげ「このことから当該調査箇所については、周辺地域の住民に健康被害が発生する可能性は低いものと考えられる」と結論しています。
 私たちは医者でない本山教授の健康影響調査の実施方法に疑問を持ち、千葉大学学長と園芸学部長に2月1日付けで以下のような質問をしました。

   質問状

★千葉大からの回答
 これに対して2月28日に、速達で千葉大学園芸学部長から以下のような回答が来ました。
        園芸学部長からの回答
★本山論文の中身にこれだけの疑問
 千葉大は調査の方法について問題だとしていますが、私たちは健康影響調査の内容自体も以下のように問題があると思っています。
  (1)調査の際、学生達はマスクや他の防護具をしていたのか。防護していた場合、
   健康診断をして、有意差がないと結論できないのではないか。
  (2)無人ヘリコプター撒布に携わったオペレーターと補助員各1人は、職業的に農薬
   撒布をしている人である。どの程度の頻度で撒布をしていたか不明な上、マスク
   や防具をつけている人の僅か2日の健康診断結果で、薬剤の影響を受けているか
   どうかの判断はできない。にもかかわらず、最も薬剤をあびている作業員に影響
   がないと結論するのは疑問である。
   1万人以上いるオペレーターや補助員への健康調査は別途行うべきである。
  (3)学生達やオペレーターらに有意差がないから周辺住民に健康被害があるはずが
   ないというのは非科学的な思いこみだ。薬剤の影響は人によって違うというのが
   林野庁の立場ではなかったか。
  (4)疫学調査では、対照区の設定が不可欠である。第1回検討会で香川教授が本山
   教授の調査に関して「コントロールがない」と批判している。また、第2回検討
    会で辻 万千子が「データがない」「個人差を考慮していない」と批判した。
  (5)尿調査で、有機リン剤の体内へのとりこみ量を推定できるのに、この実験は行
   われていない。被曝量が不明な調査で、健康への影響を評価できるのか。
  (6)総じて、本山の健康影響調査は、計画全般に不備であり、農薬の人への影響の
   有無を論議できるようなものではないと思う。
  (7)医師資格のない本山教授が検診データをみて、健康影響はなかった結論できる
   のか。
  (8)本山教授が、今回の調査データをあげて、農薬の健康への影響が認められない
   例として講演などで話しているのは問題である。
この時の調査結果は、後日、下記に論文発表されている。
 「静岡県で無人ヘリコプターで松林に散布されたフェニトロチオン乳剤の飛散状況ならびに健康影響評価」
   市川 有二郎、本山直樹(千葉大学大学院園芸学研究科)日本農薬学会誌 33巻、p289-301,2008

★林野庁に質問     −略−


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作成:2006-03-26