環境ホルモンにもどる
t17606#環境省パンフ「ロハス的環境ホルモン学」と随意契約#06-04

   【参考資料】
     ・EIC(環境情報普及センター)化学物質の内分泌系撹乱作用に関するHPより
       コラム・エッセイ
     ・化学物質問題市民研究会のHPより
       公開質問状1 公開質問状2 公開質問状3 ピコ通信92号記事
     ・「週刊金曜日」2006/9/22号
       『ソトコト』に1100万円で製作依頼!!
        環境ホルモン問題を隠蔽する環境省(川村 敏久)

 環境省は、本年1月13日、『月刊エコマガジン「ソトコト」(発行部数:約10万部)と協力し、2006年1月号別冊付録として「チビコト:ロハス的環境ホルモン学」を作成しました。チビコトの内容を「化学物質の内分泌かく乱作用に関するホームページ」に掲載しましたのでお知らせします。』との報道発表を行いました。
 ソトコト?、チビコト?、ロハス?というわけで、早速、該当ホームページをみました。

★ソトコトは「木の下」、では「ロハス」は
 「ソトコト」は木楽舎が1999年に創刊し、トド・プレス社に編集部がおかれている月刊雑誌であることがわかりました。その意味は、アフリカのバンツー語で「木の下」とうことです。では、「チビコト」も、アフリカ語かと思えば、さにあらず、その付録で、小さなソトコト=チビコトらしい。チビと呼ばれて、いやな思いをした人には、なじめないネーミングですね。
 さて、ロハス的環境ホルモン学というわけですが、環境省は報道発表資料に、『LOHAS(Lifestyles Of Health And Sustainability)とは、健康で持続可能なライフスタイルのことです。』と注をいれています。こんな抽象的な説明では理解できません。

★ふたつのLohas Club
 インターネットのフリー百科事典『ウィキペディア』によると、Lohasの発祥地のアメリカでは、Lohas層を『環境と健康に関心、社会に対する問題意識、自己啓発・精神性の向上に関心が高く、実際の行動に移す人々』と定義しているそうです。
 調べているうちに、英文名はLohas Clubと同じですが、全く別ものの「ローハスクラブ」と「ロハスクラブ」があることがわかりました。
「ローハスクラブ」の方は、2002年3月に設立された内閣府認定の特定非営利活動法人NPO で、『健康ですこやかに暮らしたいと願う人々に対して、ローハス(環境と人間の健康を優先した持続可能な社会のあり方を模索する)という志向を普及・促進するために調査・研究および情報のネットワーク化に関する事業を行い、人々の健康や社会活動、経済、環境の保全に寄与すること』を目的としています。
「ロハスクラブ」は、2005年10月に設立され、「ソトコト」のトド・プレス社が取り仕切っている有限責任中間法人で、活動内容は『「ロハス商品の審査・承認」、「ロハスマークの発行・許諾」、「ロハスデザイン大賞の運営」「ロハス・ライセンスビジネスの展開」などを通し、日本におけるロハスマーケットの拡大・充実を目指します。』となっています。
 Lohasの起源(発音は「ローハス」)は、アメリカにありますが、ローハスクラブのHPに、同国の創始者からのメッセージも掲載されていることからみると、その概念の正統性をひきついでいるようです。
 一方、トド・プレス社は、雑誌「ソトコト」の表紙や記事で、Lohas=「ロハス」という用語を使い、その社会への浸透をはかっただけでなく、04年4月20日には、特許庁に「ロハス」の商標権取得のための出願申請もしています。
 
★「ロハス」にトド・プレスの商標権が
 商標権というのは、商品やサービスの種類ごとに、登録された名称を優先的に使用してもいいという権利で、認められると、権利保有者の許可なく、他者は、その名称を使用できないことになります。
 「ロハス」については、06年3月末現在、20件の出願がなされ(うちトド・プレス社8件、三井物産5件)、2件が既に権利を取得しています。なかでも、トド・プレスが権利を得た第4780327号(04年12月10日登録)は、範囲が広く、多くの指定商品以外に『 新聞・雑誌・インターネットホームページによる広告,新聞・雑誌・インターネットホームページによる広告スペースの提供,広告媒体の企画・立案及び制作,住宅の販売促進のための住宅展示場の企画・運営又は開催,商品の販売促進・役務の提供促進のためのイベントの企画・運営・開催又はこれらに関する情報の提供,商品の販売促進・役務の提供促進のための広告物の配布,その他の広告、以下略』とサービス内容が列記されています。
 そして、この商標権取得を契機に、トド・プレスは、雑誌「ソトコト」で、「ローハス」でなく「ロハス」を多用しだし、ついには、05年12月、二番目に多くの商標権を申請している三井物産とくみ、「ロハス」ビジネスをはじめることを宣言しました。
 前述の「ロハスクラブ」は中間法人で、営利団体ではありませんから、「ロハス商品の審査・承認」や「ロハスマークの発行・許諾」で、金儲けはしないとい思いますが、実体はどうなるのでしょうか。三井物産といえば、04年にディーゼル排出微粒子除去装置のデータ捏造事件を引き起こした企業です。きっと、前非を悔いて、ボランティアの精神で、「ロハス」という言葉が悪用されないよう、その審査や認証マークの発行をすることになるのでしょうね。(なお、「ローハス」については、2件の商標登録申請されているが、その指定範囲は狭い。)

★環境省の仕様書〜パンフ作成を、検討会のメンバーに丸投げ
 このような、「ロハス」の商標権が、裏にあるにも拘らず、環境省は、環境ホルモンパンフを、競争入札による一般契約でなく、随意契約として、トド・プレス社から、出版することにしました。なぜ、はじめから、トド・プレスに限ったのでしょう。実は、環境ホルモンのリスクコミュニケーション検討会のメンバーに、同社社長の小黒さんが入っているのです(ExTEND 2005における検討会及びH17年度 第1回 ExTEND2005リスクコミュニケーション推進検討会)。これって、癒着じゃないのとの声が聞かれそうです。
 環境省の仕様書には、以下のような記述があります。
『化学物質の内分泌系かく乱作用について、分かりやすく実際の生活に関連づけて説明し、正しい理解を深めるための素材となるような冊子を作成し普及啓発に活用する。普及啓発にあたっては、冊子が多くの一般市民にとって手に入りやすいというアクセシビリティの観点が重要であり、市販雑誌の挟みこみ冊子として作成することにする。
また、販売される雑誌用の挟み込み冊子とは別途、表紙のみを買えた環境省版の冊子を作成し、「第8回化学物質の内分泌かく乱作用に関する国際シンポジウム」において配布する。(以下略)』
また、『国民への直接広報媒体として、化学物質の内分泌かく乱作用について、下記のような情報を含む冊子コンテンツを作成することとする。コンテンツ作成にあたっては、一般市民にとって分かりやすく、かつ親しみやすい印象を与えるように工夫する。
 冊子の体裁:A5版32ページ程度 総カラー 作成部数:10万部 コンテンツは下記のとおりとする(−以下略−)』として、
 パンフの記事内容とその構成が提示されています。「ソトコト」読者層が、果たして、付録のパンフをどれほど読むのかにお構いなく、丸投げ随意契約が行われ、10万部の発注がなされたわけです。

★環境省は、ロハスをどう考えているのか
 −中略−
 肺炎で入院していた小池環境大臣は、退院の会見で「ロハスな生活をめざしたい。」といいましたが、いったい、環境省は、ロハスをどのように考えているのでしょう。  二酸化炭素削減政策の一環として、ノーネクタイのクールビズ、打ち水などのパフォーマンスが行われました。Lohasというなら、有害な化学物質の生産・使用削減が必須と思うのですが、そのような要求をする環境保護団体の主張には耳を貸さず、環境ホルモン問題は「騒動」にすぎないという主張をパンフに掲載し、魚のメス化は、ヒトの女性ホルモンが原因だといいながら、私たちが、『天然・合成ホルモン類(動物用ホルモン剤を含む)等の製造・使用工場や廃棄物処分場、下水処理場等からの排出量・排出濃度を規制してください」と求めると、『(今後の)取組を推進していく上での参考とさせていただきます。』としか答えません(記事t16301記事t16506参照)。

★国土交通省のロハスは、風呂の水を洗濯に
 一方、ロハスという用語は、環境省だけでなく、国土交通省も使っています。05年10月には、都市・地域整備局の下水道担当部署が「下水道LOHAS(ロハス)」なるものを提案しています。
 全体的には節水生活が、ロハスな生活だというイメージで、環境省のターゲットとする「ソトコト」ロハス層とは、なんとなく違う気がします。

★環境省の随意契約にメスを
 地球環境問題で、ケニアのノーベル平和賞受賞者のマータイさんは、日本語の「もったいない」を取り上げ、「MOTTAINAI」を世界共通語にしようと提唱しています。ところが、環境省は、アメリカに起源のあるビジネス用語「ロハス」を公認して(もし、使うなら「ローハス」という英語発音に沿った一般語をつかえば、いいのに、あえて、商標権のある「ロハス」を使い)、その権利を有するトド・プレス社との随意契約で、パンフを作らせただけではありません。「ロハスクラブ」の行う「ロハスデザイン大賞」の後援もしているのです。
 3月22日の参議院環境委員会(議事録簡易検索システム、化学物質問題市民研究会HPにある未定稿議事録)で、岡崎トミ子議員は、「ロハス的環境ホルモン学」の出版問題を含む、環境省の随意契約の不透明さを取り上げました。その中で、パンフの制作経費が約1105万円であることが明かになりました。1冊約100円という価格は、果たして妥当なものか。4月に入り、NHKが独自調査で、同省の随意契約が全契約の約93%を占め、その多くが、天下り団体であることを報道しました。その後、会計検査院が、環境省の随意契約にメスをいれるとしています。ぜひ、「ソトコト」付録「チビコト」出版の実態も明かにしてもらいたいものです。
 でも、ローハスとかロハススタイルとか、というよりも、ロハ(只)スタイルの生き方が、地球にとってやさしいかも知れませんね。
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作成:2006-09-26