「生活環境で使用する殺虫剤等の規制に関する法律」関係にもどる
t17801#生活環境での殺虫剤等による健康被害を防止する2法案、参議院に提出#06-06
★2000年から準備
 2000年から生活環境で使用される農薬やその類似物質による健康被害を防ぐために使用規制を求める運動をしてきました。その中で、新しい法律を制定する以外に効果的な方法はないということになって、民主党、社民党、無所属の国会議員らとともに「議員と市民の会」を立ち上げ、勉強会を重ねて来ました。政治情勢が急変したり、議員が減ったりと何度も困難に直面し、参議院法制局との議論の中で、内容もいろいろ変化しましたが、ようやく、法律案ができました。
 従来の化学物質の規制法は縦割りで、シロアリ防除剤や不快害虫駆除剤など何の法規制もないものもあり、たとえ法律があったとしても、使用現場での規制はほとんどない状況でした。
 農薬に関しては消費安全局長通知「住宅地等における農薬使用について」がありますが、これとて、散布現場にはほとんど知られておらず、また、罰則がないため、いまだ、十分な効果を上がっていません。
 今回の法律はこうした不備をなくすために、生活環境での使用を規制するという切り口で、すべての化学物質に網をかけることができます。ただし、使用規制はごく一部しか盛り込めませんでした。
 過剰規制になってはいけないという制約の中で、不備不満は多々あります。けれども、現在の法制度の中でここまでの法律が可能であることは、今後の運動に大きな役割を果たすものと思われます。この法律が通れば、農薬や類似物質で健康被害を受け苦しんでいる人々にとって、今よりは格段に朗報になるものと思われますし、新たな患者を減らすことにも貢献するのではないでしょうか。今後の課題はどうやってこの法律を通すかということになります。

★6月9日に参議院に提出
 この法律案は、最初から私たちとともに活動してきた民主党の岡崎トミ子議員と大石正光議員、小林元議員、ツルネンマルテイ議員が提案者になって、民主党の議員立法として、参院事務総長を経由して国会に提出されました(民主党hp参照)。法律の所管は環境省になります。
 この法案は提出され、6月15日に岡崎議員が参議院の環境委員会で趣旨説明をしましたが、時間切れで廃案になっています。しかし、何度でも提出できますので、次の国会に再び提出されると思います。次回に提出されるまでに他党の議員に働きかけて、この法案への理解を深めていただき、是非成立させたいものです。
 提出された法案は、「殺虫剤等の規制等に関する法律案(略称「殺虫剤法」)と「害虫等防除業の業務の適正化に関する法律案(略称「防除業者法」)の2本立てです。

1、殺虫剤等の規制等に関する法律案概要
   −前略−
   殺虫剤法の概要法案全文

★生活環境で使用する殺虫剤等の規制
 この法律案では、すべての生活環境で使用する殺虫剤等(具体的には政令で定める)の表示義務を定めています。
 表示は殺虫剤等の容器か包装に、製造者の住所、氏名、成分の名称、含有量などの他に、人の健康及び生活環境に及ぼす有害な影響に関する情報、飛散防止の方法などを表示することを義務づけています。これは、農薬にも当てはまります。農薬は既に表示義務がありますが、それに付け加えて上記の表示をすることになります。
 使用規制としては、まず、規制地域があります。住居、店舗、事務所などが集合している地域、病院、学校その他の多数の者が利用する施設の周辺などを都道府県知事が「規制地域」として指定しなければなりません。
 知事は規制地域について、人の健康又は生活環境に有害な影響を及ぼすおそれのあるものとして環境省令で定める殺虫剤等の散布(特定散布等)を行う者が遵守すべき基準(規制基準)を定めます。市町村は上記規制基準が十分でないと認めたときは、条例で適用すべき規制基準を定めることができます。
 規制地域で特定散布等を行う者は、14日前までに、以下の内容について、市町村長に届け出るとともに、周辺の居住者、その他の者にFを除いて周知させなければなりません(ただし、緊急の場合として政令で定めるものは除く)。@住所、氏名、A場所、期間、B特定散布等の方法、C散布する殺虫剤等の名称、量、D殺虫剤等の成分の種類、名称、含有量、E特定散布等をする殺虫剤等が人の健康及び生活環境に及ぼす影響に関する情報、F周知の方法、時期、Gその他環境省令で定めること。
 市町村長は、規制基準に適合しないと認めるときは、計画の変更を命じることができますし、規制基準に適合しない特定散布等は禁じられています。また、市町村長は、適合しない特定散布等が行われ、人の健康や生活環境に被害を生じたり、その恐れがあるときは、必要な措置をとるよう命ずることができます。

★安全な代替品の開発普及等
 この法律の大きな特徴の一つに、有害な影響の低減の推進があります。環境大臣は、以下の指針を定めることになります。
 @散布等の抑制による人の健康及び生活環境の保全に関する事項
 A事業者が行うより安全な殺虫剤等の代替品の開発への支援に関する事項
 B上記の研究開発の推進及び成果の普及に関する事項
 また、事業者の責務として、有害な影響が少ない殺虫剤等や代替するものの開発に努めなければならないとあり、続いて、何人も、過剰な殺虫剤等の散布等により、人の健康や生活環境に有害な影響を及ぼすことのないよう努めなければならないとあります。
 また、安全な殺虫剤等の認定制度を設け、製造者等は、人の健康及び生活環境に有害な影響を及ぼすおそれのないものとして環境省令で定める基準に適合すれば認定を受けることができます。

★罰則
 散布者が行政の命令に従わなかったり、届出・周知義務を怠ったり、規制基準を守らなかった(過失でも)場合、罰則が科せられます。

2、害虫等防除業の業務の適正化に関する法律案の概要
   −前略−
   防除業者法の概要法案全文
★業者は登録しないと営業できない
 害虫等防除業とは、他人の依頼を受けて宅地、農地、森林、草地、道路その他の土地、建物その他の施設の害虫等防除(薬剤を用いた害虫等の防除又は除草。害虫等の範囲は政令で定める。)をする役務を提供する営業となっています。要するに、報酬をもらって薬剤による害虫等の防除や除草を行うもの全てです。
 防除業者はまず、2つ以上の都道府県で事業を営む者は環境大臣へ、1つの都道府県の区域のみで事業を行う者は都道府県知事に登録しなければなりません。有効期間は5年です。環境大臣か都道府県知事は虚偽の記載があったり、重要な事実の記載が欠けていたりした場合は登録を拒否しなければなりません。また、無登録農薬の使用・適用外使用による農薬取締法違反や前述の殺虫剤法の特定散布等の規制違反の経歴がある者についても、一定の要件に該当する場合には、登録を拒否しなければならないとしています。

★業務に関する規制等
 防除業者は、業務による環境汚染や人の健康への被害の発生を防止するため、業務規程を定め、登録をした環境大臣か都道府県知事に届け出なければならないことになっています。業務規程の内容は、環境汚染や人の健康の被害防止に関する事項、居住者等の健康の保護に関する事項を定めなければならないとなっています。
 また、必要な知識及び能力に関する講習を修了したもののうちから、害虫等防除業務主任者を選任し、薬剤による環境汚染や健康被害の防止その他の環境省令で定める防除に関する業務を行わせなければなりません。害虫等防除業務従事者には、都道府県知事が行う講習を受けさせることになっています。
 さらに、契約をするときには、相手方に対し、次の事項を説明する義務があります。
 @使用する薬剤の種類、名称の他、環境及び人の健康に及ぼす影響
 A被害防止のため、防除業者が講ずる措置及び居住者等が講ずべき措置
他に営業所毎の帳簿の備えつけと保存も義務づけられています。
 環境大臣か都道府県知事は、防除業者から報告や資料の提出を求めたり、立入検査をしたりできます。また、改善命令や、登録取消などの権限を持ちます。

★営業停止や登録取消も
防除業者に対しては、登録にごまかしがあったり、行政の命令に従わなかったり、帳簿をつけなかったり、現場で標識を掲示しなかった場合、登録の取消や営業停止処分をすることができるほか、処罰の対象となります。登録の拒否で述べたのと同じように、無登録農薬の使用・適用外使用による農薬取締法違反や殺虫剤法の特定散布等の規制に関する違反で処罰を受けた場合についても、登録の取消や営業停止処分をすることができます。

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作成:2006-06-26