街の農薬汚染にもどる
t17901#電車内の殺虫剤・殺菌剤散布の実施状況が明らかに〜23社で51種の薬剤が使用、実施なしは6社のみ#06-07

★昨年の要望
 鉄道車両内に殺虫剤や殺菌剤が散布され、乗り合わせて健康被害を受ける人が増得てきたため、2005年8月12日に「環境過敏の子供を持つ親の会」が取りまとめをして、関心を持つ19団体と個人24人が監督官庁の国土交通省に実態調査などを要望しました。
 要望内容は、(1)殺虫剤・殺菌剤散布の実態調査。(2)乗務員や乗客へ周知。(3)乗客への被爆減少。(4)代替策の開発と普及。(5)殺虫剤等の散布中止などです。
 10月12日に、要望団体は岡崎トミ子参議院議員と共に国交省業務課と話あいをしました。国交省は「こういう問題があることを初めて認識した。薬剤や健康被害に関する知見はないので、これから何ができるか検討したい」とのことでした(記事t17001参照)。

★外郭団体が検討会を立ち上げる
 国交省はその後、(社)日本鉄道運転協会に各鉄道事業者の実態調査と殺虫剤問題の検討会設置を依頼し、協会は、「鉄道車両内における衛生的環境の確保等に関する検討会」を立ち上げ、2005年12月9日から3回、検討会を開催したとのことです。その結果が、2006年5月29日に報告書として出されました。
 外郭団体にやらせたのは若干問題ですが、国交省担当者が私たちの要望を受け止めた結果といえます。国交省はこの報告書の要約をつけて、各鉄道会社に周知するよう各運輸局に事務連絡を出したとのことです。
 市民団体には回答しなかった鉄道会社も協会のアンケートには回答して、詳しい薬剤散布状況を報告しています。

★検討会報告書内容の要約
1,検討会の構成
 鉄道事業者(12局社)、(社)車両整備協会、車両整備関連事業者(5社)、アドバイザーとして(財)日本環境衛生センター、(社)日本ペストコントロール協会、日本防疫殺虫剤協会、オブザーバーとして国土交通省、厚生労働省。現状調査協力事業者は29局社。
  【コメント:ここに被害者を入れれば言うことなしだったのですが、散布側だけで検討しています】
2,薬品等に関する現状把握
 検討会において、アドバイザーやオブザーバーより、害虫駆除に関する法律、方法、薬品等の現状、その他について解説や情報提供等を受けながら質疑等を行った。
3,車両内の殺虫・消毒の実態調査
 鉄道事業者29局社の協力を得、各社における殺虫・消毒剤の使用状況調査を実施。
 1)殺虫・消毒の実施状況
  ・実施していない事業者:6局社
    東京メトロ/東武鉄道/神戸市交通/相模鉄道/京阪電気鉄道/阪急電鉄
  ・夏期限定で実施する事業者:1局社
    西武鉄道
  ・定期的に実施する事業者:22局社
    JR北海道/札幌市交通局/仙台市交通局/JR東日本/東京都交通局/
    京成電鉄/京王電鉄/小田急電鉄/東京急行/京浜急行/JR東海/
    名古屋市交通局/名古屋鉄道/京都市交通局/大阪市交通局/近畿日本鉄道/
    阪神電気鉄道/南海電気鉄道/JR四国/JR西日本/福岡市交通局/西日本鉄道
      
      
 2)薬剤の種類 商品名で51種類。
   【コメント:のべ98種の薬剤が使用されていました。成分別では、殺虫剤
     は、ピレスロイド系:35、ピレス+有機リン系:1、ピレス+その他:
     21、有機リン系:7、殺菌剤は、塩化ベンザルコニウム系:7が目に
     つきました。殺虫・殺菌剤であるクレゾール系が3ありました。剤型
     別では、乳剤や液剤の散布が多く、くん煙剤や毒餌も使用されていま
     した。】
 3)殺虫・消毒の周期(略)
 4)殺虫作業後の害虫調査
  ・実施後に発生状況を調査:1局社
  ・捕獲箱または餌で確認:1局社
  ・害虫の死骸で確認:3局社
  ・調査なし: 18局社 
   【コメント:事前の害虫等の調査を行なっているのは、小田急の特急のみ。
     薬剤使用後の車両については、2〜6時間の乾燥や換気をしたり、
     翌日以降に営業するなど、期間は各社バラバラであり、環境調査を実施
     したことはないようです。】
4,調査結果の考察
 アンケート結果によると事前の調査を行ってない事業者が多いことから、害虫の有無にかかわらず実施しているのが実態である。今後においては、建築物衛生法にある「害虫管理のサイクル」を参考に、適正な管理を実施していくことが肝要である。
5,検討会まとめ
 1)薬剤・周期について再検討する。
 2)顧客からの問い合わせに誠意をもって対応する。たらい回しにならないよう担当者を特定する。HPに掲載してもいい。
 3)情報開示の内容は、目的、周期および実施日。薬剤の開示内容は剤型、成分。

★一歩前進ではあるが
一歩前進と言えますが、鉄道会社は殺虫剤や殺菌剤散布を中止するとはいっておりません。乗車する際には是非、各社に問い合わせをしてください。今後も国や鉄道会社に働きかけていきたいと思います。

  表 鉄道会社別の車内消毒の実施状況 −詳細省略−


購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、 注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。

作成:2006-07-29