街の農薬汚染にもどる
t18501#「有機農業の推進に関する法律」における基本指針への3つの提言#07-01
 記事t18406で、新たに施行された「有機農業の推進に関する法律」の紹介をしましたが、この法に基づき、農林水産大臣は、基本方針を策定することになっており、食料・農業・農村政策審議会や同会生産分科会での審議を経て、今年度中には「基本方針」が公表されると思います。そこで、前以って、方針におりこんでほしいとして、下記の3つの提言しました。
【提言1】
 基本方針に、住宅地内及び住宅地に近接した農地では、有機農業を優先的に実施するよう
 明記してください。
 さらに、国や都道府県が、該当する農業者等に対し、有機農業の実施に際して、経営的か
 つ技術的な支援をすることを明記してください。

【理由】
 2003年9月16日に、農水省は、消費・安全局長名で「住宅地等における農薬使用について」
 の通知を出しました。その前文は、以下のように記されています。
  −中略−
 また、その第2項の(1)では、次のような指導がなされています。
 『2 住宅地内及び住宅地に近接した農地(市民農園や家庭菜園を含む。)において栽培
 される農作物等の病害虫防除に当たっては、次の事項の遵守に努め、農薬の飛散が住民、
 子ども等に健康被害を及ぼすことがないよう最大限配慮することとする。 
 (1)病害虫に強い作物や品種の栽培、病害虫の発生しにくい適切な土づくりや施肥の実
  施、人手による害虫の捕殺、防虫網等物理的防除手段の活用等により、農薬使用の回数
  及び量を削減すること。』

 農薬の地上散布では、散布区域外に50m以上飛散する例もありますが、防止のための緩衝
 帯幅すら決められておりません。また、無人ヘリコプターによる空中散布(地上散布の約1
 00倍もの希釈率で散布される)が住宅地近くで実施されている場合もあります。
 上述の通知の第2項(2)から(6)は、農薬使用方法や周辺への通知に関する事項です
 が、これらを守っても、生活環境へ農薬が飛散し、大気を汚染することは避けられません。
 そのせいか、農地に近接する住民から、農薬による体調異常や健康被害を訴える声が止む
 ことはありません。

 公害防止対策としては、発生源を断つことが、最も有効です。
 農薬汚染に関していえば、その発生源である農業経営者が、防止の責を負うことが必要で
 す。農業経営を継続しながら、農薬汚染を防止をするには、化学的に合成した農薬を使用
 しない有機農業の実施が最も有効です。
 農薬汚染による健康被害に苦しむ人々をなくすには、住宅地内や住宅近接地の農業者に対
 して、有機農業の実施を促す方針をたて、それを経営的かつ技術的にサポートしていくこ
 とが重要です。

【提言2】
 基本方針に、地方公共団体等が行っている市民農園の類では、有機農業の実施を義務付け
 るよう明記してください。

【理由】
 市民農園は、住宅地内や住宅地に近接している場合がある上、小規模に区切って、多くの
 人が利用する仕組みになっています。農薬についての知識の少ない一般市民がまわりの利
 用者のことを考えず、勝手に農薬を使用した場合、ドリフトにより他の区画の対象外農作
 物が汚染され、食品衛生法で定められた残留基準や一律基準違反につながる恐れが大きい
 と考えられます。このような農園は、化学的に合成した農薬を使用しないという条件で運
 営すべきです。また、地方公共団体の中には、ゴミ量削減のため、剪定材等から有機肥料
 を製造するリサイクル事業が行われているところもあり、これらを有効に利用できます。

【提言3】
 基本方針に、樹木・芝生など景観保全のための、あるいは、屋上・壁面緑化など省エネの
 ための、非食用作物の栽培についても、有機農業の手法を取り入れるよう明記してくださ
 い。

【理由】市街地、学校、公共施設、公園などでは、景観保全のため、種々の非食用作物が栽
 培されています。また、省エネルギー対策として、植物による建物の屋上緑化や壁面緑化
 が推奨されています。
 不特定多数の人々が活動するこれらの場で、植物を育種栽培することは、生活環境の改善
 につながりますが、その管理・維持のため、化学的に合成された農薬を使用すれば、周辺
 環境を汚染し、人や野生生物に影響を与え、逆効果となります。
  −中略−
 生活環境をよくするための植栽管理には、農薬等を使用しない有機農業の手法が最もふさ
 わしいと考えます。

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作成:2007-01-27