街の農薬汚染にもどる
電子版「脱農薬てんとう資料集」No.5
<「住宅地等における農薬使用について」の新通知>
t18601#「住宅地等での農薬使用」:農水省消費・安全局長と環境省水・大気環境省曲局長連名で新通知#07-02
1月31日、農水省消費・安全局長と環境省水・大気環境局長の連名で通知「住宅地等における農薬使用について」が出されました。(03年9月16日付けの旧通知(農水省消費・安全局長名)は廃止)。旧通知は、『学校、保育所、病院、公園、街路樹、住宅地周辺の農作物栽培地等において使用された農薬の飛散を原因とする住民、子ども等の健康被害の訴えの事例が多く聞かれるようになっている。』との認識の下に出されたもので
@定期的な農薬散布の廃し、A病害虫に強い作物や品種の栽培、病害虫の発生しにくい適切な土づくりや施肥の実施、人手による害虫の捕殺、防虫網等物理的防除手段の活用等により、農薬使用の回数及び量を削減すること、Bやむを得ず散布する場合であっても、最小限の区域における農薬散布に留めること、C散布する場合は事前に周辺に周知することなどが謳われていました。
しかし、反農薬東京グループへは、この通知が守られていないという相談が数多く寄せられていました。05年11月に実施したアンケート調査でも、農薬散布者や散布委託者の半数が通知を知らないことなどが報告され、今後、違反者への罰則強化を望む声が多くありました(記事t17302、記事t17403、記事t17502参照)。
農薬の大気汚染による健康被害防止を求める私たちの要求に対し、環境省は、05年から5ヵ年計画で「農薬飛散リスク評価手法等確立調査」を実施することになりました(記事t15701)。
初年度の05年度には、地方自治体に散布実態のアンケート調査がされたという話を聞いていましたが、その結果は明らかにされないままでした。ようやく、07年1月31日付でアンケート調査結果がホームページで公表されました(環境報道省資料)。06年8月11日には「農薬飛散リスク評価手法等確立調査検討会」が設置され、モニタリング調査(対象農薬はMEP(スミチオン)とそのオキソン体(スミオキソン)、ディプテレックス。同検討会:第二回資料参照)が実施されいます。
新通知は、自治体アンケート調査の結果を踏まえて、都道府県知事・政令市長宛に出されたもので、前文には、『平成17年度に「農薬飛散リスク評価手法等確立調査」の一環として環境省が実施した「自治体における街路樹、公園緑地等での防除実態調査」(記事t18602参照)によると、多くの自治体で適切な方法での使用がなされているものの、一部の自治体において、病害虫の発生状況に関わらず定期的に農薬を散布している、散布の対象範囲を最小限の区域に留めていない、これまでに知見のない農薬の組合せで現地混用を行っている等の不適正な事例も依然みられる状況にある。
このような状況を踏まえ、農薬の適正使用を推進し、人畜への被害防止や生活環境の保全を図るため、農薬の散布を行う土地・施設等の管理者(市民農園の開設者を含む)、殺虫、殺菌、除草等の病害虫防除の責任者、農薬使用委託者、農薬使用者等(以下「農薬使用者等」という。)に対して下記1及び2の事項を遵守するよう指導すること、貴自治体において下記3、4及び5の事項の実施に努めるとともに貴自治体内の施設管理部局、農林部局、環境部局等の間で緊密な情報交換を行うこと等により連携の強化を図ることにつき、貴職の協力を要請する。』とあります。農水省は、独自にこの通知内容を、関連する省庁部署や業界団体に連絡しています。
今回の新通知指導内容を以下に示します。旧通知が農水省単独の局長の発出だったの対し、新通知が農水省と環境省の二局長通知となったことで、より重みが増しました。これからは、両省及び地方自治体の農水担当部署と環境担当部署も対応することになります。
大きな変更点は、旧通知で、学校・公園などの植物や街路樹・森林と一般農地の二項に分けられていたものを、ひとつの項にまとめたこと及び04年2月2日付けの農薬対策室長による事務連絡「農薬の現地混用について」が項目2、3、4にとして取り込まれたことです。
しかし、旧通知で「健康被害の訴えの事例が多く聞かれるようになっている」と事実を伝えているのに対して、新通知では「適正に使用されない場合」と付け加え、適正に使えば健康被害がなくなるかのように表現していること、「危害」を「悪影響」に言い換えたこと、旧通知の「定期的に農薬を散布することを廃し」を「定期的に農薬を散布するのでなく」にするなど全体にトーンダウンが見られます。旧通知の方がきっぱりとわかりやすかったと言えます。
さらに、農薬大気汚染防止にも触れておらず、地上散布よりも高濃度で散布する無人ヘリコプターによる空中散布をやめるとの指導はみられませんでした。健康被害の実態を知っているのかとの疑問を抱かざるを得ません。罰則をつけて、健康被害をなくすための具体的方策を示してほしかったと思います。また、自治体以外の個人農薬使用者にも、この通知が周知徹底されるようしてもらいたいものです。
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作成:2007-02-26