街の農薬汚染にもどる
t18901#新通知「住宅地等における農薬使用について」で農水省・環境省と話合い#07-05

 今年1月31日に「住宅地等における農薬使用について」の新しい通知が出されました。2003年に出た同名の通知を少し変えて、農水省消費安全局長以外に環境省大気水局長が加わり、連名の通知になったわけです。(記事18601参照)
 しかし、今回の通知は以前の通知に比べて曖昧になった部分もあり、3月5日に環境省に質問と要望を出しました。環境省から3月20日に回答がありましたが(質問と回答)、なお、不十分な点がありましたので、4月26日に環境省農薬環境管理室と農水省農薬対策室と話し合いを持ちました。
 参加者は要望団体から8名、住宅地通知の担当部局の農水省農薬対策室長と補佐、環境省農薬環境管理室長と補佐、岡崎トミ子参議院議員でした。

★通知「住宅地等における農薬散布について」
 この問題では主に通知が周知されていないことを具体的に示し、どのような対応をとるのか話し合いました。例としては、千葉県A市の住宅地の真ん中にあるカブ畑での農薬散布を取り上げました。
 BさんはA市に在住するようになって30年。70アールのカブ畑が四方を住宅に囲まれてあり、Bさんの家の窓はそこから30センチしか離れていません。家の中から撮った写真には、虫除け網の上から農薬を散布し、飛沫が舞い上がっているのが写っています。
 「A市のコカブ」というのはブランドで九州まで出荷されているそうです。ブランド維持のために農薬が大量に使用され、昨年は畑を通年で収穫できるように13区画にわけ、1区画5回も散布されたそうです。
 昨年、11月に畑の真ん中で撒かれたマラソン、DDVPなどの農薬によって化学物質過敏症を発症し、せめて、事前に知らせてほしいと要望してきました。市は最初、何が撒かれているか知らせる必要はない、農家は農薬散布の記録もつける義務はないと言ってました。そして上記の散布農薬を知らせた後で「もう市役所にはきてくれるな、当人同士でやってくれ」と言われたそうです。
 そこで農水省の農薬対策室に相談しましたら、県の安全農業推進課とか、病害虫防除所とか、農業振興センターとかJAとかが大勢で自宅に何回かきました。その人たちは「国が決めた農薬は安全だ」としか言わなかったということです。Bさんは、撒く前に教えていただきたいと何度も要望しました。それと散布方法がビニールの上から撒くのではなく中に撒いてほしいとも伝えましたが「それはできない。これはこかぶ農家の常識だ」と言われました。
 農薬対策室は、こかぶ農家の集まりであるこかぶ部会で話をするということでした。Nさんは事前に散布を知らせること、Bさんだけでなく看板を出して周囲の人にも知らせること、化学物質過敏症の患者がいるということを知らせてほしいと頼みましたが、実際には、何も知らない女性の職員が通知を読み上げただけだったそうです。
 その後も状況は変わらず、電話で「明日撒くから」しか言ってきません。その日はたまたま自宅に5,60人集まる予定で、Bさんは避難できないため、せめて夕方に散布してもらえないかと頼んだところ「一主婦としては卒倒しかねない程の怒鳴られ方」をされたということです。
 まさに住宅地に囲まれた中で農薬散布をしていて、しかも、国も県も市もかんでいながら、未だに解決できないでいるわけです。通知は無視されているわけですが、この事例ではどのようなことができるのか、農薬対策室長に聞きました。
 室長は、「散布する場合には事前に周辺住民に対して農薬使用の目的、散布日時、使用農薬の種類について十分な周知に努めることとお願いはしてきている。今のお話では現場では不十分なところがあるということはわかるが、個々の事例について、霞ヶ関でどこまでやれるのかというのは、なかなか難しい問題もある。県にそういう事例もあったと話したい」と人ごとみたいな回答でした。
 しかし、事前に知らせるのは最低限のことで、こういう住宅地の真ん真ん中で撒かれた農薬が目に見えるような形で散布されてている。こういう状況をなくすために通知が出たのではないか、どうやって農薬を減らすかが大事なのに、霞ヶ関が何もできないなどというのはとんでもない話だ。少なくとも、千葉県の対応はおかしいし、通知の趣旨が理解されていないのだから、直ちに県に指導し直して勉強会を開いたらどうかと提案しました。
 このような状況の場合、農薬を減らすということをはっきり見据えた上で、栽培者と話し合っていかないと解決しません。農家は、有機リン系農薬を減らす、動力の圧力を下げて薄めて散布すると言ってますが、それでも患者にとっては厳しいものです。第一、農家は部会で説明されるまで、この通知が出ていることすら知らなかったのですから。早急に、対策を考えてほしいと重ねて要求しました。
 では、環境省はどう対応するのか質問しました。環境省は自分の担当は公園や学校だが、各県の担当者には伝えている。今後こういう話があれば、機会があったらお願いしていくということでした。それでは不十分ではないか、あなた方には通知を周知する義務があるのではないかとの指摘には、確かにいかに農薬を使わない方向でやるかが一番大事だ。そのためのガイドライン作りを今年から始めているとのことでした。

★農地は農水省・公園などは環境省が担当と
 通知は連名だが、どういう役割分担になっているのかとの質問に、公園、学校、街路樹など農地以外は環境省、農地は農水省とのことでした。しかし、被害者が同じことを2度も言わないですむよう、農水省と環境省は互いに連絡を取り合いながら、対応していくと約束しました。となると、柏市のカブ畑は農水省の担当となります。農薬対策室長は「可能な限り周知に努める」と回答しましたが、ずっと監視していく必要がありそうです。
 また、一般市民にこの通知を知らせるための方法として、自治体、農薬販売店などに、チラシとかポスターを置く、自治体がそれぞれホームページで知らせるなど提案しました。

★環境省の農薬吸入毒性試験について
 環境省は今年度から農薬の吸入毒性の試験をするための検討委員会を設置し、事業を進めたいとしています(農薬吸入毒性評価手法確立調査の進め方について(案))。その点についていくつか質問しました。
 検討会の委員については、@化学物質過敏症の専門家を入れること、A企業から研究費をもらっている研究者を排除すること、B農薬による健康被害者の意見を聞くこと、C検討会は公開にすることなどを要望していました。
 これに対して環境省は、現在、人選を進めている段階だが、化学物質過敏症の専門家は入れると約束しました。Aについては、どの農薬を対象にするかなど決まっていないので、誰が企業からお金をもらっているかわからないとの回答でした。私たちは人選が決まったらその段階で確認できるのではないかと反論しましたが、確約はしませんでした。
 Bについては、検討会が始まったら委員に相談する、その場合、できる限り希望に沿えるようにしたいとのことでした。Cについても、同様でした。原則公開だのはずですが、現在、環境省が設置している農薬飛散リスク検討委員会は非公開です。直ちに公開にすべきと思います。
 また、亜急性吸入毒性のデータは農薬メーカーが登録するときに、提出することになっているからそのデータの検討から始めるべきではないかと質問すると、農薬対策室長が、亜急性吸入毒性の試験は必須の要求事項ではないので、とられていないと回答しました。
 しかし、必須の事項ではなくても、既に出されているデータがあるのではないかと聞くと、あるかもしれないが今はわからないとのことでしたので、そのデータの提出を要求しました。

★環境省のモニタリング調査について
 昨年、環境省は農薬散布のモニタリング調査をして結果を発表しましたが、ゴルフ場や工場敷地での調査しかしておらず、疑問点が多いものでした(農薬飛散リスク評価手法等確立調査検討会記事t18707)。
 委託先は、農薬空中散布の推進母体として設立された農林水産航空協会で、この点について参加者から質問が出されました。環境省は、自分たちの求める調査内容の企画を出したのが、この協会だけだったと弁明しましたが、競争入札と言いながら、参加資格にいろいろ制限をつけ、実質は随意契約ではないかと思われました。農薬使用に利害関係を持つ委託先のデータは本当に信頼できるのか疑問に思われます。
 また、ゴルフ場や工場など住宅地ではない場所で、しかも、10月、11月と農薬の揮発が少ない時期に実施されたことは、計画自体に問題があったのではないかと指摘しました。今年度もモニタリング調査を行うとのことですが、それらをきっちりクリアーしてほしいものです。
 都道府県の研究所などでのデータを集めたらどうかという提案には、予算が取れないと一蹴されました。しかし、環境省の委託費は一箇所1000万円です。それが2箇所しかできないというのが情けないですが。

 環境省、農水省の新しい農薬担当者との話し合いは以上のようなものでした。今後、通知に反するような事態が発生した場合、農地は農水省、それ以外は環境省が担当して解決に当たるようです。もちろん、両省とも緊密に連絡を取りながらやるということですから、問題が起こったら以下に電話してください。農水省農薬対策室:03−3501−3965 環境省農薬環境管理室:03−5521−8323

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作成:2007-05-26