街の農薬汚染にもどる
t19004#東京都練馬区、校庭芝生化で農薬使用とは〜脱農薬緑化条例をつくろう#07-06

【参考サイト】練馬オンブスマン
       練馬区中村小学校芝生の会
       東京都の校庭芝生化のHP

 今年2月、東京都の練馬オンブスマンの土屋としひろさん(現練馬区議)から、同区の中村小学校で校庭芝生に農薬を散布しているとの相談がありました。学校での植栽管理にできるだけ農薬を散布しない方法をとることを求めた通知「住宅地等での農薬使用について」もあり、まさか、学校でとの思いが頭をよぎりました。土屋さんによれば、芝のうどんこ病、ブラウンパッチ、さび病対策に、殺菌剤を多用しているとのことで、2006年は 6/10、7/16、8/11、9/16にバシパッチ、11/4にタフシーバを散布していたそうです(散布量は500又は1000倍希釈液で、年間約16kl)。

★学校関係者は「住宅地通知」守らず
 中村小学校で使用された農薬、バシパッチ(理研グリーン H2.11.7登録)は、プロピコナゾールとメプロニル成分とする水和剤、タフシーバ(バイエルクロップサイエンス H9.3.27登録)はテブコナゾールとペンシクロンを成分とする水和剤です。

 土屋さんの調べで、散布の際に、学校周辺に散布の告知をしておらず、住民の中には体調を崩した人もいたことが明らかになりました。
 小学校関係者や利用する住民らが、校庭の芝生管理を目的に作った地域組織「中村小学校グリーンキーパーズ」は、そのHPで『用いられました薬剤成分は、稲、小麦やりんごなど果実、ほうれん草、ねぎ、きゅうり、レタス、トマトなど農産物によく使われている殺菌成分剤です。毒性検査や残留性に関する極めて厳格な調査と使用方法が規定されている薬剤で安全性は問題なしとの評価を受けています。−中略− 私たちグリーンキーパーズでは安全性に問題は無いと理解しております。』との見解を示していますが、 使われた薬剤の毒性は、以下のようなものです。
【テブコナゾール】メーカーが明らかにした毒性の概要では、変異原性は
   認められない。
    マウスを用いた発がん性試験では、肝細胞腫の増加が認められたが、非遺
   伝毒性メカニズムによると考えられている。マウスを用いた催奇形性試験で
   は、30mg/kg以上の投与で発育遅延児数の増加、100mg/kgの投与で、胎仔の口
   蓋裂や脊椎形成障害の増加がみられた。
【プロピコナゾール】皮膚刺激性、眼刺激性あり。変異原性、催奇形性、発
   癌性のデータの詳細は不明。
【ペンシクロン】眼刺激性あり。メーカーが明らかにした毒性の概要では、
   変異原性、催奇形性、発癌性は認められないとなっているが、データ詳細不明。
【メプロニル】毒性試験データ不明。
★校庭芝生化は都の補助金事業
 東京都は、ヒートアイランド対策の緑化の目的で、校庭芝生化を推進しており、初期施 工について補助金事業を実施しています。2005年度の事業内容は、表のようでした。
 05年の補助金は、27校、約5.8億円(07年度は73校、約20億円)で、いちばん多かった のは、中村小学校(3196u)でスプリンクラー設置も含め4914万円でした。
 いったん植えた芝の維持管理は区市(学校)にまかされます。ちなみに、中村小学校の ある練馬区の場合年間約1.3億円の予算が組まれています。
 校庭の芝生は表に示したように、いくつかの種類の芝が使われています。中村小学校が 植えたペレニアルライグラス、トールフェスク、ケンタッキーブルーグラスはいずれも、 寒地型の冬芝で、農薬散布をしたのは、同校だけ(約50万円を区が出費)。東京新聞5月 4日付けによると、同じ三品種を植え、農薬を散布しなかった小平第十三小学校では全滅 し、これに対して、ノシバ、ティフトン419、コウライシバなど夏芝を植えたところは、 無農薬で大丈夫だったとのこと。日本の風土にあわない芝を農薬を散布して管理維持しよ うという考えは止めるべきです。

 表 2005年度、東京都の補助金事業で芝生化を実施した学校 −省略−

★東京都環境局長は校庭芝生化で農薬を使わないと
 07年2月15日の都議会で、藤井一議員の質問『前略−芝生を害虫から守るために農薬や殺虫剤等を使用すると、アレルギーや副作用など児童生徒の健康に悪影響を及ぼすことが懸念されます。いろいろな技術が開発されている現在にあっては、化学農薬等を使うのは可能な限り避けるべきであります。校庭における芝生の維持管理についての都の所見を伺います。』に、環境局長は以下のような答弁をしています。
『校庭芝生化事業を進めていく上で、芝生の維持管理に当たって、児童生徒の健康に配慮し、できるだけ農薬等の使用を抑える、同時に、除草や病害虫防除を適切に行っていく、この二つをいかに両立させるかが課題でございます。
 この間、既に芝生化を実施した学校にお伺いし、経験などをお聞きしておりますが、多くの学校で農薬等を原則として使用せずに維持管理を行っております。それらの学校では、そのために専門家の知恵をかりたり、日常的な除草作業等に児童生徒を参加させたり、保護者や地域などと連携するなど、さまざまな工夫がなされており、そのことで児童生徒の間に自然を大切にする意識を高める教育効果を生んだり、保護者相互あるいは地域のきずなが深まるなど、当初想定していなかった芝生化の新たな効果の発揮につながっているとのことでございます。
 都は、こうしたノウハウや体験を取りまとめ、区市町村や学校に積極的に情報提供することにより、できるだけ農薬等を使用しない校庭芝生化を進めてまいります。』

 このことをぜひ、実践してもらいたいと思い、私たちは、東京都に、校庭芝生化の考えを質しましたが、その際、「校庭芝生ガイドライン」を作成中であることがわかりまた。
★東京都への要望と回答
 そこで、都に対しては、以下の要望を行いました。
 @校庭芝生化に関するガイドラインに農薬不使用を明記する。
 Aやむをえず、農薬を使用しなければならない場合は許可制にする。
 B維持管理に手間やお金ののかかる芝生でなくて他の草でもいいのではないか。
 C屋上、壁面緑化でも同様の考えで進めてほしい。
 これに対して、東京都の回答は、
 @については、対応する。これからガイドラインを作るのでどの程度できるか
  不明だが、農薬を使用しないということは書くつもりだ。
 Aについては、区市町村が維持管理をすることになっているので、都が農薬使
  用を許可制にしろとは言いにくい。
  区市町村と話し合う機会があるので、学校、教育委員会などへの説明、講習
  会を通じてこういう要望があることを伝えていく。
  環境省、農水省の出した「住宅地等における農薬使用について」の通知遵守
  は機会あるごとに話していく。
 B芝生以外の緑に関しては、その草をどう管理するかの知見がないので、にわ
  かにはできない。芝生に関してはヒートアイランド対策で、温度が下がると
  いうことはわかっている。この点は検討課題にしたい。
 C壁面や屋上緑化も農薬不使用にするということに関して、基本的に異論はな
  い。公共施設に関してはできるが、民間に関してはどこまで首をつっこめる
  か問題がある。考え方としてはいいと思うので、協力を求めていく
 とのことでした。
★地方自治体には脱農薬緑化条例を
 東京都は、06年末、地球温暖化対策として、「10年後の東京」を策定、その中で、緑化政策−水と緑の回廊に包まれた、美しいまち東京を復活させること−を第一の柱として挙げました。
 07年6月8日公表された「緑の東京10年プロジェクト」基本方針には、10年後の東京の姿として
 ○緑の拠点を街路樹で結ぶ「グリーンロード・ネットワーク」の形成
 ○東京に、皇居と同じ大きさの緑の島が出現(「海の森」を整備)
 ○新たに1000ha の緑(サッカー場1500面)を創出
 ○緑化への機運を高め、行動を促す「緑のムーブメント」を東京全体で展開
 ○都内の街路樹を100万本に倍増
があげられており、
都市の美化や省エネ対策として、街路樹倍増のほか、校庭芝生化、屋上・壁面緑化の推進も折り込まれています。
これらは、生活環境(=住宅地周辺など)の緑を増やすことを意味します。そのための植栽管理に農薬を使うことで、環境負荷を増加させたり、人に健康被害を与えては、なんにもなりません。また、管理がわるいと、水たまりが増え、蚊の発生源となったり、蝿、ゴキブリ、ネズミなどの食べ物が増え、衛生害虫の繁殖を促進し、農薬と同じ成分である殺虫剤等を使用するケースが増えることも考えられます。現状を思えば、緑の倍増、即、農薬使用の倍増になる恐れがあります。これでは、化学物質過敏症の方や農薬弱者はたまりません。
 すでに、都道府県に要望していますが、緑化用植物の栽培管理に際しても「有機農業の推進に関する法律」の趣旨(化学合成された肥料や農薬を使わない)を生かすことが重要です。
 私たちは、民主党と協力して、生活環境での農薬等の使用による人の健康被害防止をめ ざし、昨年6月、「殺虫剤等の規制等に関する法律案」と「害虫等防除業の業務の適正化 に関する法律案」の二法案の提出しましたが(記事t17801参照。現在、廃案となっている が、今後、再提出の予定)、国レベルだけでなく、地方自治体に対しても、「農薬等を使 用しない市街地緑化を推進する条例」の制定を求めましょう。その中で、
 ○農薬を使用しない緑化と殺虫剤等を使用しない衛生害虫の発生・繁殖防止の推進
 ○剪定枝や落ち葉を利用した堆肥づくりとその利用による循環社会の形成
 ○病害虫に強く、農薬を使わなくてよい栽培植物の研究と開発及びその普及
 ○農薬を使用しない植栽管理と殺虫剤等を使用しない衛生害虫管理のマニュアルの作成
 ○緑化事業に伴う殺虫剤等を使用しない衛生害虫発生防止対策の研究と開発
 ○農薬を使用しない植栽管理や殺虫剤等を使用しない衛生害虫管理の研究と開発
などを、自治体の責務として条文にいれ、研究・開発のための予算確保や普及のための補助金制度だけでなく、民間には税制優遇措置も取り入れたらどうでしょうか。


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作成:2007-11-26