空中散布・松枯れにもどる
t20501#山形県:農薬空散布中の無人ヘリコプターが日本海に消えた〜ヤンマー製AYH−3型が制御不能で行方不明に#08-09
【参考サイト】無人ヘリコプター関連リンク
  農水省:農林水産航空事業に関する情報(病害虫防除に関する情報にあり)にある都道府県別(散布面積、無人ヘリ機体数、オペレーター数)
     無人ヘリコプター利用技術指導指針
     無人ヘリコプターによる空中散布等の実施時における安全対策の徹底について

 記事t20402で、農薬空中散布中の無人ヘリコプターの墜落事故2件を取り上げましたが、8月23日、先月と同じ山形県JA庄内たがわ三川支所管内で、制御不能となった無人ヘリコプターが行方不明になるという前代未聞の事故が起りました。

★操縦不能となり、日本海へ
 事故が起ったのは、8月23日早朝です。成田新田無人ヘリ防除組合が実施主体となり、 138haの水田で、カメムシ防除のための殺虫剤スタークル液剤10(ジノテフラン10%含有、希釈倍率は8倍)の散布が、無人ヘリコプター1機(ヤンマー社製AYH-3型)で実施されていました。散布開始後20分の5時50分頃、圃場を飛行移動中に、機体が操作不能となり、そのまま、東風にのって飛びはじめました。下降操作などを行うものの、操縦不能の状態は続き、トラックで追跡しましたが、約2km先の庄内空港あたりで、機体は見失われました。
無人ヘリは、更に2km以上飛び続け、海岸にいた釣人の目撃証言では、海上を西に向かって飛んでいったとのことで、以後、日本海に没したのか、行方不明となったまま、回収のめどはたっていません。
 原因については、メーカーサイドも加わり、オペレーターの聞き取り調査や操縦機器の点検が実施されていますが、結論はでていません。

★操縦できない時は落下させるのが原則だが
 農林水産航空協会発行の「産業用無人ヘリコプターによる病害虫防除実施者のための手引き」には、緊急対応として、目視外へ行きそうになった場合、『安全地帯に機体を落とす』とあります。山形県の場合、下降操作などをしたとありますから、なんとか、ヘリを落下させようとしたのでしょうが、制御不能で、飛び続けたと思われます。これは極めて危険なことで、飛行方向には、庄内空港があり、まかりまちがえれば、航空機との衝突もありえたわけです。
 私たちは、山形県や三川町及びJA庄内たがわに、原因が明確になり、無人ヘリの総点検やオペレーターの再教育などが実施されるまで、空中散布を止めるよう求めました。回答では、8月27日以後実施しておらず、今年度の散布計画は以降ないそうです。

★機種は、ヤンマー製AYH-3
 7月から起っている3件の事故機はすべて、ヤンマー製のAYH-3型です。この無人ヘリは、03年から販売された機種で、胴体長2.75m(プロペラを含む全長は3.63m)、装置や燃料、農薬を含む全重量は90kgくらいになります。飛行時間は60分、高度限界は100m、制御範囲は150mという仕様になっています。
 ヘリ本体には、位置確認のできる方位測定システムが搭載されているにも拘らす、機体の所在が不明のままであるのは、装置がきちんと機能していたのかという疑問が残ります。また、フライトレコーダーも装備されているのですが、プール墜落事故では、データが機体の水没とともに取り込みができていない状態になったとあります。何のためのレコーダーかと言いたくなります。
 7月23日の滋賀県の墜落事故では、オペレーターは機体から30mほどの距離で制御操作をしていました。7月30日夕方の山形県横山小学校プールへの墜落事故では、小学校北側に隣接した圃場での散布作業が行われてていましたが、終了直前、後進で航行中、操作不能となり、外壁とNTT電話線に接触、プールに墜落したとのことです。オペレーターは道路を移動しながら、平行散布を行っていましたが、圃場と学校外壁との間隔は水路・道路等で10mあったとのことです。
このような状況で、どのような操作ミスがあったのか、ヘリ本体に問題はなかったかなど、原因調査の徹底が望まれます。

★こんな考えでは、事故はなくならない
 今回の一連の事故で、行政や農協にいろいろ問合せて、回答をもらいましたが、その中で、気になった点を次にあげておきます。
 ・散布予定チラシ内容が不十分だった
   農協が私たちに示したチラシには、おおまかな散布日程とともに散布場所は
   三川町全地域とあるだけで、薬剤名も、健康への影響や事故が起った時の対
   処の仕方もないのです。
 ・回答『今後も農薬散布実施の有無に関わらず、プールを開設していく必要がある。』
   さすが、プール開放時間の散布はないようですが、散布後の農薬ミストや大気
   汚染の危険性の認識がありません。
 ・事故を起こしたオペレーターや技術指導指針を遵守しなかった実施主体にペナル
  ティを課することについては、回答『法的規制や権限がないので考えない。』
  無人ヘリコプターは無法状態ということでしょうか。

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作成:2008-09-27