室内汚染・シロアリ駆除剤にもどる
t20703#環境省が、殺虫剤等の生産・使用実態を報告〜メーカーへのアンケート調査結果(その2) 出荷量の92%を占める衣料用防虫剤は食品汚染の原因に#08-11
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【参考サイト】環境省:「平成18年度殺虫剤等に関する使用実態等調査業務」報告書
             及び届出外推計資料にある
            各年度の殺虫剤に係る需要分野別・対象化学物質別の排出量推計結果や
            防虫剤・消臭剤(p-ジクロロベンゼン)に係る用途別の排出量推計結果参照

★製剤数:屋内用492剤、屋外用353剤
 製剤を使用場所で見ると、屋外で使用するものは72成分353製剤で、フェニトロチオンが28製剤と最も多く、次いでフタルスリン25、フェノブカルブ23、エトフェンプロックス16の順でした。屋内使用は78成分492製剤で、ビフェントリンが41製剤と最多、次いでエンペントリン40、エトフェンプロックス31、ペルメトリン及びシプロコナゾール25の順でした。

★出荷量:106成分で8392トン
 成分別の出荷量が調査されました。数量が把握できた配合成分の数は106で、うち屋外で使用されるものが65、屋内で使用されるものが71、両方で使用されるものが10ありました。このうち年間1トン以上の合計出荷量を有する成分を使用場所別に表3−省略−に示しました(PRTR法の届出外推計排出量を右端欄に記した)。
 屋外72.06トン、屋内8312.80トン、合計8392トンが出荷されていました。表には、屋外、屋内別にそれぞれ出荷量の多い成分を10位まで○番号で示してあります。
 もっとも多かったのは、パラジクロロベンゼンで、全体の83.8%の7031.3トン(PRTR統計16763トン)ありました。これは、衣料防虫剤やトイレ用品に多用されているせいです。ついで、多いのは、ナフタレンの453.9トンで、3位、4位のショウノウ、エンペントリンとともに、衣料用防虫剤の配合成分です。今回の調査対象にハエ、カ、ゴキブリなどの衛生害虫駆除剤のすべてがはいっていないことを考慮しても、衣料防虫剤が全出荷量の約92%を占めていたとは驚きです。第3位にあるのは、漂白剤やカビ取り剤の配合成分である次亜塩素酸ナトリウムで、190トンとなっており、毎年、家庭やプールなどで起こる塩素ガス発生事故につながっています。なお、表以外に、聞き取り調査で、グリホサート系非農作物用除草剤が約1750トンあったことを忘れてはなりません。

★有機リン系減り、ピレスロイド主役に
 上位5までを除いた成分約535.4トンについて、どのような種類の成分の使用が多いかを図に円グラフで示しました。視覚的にどの成分が多いかをみてください。

図 05年度成分別の出荷量(上位5成分を除く) −省略−

 いままで健康被害の原因として問題の多かった有機リン剤は7成分の出荷量が報告されており、フェニトロチオンの約6.5トン(PRTR統計53トン)を筆頭に、合計約8.2トン(PRTR統計182トン)となっています。PRTR統計で約53%の97トンを占めるDDVP(ジクロロボス、プレート剤ほかに使用される。(PRTR統計97トン)がみられないのは、医薬品・医薬部外品が集計されていないせいです。
 ピレスロイド系では、衣料防虫剤のエンペントリン75.3トンなど19成分が合計約117.5トンあり、不快害虫用殺虫剤(エトフェンプロックス、シフェノトリン、フタルスリンほか)やシロアリ防除剤(エトフェンプロックス、ビフェントリン、ペルメトリンほか)にも使われています。このほか、毎年、さかんにテレビCMで宣伝されている衛生害虫用の殺虫剤などの集計が加算されることになるでしょう。

表3 配合成分としての出荷量(2005年度、単位:kg)

カーバメート系では、シロアリ防除剤としてのフェノブカルブが24.8トンあります。  ネオニコチノイド系は4成分が使用されており、全体第七位のチアメトキサムが54.2トン、イミダクロプリドが20.8トン、合計で79.6トンで、その大部分はシロアリ防除剤に使用されています。
 チアベンダゾール(TBZ)約19.1トンは、木材保存や繊維や浴室の抗菌用に使用されています。ほう酸は、シロアリ防除やゴキブリ用出荷が約18.8トンあります。
 円グラフのその他に含まれるのは、全体で第六位にあるオルトジクロロベンゼン55.0トン(PRTR統計225トンで、薬事法の医薬品、医薬部外品は除外されていると思われる)ほかで、クレゾールは不快害虫駆除や鳥獣忌避用に約8.2トン使われています(PRTR統計17トン。10月20日、大阪市でネコ除けに使われ異臭事件となった)。
虫よけ剤の主流ディートは約3.2トン、鳥獣忌避剤としての木酢液は約4.1トンあります。不快害虫とシロアリ用のフィプロニルが約1.3トン、ゴキブリ用ベイト剤ヒドラメチルノンは91kgです。
 昆虫成長制御剤であるメトプレンは184kgですが、ノバフルムロン、ピリプロキシフェン、ヘキサフルムロはそれぞれ11kgで少量です。
 シロアリ用には、サンプラス約5.8トン、MGK264約2.8トン、クロルフェナピル約1.9トン、IPBC約1,7トンほかが、木材保存用にはシプロコナゾール約1.7トンほかがありますが、木材防腐に使用されるクレオソートは集計されていません。

★パラジク、ナフタレンによる食品汚染
 調査で明らかになった農薬以外の殺生物剤の身近な使用の弊害のひとつとして、食品への二次汚染が問題になっています。 10月23日、神奈川県藤沢市を手はじめに、岡山県、佐賀県ほか各地で、日清食品や日本生協連販売の即席カップ麺で、異臭・健康被害事件が報告され、その後の調査で、原因の多くは、製造中のミスや食品犯罪ではなく、流通・保存過程での衣料防虫剤パラジクロロベンゼンやナフタレンによる食品移行だとされました(めん業界での異臭報告は40件を超えるという)。このような食品異臭事件はいままでにも、表4ような事例が報告されています。
 製造工程で汚染がなくとも、流通段階の輸送・倉庫で、さらには、販売店や家庭での保管中に、いたるところで使われている化学物質が食品に入りこむ余地があります。 10月には、中国製あん製品にトルエンや酢酸ビニルが、伊藤ハム製ウインナーにトルエン(包装材料製造機の不良が原因)が、キリンビバレッジ製ボトル水「ボルヴィック」にキシレンとナフタレン(輸送コンテナの汚染が原因)が検出されています。
 さらに、異臭がないといって安心はできません。シロアリ防除剤由来のクロルピリホスや補助成分S-421が台所の収納庫に保管中のコメやソウメンに移行したり、DDVPが冷凍食品に検出された例もあります。
 日本即席食品工業会協会は、10月28日、『カップめん、袋めんを「防虫剤」「殺虫剤」「洗剤」「芳香剤」「化粧品」等、香りの強いもののそばに置くと、それらの香りが移ることもありますので、取扱い・保管には十分ご注意下さい。』と広告をだしましたが、自らの包装・容器の改良だけでなく、輸送・保管・販売での汚染防止責任をとってもらいたいものですし、そもそも、そのような化学物質が使われること自体も問題にせねばなりません。
 
              表4 食品異臭事件の事例

 年 汚染物質        食品          汚染理由等
80-81 ジクロロフェノール   トマト         残留農薬プロチオホスの代謝物
 85  パラジクロロベンゼン   クリ          衣料防虫剤からの移行
 89  ジクロロフェノール   トマト         残留農薬プロチオホスの代謝物
 ?? ナフタレン       もなか          みやげ物店のショーケースに防虫剤使用
 92 クレゾール       中華饅頭        製造工程で使用したハエ忌避剤
 ?? パラジクロロベンゼン  粉ミルク        衣料防虫剤からの移行
 01 ナフタレン      ショットボトル入りビール キャップのポリエチレン部を通過(本誌113号)
 07 パラジクロロベンゼン   コメ           衣料防虫剤からの移行
08/5月 テトラクロロエチレン ビスケット        食品と化学物質の輸送車混載
【参考サイト】日本即席食品工業協会日本繊維防虫剤協会
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作成:2009-04-28