空中散布・松枯れにもどる
t20801#出雲市の松枯れ農薬空散「健康被害の原因は農薬とは言えない」林野庁の驚くべき回答〜11・28 林野庁交渉は決裂#08-12
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【参考サイト】倉塚さんのHPブログ
              たかやまさちこさんのHP2008年度の農薬空中散布
       出雲市:原因調査委員会:委員会議事録報告書
           防除検討会議:報道発表報告書本文
 11月28日(金)1時から、参議院議員会館で、松枯れ農薬散布中止を求めて、林野庁交渉を行いました。
 この交渉は、出雲市での1200人を超える松枯れ農薬空中散布による健康被害を受けて、8月6日に、57団体と個人35人の連名で林野庁長官宛に、「松枯れ対策として実施されている農薬空中散布・地上散布の即時中止の要望」を出していましたが、その回答を得るためのものでした。
 交渉は、一貫して空散反対の論陣を張ってきた参議院の岡崎トミ子議員がセットし、市民側からは、農薬空中散布反対全国ネットワーク代表で、出雲市松枯れ農薬空中散布健康被害原因調査委員会(同委員会報告書は記事t20601参照)に委員として参加、空散が原因であることを明らかにした植村振作さん、出雲で空散反対運動を続けてきた「島根くらしといのちのネットワーク」の倉塚香織さん他約20名が参加しました。農水関係として衆議院の篠原孝議員、地元選出議員として参議院の亀井亜紀子議員(代理)が出席しました。
 林野庁からは猪島森林保護対策室長他4名、国有林担当者1名、環境省農薬環境管理室から1名が参加しました。
 まず、植村振作さんから「空散反対運動と健康被害」と題して、散布農薬スミチオンMC剤を原因であると結論するに至った論拠の説明がありました。続いて、出雲の倉塚香織さんが同地での健康被害の状況と生徒たちの被害状況を説明しました。

★原因調査検討会は農薬が原因とは言ってない
 続いて、林野庁との話し合いに入りましたが、驚くべき見解でした。
 林野庁を代表して回答するとした森林保護対策室長は
「今回、出雲市で発生しました健康被害につきましては、市の方で設置されました健康被害原因調査委員会が出雲市長さんに答申された報告書がありますが、この中では『委員の見解には乖離があり8回の検討でもっても一本化するには至らなかった』、『ここでは委員の見解を3つに大別して示さざるを得ない』として、"農薬散布の可能性を否定できない""農薬散布が原因""原因が特定できない"という3論が併記されたと理解しております。
 薬剤使用をしました松食い虫防除は、松食い虫被害に対する総合的な対策を推進する上で引き続き、必要な防除法の一つであるというふうに考えているところでございまして、現在、松食い虫被害防除に使用されている薬剤は、農薬取締法に基づく、試験でその安全性が確認され、登録されているものであります。薬剤を使用した松食い虫防除については。これからも農薬取締法に基づいて定めた各種の基準を遵守して適正に実施してきたところでありまして、引き続き、地元事情等も踏まえながら、松食い虫被害対策が実施されるよう関係県とも検討して行って参りたいと考えています。」
 と、農薬との因果関係については頭から否定するような見解を述べました。
 これに対し植村さんが、「先程らい、これまでの空散による被害を話しているのであって、この現実に起こっていることに対してどう考えるのかを聞いている」と追及すると
 室長は、「出雲の事案としましてはですね、健康被害を受けられた方が1000名にのぼって、400人くらいですか、病院の診察も受けられたと言っておられますが、農薬が原因であるという因果関係を示した診断はなされていないと思っております。」と発言。これには、市民側から、一斉に驚きと抗議の声が上がりました。
 会場からは「農薬が原因でないというのなら、何が原因かはっきりさせろ」と何度も質問がありましたが、林野庁はとにかく、「3論併記だ」としか答えませんでした。
 岡崎議員から「あなた達は因果関係が分からないという。でもそこには、因果関係を特定できる専門医もいない。このままでは、被害は続く。原因は分からない。そこで、散布側のあなたたちは、どうすればよいのですか。どう対処するつもりですか。このような被害が出ているということをどう受け止めるのですか」と迫りましたが、この議員の質問に対しても、正面からの回答はありませんでした。
 また、室長は「撒くときはですね、十分地元との関係者の方々と協議をしながら地元のご理解を得れるような場所で撒いてくださいと。どこでも撒いてくださいとか、こちらからは一切、そういう指導はしておりません。」とし、空中散布に補助金を出しながら、散布の責任を地元に転嫁するような発言をしました。会場からは、「健康被害があって出雲市では空散を中止したから、あなた方も検討してくださいって、通知をだしなさい。」という声もでましたが、「地方自治についてわれわれが強制的にこうしなさいとは言えない。」との答えが返ってきただけでした。
 結局、林野庁は、健康被害が起こったという点については、出雲市の報告書を無視はしないものの、農薬との因果関係は証明されていないとの言い募りに終始しました。
 私たちは、農薬散布で健康被害が起こるはずはないと頭から決めこみ、原因調査の具体策さえ示さない林野庁といくら話合っても進展はないと判断して、この交渉を打ち切りました。

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作成:2008-12-25