農薬空中散布・松枯れにもどる
t20802#45都府県への要望と回答―まだ28県が松枯れ農薬空中散布を続けると回答#08-12

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【参考サイト】出雲市:委員会議事録報告書(08/09/24)
           松くい虫防除検討会議報告書について報告書全文(08/12/02)

 反農薬東京グループは、08年11月、松枯れ被害がないとされている北海道、青森と08年度の散布計画のない4府県(埼玉、神奈川、岐阜、大阪)を除く41都府県へ、@有人ヘリ散布、無人ヘリ散布、地上散布を中止すること、A万一、実施する場合には健康被害調査をすることの2点について要望を出しました。また、前記4府県には電話で来年度の計画を問いあわせました。
 08年度は29県で松枯れ農薬空中散布が計画され、林野庁から補助金がでました。島根県出雲市の1200人を超える子供を中心とした健康被害を受けて、今年、同様の空中散布を実施した県が、どのくらい空散、地散を減らしているか関心のあるところでしたが、結果は望ましいものではありませんでした。
 締め切りを過ぎて催促しても回答のなかった県は、宮城県だけでした。宮城県は「回答するかどうかを検討する」との答えで驚きました。これらの県にはとりあえず、電話で来年度の予定を聞きました。その結果を含めてにまとめました。

■農薬散布をしないのは4県のみ
 来年度、有人ヘリ、無人ヘリ、地上散布の農薬散布をやらないという県は、群馬、埼玉、岐阜、大阪のたった4府県のみでした。これらの県は健康被害、環境汚染、効果がないことなどから農薬使用をやめており、非常に先進的な県だと思います。
 有人及び無人ヘリ散布はしないが地上散を実施する県は、
千葉、東京、神奈川、富山、山梨、三重、滋賀、京都、広島、徳島、高知、大分、沖縄の13県。
このうち、大分は来年度からの有人ヘリ散布は中止にしたそうです。理由は「予算状況が厳しい」からだということでした。
 来年度も有人ヘリで空中散布をするという県は、
岩手、宮城、秋田、福島、茨城、栃木、新潟、石川、福井、長野、静岡、愛知、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、山口、香川、愛媛、福岡、佐賀、長崎、熊本、宮崎、鹿児島の27県です。
うち、無人ヘリも同時に実施するのは、宮城、秋田、新潟、石川、長野、静岡、鹿児島です。山形は無人ヘリ散布と地上散 布で、有人ヘリ散布はしないということです。
 また、松枯れ対策としての農薬散布は森林病害虫等防除法ですべてがおこなわれているわけではなく、公園や砂防林を管轄している部署が独自で実施している場合があります。たとえば、神奈川県の08年計画では、森林課は地上散布も含めて一切の農薬散布を止めていますが、県土整備課が湘南海岸で75haの地上散布をしており、来年度も実施する方針とのことです。

■まだ、62%の県で空散を実施
 結局、有人、無人へりによる空中散布は28県で実施することになり、実に、松枯れ被害があるとされている県の62%に及びます。
 有人ヘリ散布を実施するという県の言い分は、@砂防、景観、防風などを目的に松林を保全することは重要、A保全すべき松林を定め必要最小限でやっている、B地元の要望がある、C効果がある、D事前に周知して、安全対策を取っている、などです。これらがどこまで、真実かはわかりません。
 1997年に、それまで5年間の特別措置法だった「松くい虫被害対策特別措置法」が、「森林病害虫等防除法」に吸収され、空中散布が無期限に実施できることになりました。しかし、空中散布はできる限り止めて、他の方法に変えるという付帯決議がつけられ、それに応じて、農水大臣が定める「防除実施基準」が策定されました。
 なかに「病院、学校、水源、家屋、給水設備等荷役剤が飛散・流入しないよう風向、風速等に十分注意し、これらの施設等から十分な間隔を保持する適切な措置を講ずる」とあります。「十分な間隔」について、林野庁は言を左右してはっきり言いませんが、2005年の岡崎トミ子参議院議員の質問には「200メートル」という数字を、あくまで「目安」だとして出しています。しかし、昨年の福岡県二丈町での空中散布では、200メートル離すどころか、民家の庭にじゃばじゃば農薬をかけていたことが明らかになりました。町はその民家にシートを支給したということですから、何をかいわんやです。県や町の担当者は防除実施基準すら知りませんでした。風速については5 m/秒以下(微量散布、液剤少量散布は3 m/秒以下)という数値が示されていますが、風向については、住宅地や通学路に向かって吹いていてもおかまいなしです。
 こうした実態を見ると、周辺住民に十分な周知をしている、安全対策をとっているとか言われても俄かには信用できません。空散実施県には、「適正な散布」の内容を具体的に聞かなければならないと思います。
 空散を実施すると回答してきた県は、「来年度以降も、市町からの要望があれば、地域住民等の理解と協力のもと、健康被害に十分配慮し、薬剤予防散布を継続する方向で検討しておりますので、ご理解いただくようお願いします。」のように、必ず「ご理解をお願いします」と書かれていましたが、もしかしたらこれが出雲での健康被害に関する唯一の変更かもしれません。それにしても、島根が来年も空散をするといっているのは、どういうつもりでしょう。

■別に国有林の空散もある
 「地方分権だから県に何も言えない」と主張している林野庁が自ら実施している国有林での空中散布も問題にせねばなりません。08年度の計画として、福島:271ヘクタール、茨城:89、新潟:113、長野:97、鳥取:18、山口:6、福岡:456、佐賀:311、宮崎:270、鹿児島:1364、合計10県:2996 があげられていました。
 国有林での空散は国が直接実施するもので、率先して空中散布をやめるべきですが、ほとんど減少していません。国有林野部長に早急な見直しを要望しましたが、上記付帯決議に沿って、農薬散布を中止して欲しいと思います。

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作成:2009-03-28