街の農薬汚染にもどる
電子版「脱農薬てんとう資料集」第7号農薬類の使用規制をめざす法律案
t20804#環境省が、殺虫剤等の生産・使用実態を報告〜メーカーへのアンケート調査結果(最終回)業界自主規制の限界#08-12
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【参考サイト】環境省:「平成18年度殺虫剤等に関する使用実態等調査業務」報告書

★防除業者数3248、6割以上が業界団体に加盟せず
 薬剤等の販売業者に対する聞き取り調査により得られた防除業者情報がまとめられまししたが、05年における業者数は3248ありました。この数は、本社のみがカウントされており、1個所以上の支店・営業所を有する業者(10〜500の営業所を持つ大手業者もある)が192あることを考慮すると、実数はもっと増えることでしょう。
 防除業者のうち、業界団体である日本ペストコントロール協会(厚労省所管の社団法人で、主に建築物衛生法に基づき、衛生害虫の駆除を目的とした、都道府県への登録業者などが会員都道府県への登録業者などが会員)及び日本しろあり対策協会(国土交通省所管の社団法人で、建築物のシロアリ被害や腐朽の防止を目的とする防除業者等が会員)の加盟会員数と加盟率を調べた結果は表5のようでした。厚労省の資料では、建築物衛生法に基づいて、都道府県に届けられている登録業者数は2438(03年)となっています。
 いづれにしろ、6割以上の防除業者は、非会員として営業していることになります。農薬を含め、殺虫剤等を取扱う防除業者は、業界団体に加入しなくとも、また、法律による届けや認可がなくとも営業ができるわけで、多種多量の薬剤を使用するにも拘わらず、法的には一般家庭の使用者と同列にあることは、大きな問題です。
  表5 防除業者の業界団体加盟数と加盟率(2005年)

   業界団体名             加盟数      加盟率
  (社)日本ペストコントロール協会   742(営業所含883)  22.8%
  (社)日本しろあり対策協会      718(営業所含814)   22.1%
     両協会加盟           273                  8.4%
   いずれかに加盟              1187         36.5%
★業界団体の自主規制
 環境省の報告書では、薬事法の適用薬剤を扱う日本防疫殺虫剤協会(殺虫剤を製造販売する製剤メーカー10社、殺虫剤原体を開発、製造、販売(輸入)する原体メーカー及び商社10社、合計20社からなる団体)と日本家庭用殺虫剤工業会(正会員18社、賛助会員15、特別会員1)を除く、以下の4団体から提供を受けた自主基準、ガイドラインおよびその概要が示されています。
@社団法人日本ペストコントロール協会(略称PCO協会、ネズミ・害虫等防除業者の団体。正会員880以外に製剤メーカー、保護具メーカーや保険会社など賛助会員31)
A社団法人日本しろあり対策協会(略称白対協、シロアリ防除業者の団体。会員は施工業者約800のほか、防蟻・防腐材料製造業者9、防除薬剤製造・販売業者33)
B日本家庭用洗浄剤工業会(家洗工。旧カビ協=家庭用カビ取り・防カビ剤等協議会と統合)(家庭用のカビ取り・防カビ剤製造・取扱い業者の団体。会員会社17)
C生活害虫防除剤協議会(略称生防協、有害・不快害虫等の薬事法対象外の薬剤製造・取扱い業者の団体。会員は製剤メーカー67社と特別会員3団体−日本家庭用殺虫剤工業会日本防疫殺虫剤協会日本繊維製品防虫工業会

【PCO協会】殺虫剤安全使用ガイドラインでは、薬剤別の毒性や安全な使用法、環境や人への影響、薬剤散布に関する掲示方法や掲示期間(3日)、入室禁止時間(換気2時間以上)などの顧客に対する注意喚起事項、薬剤処理の際の住民に対する面談調査法や調査用紙の様式(環境や人、ペットなどに対する確認事項等)、住民への注意事項(入室禁止時間)や入室前の注意点(換気など)の掲示具体例などが示されることになっています。
また、「IPM宣言」に基づく「ペストコントロール業務遂行」の指針、建築物におけるIPM仕様書・ネズミ・昆虫等の調査と防除基準なども示されていますが、加盟業者の実効のほどは?です。

【白対協】薬剤の安全性や防除施工における安全管理基準があり、協会の認定薬剤や防除施工士制度が設けられています。しかし、農薬のような毒性試験などのデータは開示されていません。

【カビ協】家庭用品での塩素ガス発生事故が絶えない塩素系カビ取り剤について、厚労省のマニュアルの手引きに基づき、ガイドラインを設け、使用上の注意や「混ぜるな危険」の製品表示基準が推し進められています。業務用での塩素系殺菌剤でも、プールや食品製造工場での事故も毎年のように起っており、自主規制は限界に達しているようです。

【生防協】成分の種類、含量、効能、表示等についての「製品自主基準」を定め、独自に「製品登録マーク」制度を実施しています。しかし、市販される不快害虫(アリ、ヤスデ、ダンゴムシほか)用殺虫剤の中には、成分名すらないものもあり、野放し状態ですし、衣料防虫剤の食品汚染問題も起こっています。

★自主規制から法規制へ
 業界内の自主基準やガイドラインには、強制力がなく、製品が十分な毒性試験を実施されずに市場に出ることを防止できません。団体に所属する施工業者の会員については、行政通知や指導通達が配布され、講習や研修会がなされます(といっても、神奈川県の場合のようにとんでもない内容の講習会があった-記事t19106参照)。
 非会員の業者には、販売店を通じて文書が配布されることもあるでしょうが、周知徹底できません。その上、薬剤散布に携わる個々の作業者(下請けや孫請けやアルバイトも多い)が殺虫剤等についての知識をどれほどもっているか極めて疑わしいと思われます。
 業界団体の自主規制やガイドラインには限界があります。毒性や汚染状況が不明なまま薬剤を製造・販売しても、防除業者の不適切な使用で健康被害がでても、法的には、メーカーや業者に何のペナルティーも罰則もないのが現状です。
 殺虫剤等の製造・販売者には、成分の効能試験、人や環境への影響に関する試験の実施とその結果の公表を義務づけ、防除業者や作業者には登録制度や資格試験制度を設けるといった新たな法規制が必要です。

★製造・使用量の正確な統計を
 殺虫剤等の製造・使用量については、農薬のような法的な届出制度がありません。環境省の調査では、薬事法対象の医薬品や医薬部外品の数量が抜けている上、前号で示したように、化管法(PRTR法)による統計よりも、著しく少ない数量しか報告されていない成分もあります。そのPRTR統計も不十分なものです。2006年度の活性成分の例を表6に示しますが、これは同法指定化学物質に該当する16成分の統計にすぎず、しかも、医薬品や医薬品部外品である家庭用殺虫剤は除かれています。
 今後、非農薬系の殺虫剤や除草剤などについても、正確な製造・使用量が判明するよう法律を定めるべきです。
  表6 殺虫剤等のPRTRの届出外排出量(2006年度。単位kg、医薬品は統計外)
	
  家庭用殺虫剤	防疫用殺虫剤    不快害虫用     シロアリ防除剤
          自治体 防除業者     殺虫剤    業務   家庭     合計
    1  60,537    216,451    92,765      40,230       32,240   6,080    548,302
【参考サイト】環境省PRTR届出外排出量資料にあるH18年度の殺虫剤に係る需要分野別・対象化学物質別の排出量推計結果

★グリーン購入法で脱殺虫剤をめざそう
 記事t20301で、グリーン購入法による「環境物品等」の「特定調達品目」に、役務として植栽管理と害虫防除の判断基準が示されたことを紹介しました。これは、薬剤使用に頼らないIPM方法を推奨したもので、該当製品にあたるものはまだ、指定されていません。
 ここでは、シロアリ防除剤について考えてみましょう。
 03年7月1日から、健康被害の多発と私たちの運動の結果、建築基準法が改定され、シロアリ防除剤としてクロルピリホスを含有する建築資材が使用規制されました。しかし、その他のシロアリ防除剤については、日本しろあり対策協会や日本木材保存協会など業界の自主規制にまかされたままになっています。
 住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の融資「フラット35」を利用するには、相変わらず、住宅工事共通仕様書にある防腐防蟻措置が求められます。また、住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅品質確保法)では、防腐・防蟻・防錆処理の実施の有無が評価対象になっています。これらシロアリ防除処理について、IPM化がすすんでいるとは思えません。
 シロアリ対策でもまず、生息調査を実施する必要がありますし、メンテナンスしやすい住宅構造も必要です。最近の建築物は床下にもぐることも困難な場合がありますが、そんな場合は、ファイバースコープを利用して、蟻道を探り、シロアリの食害個所をみつけ、生息しているところがあれば、殺虫剤でなく、熱処理や液体空気処理で退治することもできると思います。
 シロアリ防除業者の多くは、床下検査を無料で行うとしていますが、シロアリの生息調査を業務とする検査契約を結ぶことで、その技術をいかしていくべきです。
 環境負荷が少なく、薬剤に頼らない方法や有害でない他の製品を開発し、それらをグリーン購入法で環境物品等(製品、役務)として、使用を推奨すべきでしょう。そうすれば、住民だけでなく、記事t20504で紹介したようなシロアリ防除業者の健康被害もなくすことができます。

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作成:2009-05-26