街の農薬汚染にもどる

t21301#環境省の08年度農薬飛散調査〜除草剤ラウンドアップの1ヶ月以上の土壌残留が判明#09-05
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【参考サイト】環境省:農薬飛散リスク評価手法等確立調査検討会

 環境省の農薬飛散リスク評価手法等確立調査検討会は、06年度から、農薬飛散実態の基礎的データを知るためのモニタリング調査を実施しています。その結果は、08年5月末に公表された「公園・街路樹等病害虫・雑草管理暫定マニュアル」にも反映されています。
 ここでは、08年度の調査結果を紹介します。なお、これらの試験を請負ったのは、前年に引き続き農林水産航空協会で、すべて同協会の長野県小諸市にある農林航空技術センター敷地内で実施されました。

★除草剤グリホサート=ラウンドアップハイロードの散布実験
 除草剤グリホサートアンモニウム塩液剤(ラウンドアップハイロード)の100倍希釈液を用いた散布試験が、9月16日から1ヶ月間実施されました。背負いポンプ型噴霧機を使用し、10m×9.9mの草地(平均草丈20-30cm、最大71-80cm)に約14分間散布、飛散量、気中濃度、葉及び土壌中残留量などが測定されました。

【飛散量調査】散布当日に、散布区域内5地点と区域外4方向、1m、5m及び10m地点に感水紙(水滴が落下した個所が青く変色することにより飛散が判明する。画像解析により変色部の比率を測定し被覆面積率とする)を置いて実施され、区域外では、風下側の1m、5m地点に各々被覆面積率0.051、0.010%で飛散粒子が見られました。

【気中濃度】散布区域内の1地点で0.2mと1.5mの高さ、区域外の4方向で1、5、10m地点で大気が採取されました。
グリホサートは、区域内0.2m高のみで検出され、その濃度は散布4時間後の0.28μg/m3が最高で、散布1日後には検出限界以下(0.05μg/m3)になりました。分析にかかるのはガス体のグリホサートだけでなく、ミストもトラップされているようです。区域外に散布液ミストが飛散しているにもかかわらず、気中濃度はいずれも検出限界以下でした。

【土壌中濃度】散布区域内の1地点で、深さ5cmまでの表層土が採取されました。 土壌中の濃度の推移を図(省略)に示します。散布直後0.15μg/gでしたが、1日後は0.28μg/gと高まり、7日後で0.20、30日後で0.18μg/gとほとんど減少しませんでした。メーカーの言うように土壌中ですみやかに分解しなかったわけで、報告書では、『土壌とともに採取された根などを含む試料を分析に供したことによるものと考えられるが定かでない。』と勝手な憶測が書かれています。

【葉中濃度】散布区域内の2地点で、雑草約50gが採取されました。葉中のグリホサート濃度は、散布直後に65-75μg/gでしたが、1日後には9.93-29.6μg/g、3日後に6.16-6.46μg/gとなり、以後、徐々に減少し、30日後には、0.3-2.03μg/gとなりました。3日後までの急激な減少は、1日後0.8、2日後6.4、3日後2.2mmの3回の降雨によるものか、葉面から吸収された薬剤が地下部へ移行したためか、明確ではありません。もし、雨のせいなら、何のための実験かわかりません。また、草は次第に枯れて水分量は減少するのに、葉の水分含有率はどこにも触れられていません。

 いままで、殺虫剤を使用した調査が多く、除草剤グリホサートの環境調査を実施した例はあまりありませんでした。今回の試験で、判明した重要な点は、散布1ヶ月後にもグリホサートが土壌中に残留していることを確認したことです。『土の中で微生物に分解され、土に残らない。』とのメーカーの宣伝はいいかげんなものだったことが明確になりました。  試験写真をみると、ノズルに飛散防止用の三角形のカバーをつけて、地上すれすれに散布しています。カバーの装着は、通常の散布ではみられません。できるだけ区域外への飛散量を減らしたデータを得ようとの目論みが明らかですが、その効果を知る試験もありません。実際の散布で、ほんとうに飛散量を減らしたいなら、カバー装着の有無による違いを示す試験をし、効果があれば、装着を義務づけるべきでしょう。

★意味のない感水紙による飛散調査
 飛散調査は、どのような気象条件で、どのようなノズルを用い、どの程度の圧力で、どのように噴霧すれば、散布区域外への飛散量が減るかを知る目的で行われる調査です。 3種の独立木(@高さ4.2m、A枝葉疎密高さ8.3m、B枝葉繁茂で高さ8.7m)を対象に水のみが散布され、農薬製剤に補助成分として、添加されている界面活性剤の影響は無視されました。
感水紙の被覆面積率から、飛散の度合いを知ることはできますが、飛散した液滴の痕が重なるため、変色画像を解析しても、被覆面積率が25%を超えると、実際の飛散液量を推定することは困難だそうです。こんな不正確な方法で実験したデータが使えるのでしょうか。 飛散は、風向や風速の影響をもろに受けると予測されます。そのためか、被覆面積率は、風速1〜2m/秒前後の軽風下、10m地点でゼロ〜46.2%、15m地点でゼロ〜13.8%と大きな幅がありました。
 樹高や樹形の違いの影響調査もなされましたが、結局、高木で葉の多い木は散布量が増え飛散量も増えるという常識的な結果が得られたにすぎません。この調査からいえるのは、『平均風速が2m/秒程度であっても、風下側では15m先へも飛散する可能性が十分にある。』ということでした。

★農薬検出期間の調査
 農薬散布後の立ち入り禁止期間を決めるための調査が、8月11日から26日まで実施されました。400Lの農薬希釈液(MEP、DEP、エトフェンプロックス、イソキサチオン各乳剤を混合)を、動力噴霧器で、葉から滴り落ちる程度散布し、4農薬とDEPの代謝物であるDDVPについて、葉及び土壌と大気での濃度などの分析調査がなされました。  散布区域は1000m2、高木(10-15m高21本)と中木(7-8m高19本)、低木(3m高8本)、小かん木(1m以下数本)が合わせて50数本生えている雑木林で、約10分かけて農薬が散布されました。分析試料の採取は区域内の3地点で実施されました。

【気中濃度】高さ0.2mと1.5mの2つで、散布1日後まで分析されました。  気中濃度の最高値はMEPが散布1時間後で5.08μg/m3、1日後でも最高0.28μg/m3検出されました。DEPは散布直後で最高12μg/m3、1日後には最高0.3μg/m3となっています。DEPの分解代謝物であるDDVPは散布中から最高4.30μg/m3検出され、1日後には最高0.03μg/m3まで減少しました。イソキサチオンの最高値は散布1時間後で1.35μg/m3、一日後は最高0.29μg/m3でした。エトフェンプロックスは蒸気圧が低いためか、散布中から1日後まで0.13→0.01μg/m3以下と低い濃度でした。

【土壌中濃度】深さ5cmまでの表層土を採取し、散布14日後まで分析されました。  DEP、エトフェンプロックスは散布直後から14日後まで、おおきな変化はみられませんでした(前者は検出限界0.02μg/g以下、後者は0.03〜0.09μg/g)。  他の3農薬は散布後、日数とともに減少するのでなく、MEPでは5日後に0.59μg/g、DDVPでは2日後に0.38μg/g、イソキサチオンでは14日後に1.28μg/gの最高値を示したケースがありました。

【葉付着量】高さ70cm付近の葉を採取し、散布14日後まで分析されました。
 MEPとDEPの平均付着量は、散布1日後までに、急激に減少しましたが、14日後は前者で0.0098、後者で0.0353μg/cm2残っていました。イソキサチオンでは14日後で0.323μg/cm2、DDVPは同じく0.0005μg/cm2検出されました。エトフェンプロックスは散布直後から14日後まで0.0620〜0.0376μg/cm2で、大きな変化はありません。

 以上ような試験調査から、散布14日後でも、農薬によってその量は異なるものの、土壌や葉に残っていることが明らかになりましたが、所期の目的である立ち入り禁止期間はとても、決定できないのか、報告書には、何の考察もありませんでした。いったい何のための調査なのかといいたくなります。

★蚕被害防止の飛散防止距離は1000mだが
 環境省の事業は、公園等で農薬汚染防止のための散布条件などを決めるためのものですが、試験のやり方に、そもそも疑問があります。通常より飛散が少ない散布方法をとっている/散布試験場の条件が実際の散布場面と違う/気温や雨、風など気象因子の影響の評価方法が不明/農薬分析の代わりに感水紙で飛散量を推定している/製剤中の補助成分の影響は無視されているなど、科学的な評価をするにはデータ不足です。
 人の健康への影響がないというならば、農薬を使用しないことが一番です。農薬を使用しない緑化を考えないで、危険性の少ない農薬散布方法を考えることに、どれほど意味があるのでしょう。
 農地での農薬散布について、養蚕地域のある神奈川県の農薬安全使用指導指針に、蚕被害防止のための安全対策の項が設けられ、厳しい指導が行われています。たとえば、防除対策上やむを得ず農薬を使用する場合の安全距離を、水和剤・乳剤については、桑園と果樹園・水田では1000m以上、桑園と野菜畑では500m以上とし、粉剤については、飛散する危険が高いので使用しないとなっています。
 環境省は、事業の最終年にあたる09年度には、エトフェンプロックス乳剤を用いた樹木散布試験を実施し、散布液の飛散範囲に関する調査を更に進めることにしています。そして、本格マニュアル(改訂方針)は、来年、公表する予定だというのですが、上記のようなありさまでは、委託試験を請負う農林水産航空協会の懐をふやすことが目的だといわれかねません。しっかりとした実験計画をたてて、実施してもらいたいものです。

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作成:2009-05-26