農薬の毒性・健康被害にもどる

t21701#農薬被曝事故は業務上過失傷害か、警察が被害届を受理(その1)千葉県ゴルフ場でプレイ中に無人へリのスミパイン乳剤被曝#09-09
 千葉県で実施されていた農薬危害防止運動月間のさなかの6月25日、印西市にあるゴルフ場習志野カントリークラブ(以下習志野CCという。)でプレイしていた3人のゴルファーのうち2人が、隣接ホール(約100m距離がある)で松枯れ対策として無人ヘリコプター3機により空中散布されていたスミパイン乳剤(サンケイ化学にあるMSDS)を被曝し、健康被害を受けました。

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【電子版資料集】第4号<無人ヘリコプター農薬散布∞現状と問題点>
【参考サイト】アコーディアゴルフのHPにある習志野カントリークラブ
          
★突然の蕁麻疹、呼吸困難、そして心臓が −省略−

★県の担当部署は、警察に被害届をだせと −省略−

★農水省は知らなかったと
 この情報を知った私たちは、農水省などの担当部署と千葉県に対し、なぜ、事故が起こったかを明らかにするため、無人ヘリコプターの散布業者や当日の散布状況について問合せました。
 ところが、農水省農薬対策室、植物防疫課、林野庁研究・保全課森林保護対策室連名の9月7日の回答には、『質問状(8月24日付)をいただいてはじめて知りました。これを受け農薬対策室では関東農政局を通じ千葉県に対して情報の提供及び当該ゴルフ場に対する調査を依頼しました。』とありました。
 無人ヘリコプターによる空中散布での健康被害事例なのに、千葉県から報告はなかったということです。いったい県と本省の情報連絡はどうなっているのでしょう。
 これでは、質問に挙げた習志野CCでの事故に関する質問に答えようがありません。はたして、『千葉県よりお答え頂くべきと考えます。』との回答に終始しました。
 唯一、回答で明らかになったのは、習志野CCの防除業者が04年から毎年、農薬使用計画書を提出しており、本年4月28日提出の計画書には、スミパイン乳剤等の農薬の種類、使用方法、使用する対象等の記載があったということでした。

★千葉県は『個別の案件については、お答えできません』と
 一方、千葉県はどうでしょう。
私たちは、習志野CCの無人ヘリコプター防除業者に関する質問や「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」遵守に関する質問を行いました。 その主なものを以下に示します。
 【質問6-3】再発防止のために、いつ、どこに、どのような指導をされたか教えてくだ
  さい。

 【質問6-5】健康福祉センター(保健所)や農林振興センターの「被害届」を受理しな
  いという態度について、貴県はどうお考えですか。

 【質問7】本事件の無人ヘリコプター防除業者について
  1)本事件に係わった、無人ヘリコプター防除業者の会社名、住所を教えてください。
  2)本事件の無人ヘリコプター散布業者は、貴県の研修会等に出席していましたか。
   出席していたとすれば、その期日と参加者数を教えてください。
  3)防除業者が当該ゴルフ場で散布した農薬の登録番号は何ですか。また、散布に際
   しての希釈倍率、単位面積あたりの散布液量と総散布液量、散布面積を教えてく
   ださい。
   それは、ラベル記載どおりの使用方法でしたか。
  4)無人ヘリコプターは3機が使用されていたとのことですが、機種を教えてくださ
   い。
  5)高所作業者車は使用していましたか。
  6)無人ヘリコプターのオペレーター及び高所作業車オペレータター、合図マンはそ
   れぞれ何名でしたか。
  7)各オペレーターが、農林水産航空協会の資格認定を受けた年月日、高所飛行技術
   の認定を受けた年月日を教えてください。
  8)事故発生確認後、散布は中止されましたか。それとも予定通り実施されましたか。

 【質問8】本事件と「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」に関して以下
  のことを教えてください。
  1)省令第一条 (農薬使用者の責務) の第二項にある人畜に危険を及ぼさないよう
   にするために、当該防除委託者及び当該防除業者は、どのような対策をとりまし
   たか。
   (a)無人ヘリコプター散布に際して、プレイヤーや従業員への周知はどのようにな
    されていましたか。
   (b)無人ヘリコプター散布時の風力測定はなされていましたか。何メートルでした
    か。
   (c)散布地域内やその近辺にプレイヤーなどがいないことを確認していましたか
   (d)飛散低減ノズルは使用していましたか。
   (e)農林水産航空協会の「産業用無人ヘリコプターによる病害虫防除実施者のため
    の手引き」にある、松を対象とした作業についての厳守事項が実施されていま
    したか。
   (f)防除業者はマスク、メガネ、防護衣等をつけていましたか。
   (g)農薬の希釈や積載はどこで行っていましたか。
  2)―略―
  3)省令第六条 (住宅地等における農薬の使用)及びこれに基づく通知「住宅地等に
   おける農薬使用について」に関連して、
   ゴルフ場ホールでのプレイヤーの農薬被曝防止のため、散布委託者である当該ゴ
   ルフ場及び当該防除業者は、「住宅地通知」で指導されている散布の周知をどの
   ようにおこなっていましたか。その内容をお示しください。
  4)省令第九条(帳簿の記載)および通知「住宅地等における農薬使用について」に
   関連して、
    (a)当該防除業者は、農薬使用についての帳簿を記載していますか。
    (b)本年度の当該ゴルフ場での農薬使用について、帳簿記載内容をお示しください。
 9月9日付けで郵送された回答では、習志野CC事故について、『貴県のどの部署が、何時、どこから、どのような情報をお受けになり、どのような対応をされましたか。』との問いに、『ゴルフ場と当事者に対して聞き取り調査を実施したほか、県及び関東農政局千葉農政事務所で、ゴルフ場を含めた使用者に対して現地調査を実施しました。なお調査内容については個別の案件であり、お答えできません。』とあるだけです。前述の他の質問については、軒並み、『個別の案件については、お答えできません。』でした。

★県の指導要綱は、単なる紙切れか
 千葉県は、ゴルフ場での農薬使用による環境汚染が問題となったのを契機に「ゴルフ場における農薬の安全及び適正に関する指導要綱」を策定、1988年11月から施行しています。その第五条に『事業者(注:ゴルフ場経営者を意味する)は、農薬を使用しようとするときは、気象及び地形等の環境条件に十分考慮し、従業員及び利用者並びに周辺住民に被害を及ぼさないように努めるものとする。』とあるにも拘わらず、被害者の相談に答えることなく、私たちの質問に対しても、なしのつぶてです。
 ゴルフ場も防除業者も、プレイ中に無人ヘリコプターで農薬散布したことの自らの非を認めているのですから、本来なら、このような事例の再発防止のためにも、事故の経緯を公表して然るべきなのですが、個別案件に答えられないという、県の姿勢には怒りを覚えます。

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作成:2010-02-27