環境ホルモンにもどる

t22704#化学物質の内分泌かく乱作用に関する今後の対応−EXTEND2010−(案)に対するパブコメ意見#10-07
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【電子版資料集】電子版「脱農薬てんとう資料集」No.2<環境ホルモンSPEED98→ExTEND2005批判>
【参考サイト】環境省:環境ホルモンの頁
           SPEED98検討会ExTEND2005検討会
           環境省ホルモン対策EXTEND2010への意見募集当グループ意見
           意見に対する環境省の見解及び6/29公表の修正案
           EXTEND2010

内分泌かく乱作用=環境ホルモン作用のある化学物質については、98年のSPEED98(「環境ホルモン戦略計画」の略称 )にあった65の物質リストは05年に行われた見直しで廃止され、新たな方針ExTEND2005(「環境ホルモン改訂針路」の略称 )で、5年間が推移しました(本誌162号、163号、電子版資料集第2号参照)。
「作用・影響評価検討会」、「野生生物の生物学的知見検討会」、「基盤的研究企画評価検討会」、「リスクコミュニケ−ション推進検討会」と、これらを総括する「化学物質の内分泌かく乱作用に関する検討会」が設置され、それぞれ、関連研究がすすめられてきました。
 その結果を踏まえて、本年5月に、今後の対応としてあらたな方針案EXTEND2010(「環境ホルモン拡張課題」の略称)が提起され、パブリックコメント意見が募集されました。その結果、20通47意見の提出がありました。
 私たちは農薬にターゲットをしぼり、情報公開のあり方や検討対象物質などに関する5つの意見を出しました。6月29日開催された検討会では、提出意見に対する環境省の見解と、それらを踏まえて、数個所を手直ししたEXTEND2010修正案が示され、7月6日に最終の方針が発表されました。

★さらなる後退かと思ったが
 EXTEND2010案は、内分泌かく乱作用を狭く考え、ExTEND2005にあった『内分泌系・生殖系への影響のみならず、神経系や免疫系への影響も視野に入れ、統合的な生物学の理解の上に立つ基礎的 な知見を収集する。その際には正常な反応から悪影響とされる反応までをどのように測るかといった基礎的な知見も重要である。』との一文が、完全に消えていました。案全文中にも、「神経系」「免疫系」という用語すらみられませんでした。
 このような考えは、明らかに検討内容の後退につながるため、私たちは、前述の文章を復活するよう求めました。類似の意見は他者からも提出され、環境省は、基盤的研究の項に『化学物質の内分泌かく乱作用等の個体(群)レベルでの影響(有害性)の評価に必要な基礎的知見を収集する。この場合、内分泌系・生殖系への影響に加え、脳神経系や免疫系への影響も視野に入れる。』と赤字部分が追加修正されました。
 また、『このほか、発達段階や感受性の高い個体に対する影響の考慮や化学物質の複合ばく露による影響の把握の必要性も指摘されている。』との赤字追加もみられました。
 文言の追加だけでなく、趣旨に則した研究が実施されるよう注視していく必要がありそうです。

★検査対象物質を挙げたが
 私たちは『自然環境だけに眼をむけるのでなく、ヒトが一番影響を受けやすい、生活環境、室内空気、水道原水を汚染している農薬や殺虫剤の詳細な実態調査の必要性を図示し、明記すべきである』との意見を述べ、"検討対象物質の選定"についての項では、毒性や環境汚染が明確になっている物質を挙げ 『以下にあげた農薬・殺虫剤等の成分について、選定対象物質として検討すべきである旨記載するよう』との意見を述べましたが、環境省からは、『御指摘いただいた化学物質も含め、環境実態調査等の情報を整理し、作用・影響評価の検討対象物質の選定を行う予定です。なお、御指摘の物質には過去に試験を行った物質や米国で試験が行われている物質も含まれていますので、これらを踏まえ優先度を考えながら選定を進めたいと考えています。』との見解が示されただけでした。

【検討対象物質に挙げた農薬等】−当グループ【意見4】参照− 

★情報提供とリスクコミュニケーションは旧態依然
 検討会においてさまざまな調査、研究、評価が実施されますが、国民への情報提供はまだまだです。そこで、
『対象化学物質の選定及びその評価については、調査過程の各段階(たとえば、文献による信頼性評価のまとめ、なにを対象物質とするかの決定、対象物質の試験結果についての評価)で、パブリックコメントを実施し、国民の意見を聴くべきである。』との一文を追加するように求めましたが、環境省は『物質選定や各評価等については、専門家による公開の会議で、科学的・客観的に実施しており、その結果についても公表しております』とし、専門家にまかせておけばいいとしか、考えておらず、文献調査の結果をまとめて、国民から意見を聞くことなどは、念頭にないようです。

 情報提供については、『現状を正しく理解するためには、オリジナルな資料に眼を通す必要があり、付属資料に引用された国内外の研究論文や行政資料はインターネットですべて読めるようにすべきであるし、国民に分かり易く解説して、何がわかっていて、何がわかっていないかを明確にすべきである。
 また、いままでの、内分泌系撹乱作用に関する情報は、生殖系への影響に偏っているため、脳・神経系、免疫系、骨形成等への影響を含む多面的な情報、ヒトについては高曝露群の疫学調査の情報を収集し、国 民に・提供すべきである。』
さらに、情報開示については、『国民にとって、大切なのは、化学物質の危険性・毒性を知り、その化学物質がどのようなところで、どの程度使われているか、また、それらの環境汚染状況がどうであるかを知ることである。企業や行政は、対象物質の生産情報とともに、製品情報(どのような化学物質が含有されているか)、毒性情報、環境汚染情報をすべて公開することが原則である。
開示すべき情報は、その化学物質に関してすでに公開されている有害性に関する文献の調査結果と自らが作成した毒性試験成績を含む。
 国民は、それらの情報を知った上で、はじめて、業界や行政と対等のリスクコミュニケーションができる。企業や行政が圧倒的に多くの情報を有している現状のままでのリスクコミュニケーションは、上意下達で、行政と企業の決めたルールを国民に納得させるための場となる恐れが強い。
 一方、公開により、企業がデータの盗用等で、不利益をこうむることを防ぐために、新たな法整備が必要である。』との意見を述べましたが、環境省の見解は、おざなりで、『これまでも、環境省として実施してきた研究結果や検討会での議論については、ホームページ等を通じて公開しています。また、化学物質に関する排出量、毒性情報や環境汚染の実態についても、ホームページや冊子等を用いて情報提供をしているところです。今後とも、より分かりやすい情報提供に努めていきたいと考えています。』とのことでした。  環境省などからの天下り団体「環境情報普及センター」が検討会から請負って、開設しているホームページ「化学物質の内分泌かく乱作用に関する情報提供サイト」を、環境省は、省の公式サイトとは別の中立的なサイトだと自慢気に主張していることには、首を傾げざるを得ません。

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作成:2010-07-27