農薬空中散布・松枯れにもどる
脱農薬ミニノート3号 野放し!無人ヘリコプター農薬
散布
電子版資料集第4号:無人ヘリコプター農薬散布∞現状と問題点
t22902#事故からみた、無人ヘリコプター空中散布の無法性(その2)北海道せたな町の死亡事故は、事故状況も不明のまま#10-09
【関連記事】その1、記事t22802、その3、最終回、記事t23401
【参考サイト】農水省:農林水産航空事業に関する情報(病害虫防除に関する情報にあり)
農林水産航空事業の実施状況の推移
都道府県別の無人ヘリコプターによる散布等実施状況
7月19日に北海道のせたな町で起こった散布関係者の死亡事故について、農水省と北海道、無人ヘリのメーカーヤマハ発動機株式会社、農林水産航空協会に問合せました。前二者からの回答要旨は、以下のようですが、無人ヘリコプターの総元締め役の協会からは、何の回答もありませんでした。ヤマハ発動機(株)は回答拒否に等しい内容の返事を送ってきました。
★せたな町の死亡事故について
【参考サイト】農水省:安全対策の徹底についてにあるH22/07/20通知とH22/08/02通知
北海道の南西にあたるせたな町(旧瀬棚町)は日本海に面しており、奥尻島へのフェリー連絡港のひとつです。この町での無人ヘリ死亡事故については、農水省と北海道からほぼ同じ内容の回答がきました。これらをまとめると下記のようになります。
【散布状況】地元の農家がつくる若松無人ヘリ防除組合が実施主体となり、水稲のいもち病、カメムシ防除のための空中散布が計画されました。使用された農薬は殺菌剤アチーブMC(フェノキサニル10%含有)と殺虫剤ダントツEXフロアブル(クロチアニジン20%含有)で、前者は16倍希釈、後者は36倍希釈で、散布量は、いずれも0.8L/10aでした。
7月19日の散布は朝6時から18時までで、全部で140haの予定でした。無人ヘリコプターはヤマハのRMAX:2機、RMAXTypeU:1機、RMAXTypeUG:1機が使用され、オペレーター、補助員合計17名(全員がオペレーター資格を有する)で実施されていました。
【事故状況と被害】事故は、午前11時前に、北檜山区の水田でおこりました(図省略)。無人ヘリは散布関係者で補助作業をしている人に衝突し、補助員は、間もなく死亡したということです。人の被害以外に、燃料漏れや農薬漏れ、農作物への被害、周辺の農薬汚染は、なかったとのことです。
事故機はRMAX機(自重約60kg、散布装置、燃料、農薬を積載すると約90kgとなる。使用年数8年、飛行時間約380時間)で、オペレーターは09年5月に資格を取得した操縦経験2年目の人でしたが、事故状況は警察の捜査中で、情報が得られていないというのが、北海道からの回答でした。
通常の飛行ならば、オペレーターや補助員は無人ヘリから20m以上は離れることになっていますが、なぜ、補助員に衝突したのかは不明です。無人ヘリが突然、空中から墜落したのか、無人ヘリが低空で補助員に向かって飛んできたかもわかりません。事故時の風速、オペレーターと補助員、無人ヘリ機体の位置関係など、事故原因を解明するのに重要な状況については、道庁の農政担当部署は、8月末になっても、すべて不明といっています。
事故機は7月10日に整備点検が済んでおり、周辺への周知も実施している。農薬取締法や使用者が遵守すべき省令違反になるような点はみられないということですが、原因究明に必要な情報をもっている警察の情報が開示されない限り、適切な再発防止対策を講ずることが出来ないというのは、問題です。
★茨城県笠間市での事故
8月1日の無人ヘリ事故について、茨城県と農水省に問合せたところ、1ヶ月後にようやく、以下のような回答がきました。
【散布状況】笠間市の散布実施主体は、茨城県央南農業共済組合で、散布請負業者は茨城スカイテック株式会社、散布者の所属は埼玉スカイテック株式会社でした(いずれも、ヤマハスカイテックの関連会社)。6月に県植物防疫協会に提出された散布計画では、水稲のいもち病,紋枯病,カメムシ類対策として、7/30〜8/4の間に笠間市内の水田1200haに、ヤマハRMAX1機、RMAXTypeUG 9機、 合計10機でアミスタートレボンSE(エトフェンプロックス10%とアゾキシストロビン8%の混合剤。希釈倍率8倍,散布量0.8L/10a)を散布することになっていました。6日間で、約3.4km四方を超える広範な地域に9.6klの農薬を散布するわけで、地域の農薬汚染が、いかばかりかと案ぜられます。
事故が起こった福原地区は、7月31日に散布予定でしたが、当日は雨のため、8月1日に延期され、4:30〜11:00にかけて、130haの水田に、オペレーター数10名,補助員数10名で、散布することになっていました。
【事故状況】9時20分ごろ、無人ヘリコプターによる散布飛行中にオペレーターが機体を旋回させた際,電柱と電柱の間に張られているワイヤーに機体が接触し,水田に隣接する石材工場の屋根に墜落しました(現場はJR水戸線から直線で約100mの距離)。
事故時の風速は0.4m/secだったとのことです。
事故機はヤマハRMAX TypeUG(使用年数7年,飛行時間856時間)で、オペレーターは、03年に認定を受け,7年の操縦経験がありました。
【被害】燃料約4Lと農薬約8Lが積載されており、墜落により火災が発生,薬剤は工場内に漏れ或いは蒸散したと推定されています。工場の屋根と壁を一部焼損し,工場内の石材を汚損しました。
農作物その他の被害や周辺環境の農薬汚染はなかったとのことです。
【原因】散布地域の事前確認は7月15日に実施されていましたが、区域内での標識の設置は行われていませんでした。
機体や制御機器については、定期点検の実施等で適切に整備されており,問題はなかったということです。
また、散布地域の周辺には、防災無線や回覧で、散布についての周知が図られ、実施主体や農薬使用者には、農薬取締法違反はありませんとの回答がありました。しかし、周知文書の安全対策には、健康への影響が出た場合の症状や対応する医療機関名の記載もありませんでした。
事故機にはオペレーター1名と補助員1名を配置されていましたが,事故発生時,補助員は次の散布予定水田の下見に行っていて不在でした。
県は、事故状況から判断して,架線等の危険箇所の事前確認や補助員の配置,散布経路の設定等に問題があったとの認識を示しています。
また、事故機体,操作員とも,社団法人茨城県植物防疫協会の登録は受けていませんでしたが、操作要員が社団法人農林水産航空協会の発行する技能認定証の交付を受けた者であること及び機体が国の指針に基づいたものであることは確認されているということです。
★メーカーのヤマハは回答拒否に等しい
【参考サイト】ヤマハ発動機:産業用無人ヘリコプター
グリーンジャパンにあるスカイテックの紹介
6月2日の鹿児島県南さつま市、7月19日の北海道せたな町、8月1日の茨城県笠間市で、無人ヘリコプター事故はいずれも、ヤマハ製のRMAX機でおこっています。
そこで、ヤマハ発動機株式会社に以下の問合せをだしました。
***** お尋ねと要望 *****
1、貴社は、(1)南さつま市事故、(2)せたな町事故、(3)笠間市事故について、
それぞれ、いつ、どこからどのような情報をえられましたか。
2、上記3件の事故について、貴社は、それぞれはどのような対応をなさって
いますか。また、それぞれの事故原因をどのように調査されておられますか。
3、調査の結果、事故原因をどのようにお考えになっていますか。
(1)、(2)、(3)それぞれの事例について、教えてください。
4、今回の3件の散布者について
(1)南さつま市の場合、無人ヘリコプターによる空中散布作業を請け負ったのは、
松サービス株式会社でしたが、この会社は貴社の傘下企業ですか、それとも、
西日本スカイテックの請負業者ですか。
(2)せたな町の場合、散布者は、北日本スカイテック社の社員ですか。それとも、
その請負業者ですか。
(3)笠間市の場合、散布者は、茨城スカイテック社の社員ですか。それとも、
その請負業者ですか。
5、RMAXについて
(1)農林水産航空協会の登録機体数は現在、何機ですか。
(2)いままでに報告のあった事故事例(墜落、衝突、行方不明、不時着・落下、
物損や人に被害を与えたケースなど)の発生年月日、場所、使用目的、
事故状況、原因を教えてください。
6、オペレーターの講習や認定等について
(1)RMAXの講習を受け、農林水産航空協会の技能認定証を取得した有資格者は
現在、何名いますか。
(2)講習カリキュラムでは 操縦技術習得のための実地研修時間は何時間ですか。
(3)講習カリキュラムでは (a)農薬の散布上の注意、(b)農薬の毒性、
(c)通知「住宅地等における農薬使用について」、(d)ポジティブリスト制度に
関連する事項などは含まれていますか。
(a)から(d)の項目について、それぞれ何時間ほど研修が実施されていますか。
(4)事故を起こしたオペレーターについて、資格を取り消したり、操縦技術の再教
育を受けさせる制度がありますか。あれば、いままでに取り消し又は再教育
を受けた人数を教えてください。
7、いままでの無人ヘリコプター事故事例の原因は、ほとんどが「オペレーターの
操作ミス」となっています。そこで、以下事項についてお尋ねと要望をします。
(1)技術的に未熟なオペレーターが多いのはどういう理由ですか。
(2)オペレーターミスの原因はなにですか。
(3)貴社をはじめとするメーカーが実施されている研修システムに問題はありま
せんか。
(4)農林水産航空協会のオペレーターの技術認定に問題はありませんか。
(5)無人ヘリは、年間の使用時期や回数が限られています。機体や操作機器の点検
、オペレーターの日常的トレーニングはどのようになっていますか。
(6)墜落に到らないまでも、オペレーターのヒヤリ・ハット事故について調査を
実施して、公表してください。
**** 関連会社のヤマハスカイテック(株)からの回答(8月20日付) ****
拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、8月2日付にていただきました質問状につきまして回答申し上げます。
弊社としましては弊社製品に関わる事案、事故等の事象が発生した場合、その都度
適時適切に対応しております。
また、個々の事案の経緯・内容等につきましては、関係者等に関わることでもあ
りますので回答を差し控えさせていただきます。
弊社と致しましては、今後共産業用無人ヘリコブターの事故減少に向け、真撃に
取り組んでまいる所存でございます。
ヤマハは小型無人ヘリコプターの60%以上のシェアを有する国内第一のメーカーです。その会社が、上述のように、具体的な回答を示さず、事故が起これば適宜適切に対応し、事故減少に真摯に取り組んでいるとだけしか答えてくれません。
まさに、回答拒否としか、いいようがありません。
さらに、定款目的の有人ヘリ事業から逸脱して、無人ヘリ事業を主たる業務としている農林水産航空協会は、個別事故や事故防止対策、オペレーターの技術認定に関する問合せにも、返事がありません。ヤマハ発動機もヤマハスカイテックも、協会を構成する社員であることを思えば、当然のことともいえますが、このような隠蔽体質は、いかんともし難く、もはや、自浄能力ない業界に任せず、法律による無人ヘリコプターの規制が必要な段階にはいっています。
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作成:2011-02-25