室内汚染・シロアリ駆除にもどる

t23204#グリーン購入法の役務提案「木材防蟻・防虫・防腐」も、公共建築物木材利用促進法の基本方針も意見容れられず#10-12
【関連記事】記事t22806
【参考サイト】林野庁:公共建築物木材利用促進法の頁
          「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針案」に対する
          意見・情報の募集について
          当グループ意見林野庁見解及び基本方針(10月4日告示)

 木材の保存処理について、シロアリ防除剤等を出来るだけ使用しないことをめざして、環境省所管のグリーン購入法における特定調達品目・役務として、「木材防蟻・防虫・防腐」を提案し、さらに、5月26日に公布された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」における林野庁提案の同法基本方針案にも意見を述べていましたが、残念ながら、いずれも当グループの意見はそのままの形では、受け入れられませんでした。

★林野庁の「公共建築物木材利用促進法」基本指針は原案通りに
 林野庁の提案した基本方針は、8月14日から9月12日までパブリックコメント意見募集が実施され、84の意見の提出があり、その結果2、3の字句が修正されただけで、10月4日の官報に農林水産省、国土交通省から告示されました。
 私たちの主張とそれに対する回答をみてみましょう。

★木材の利用の促進の意義に、森林病害虫を減らすことははいらないのか
 原案では、森林の効用として
 
 1、国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、公衆の保健、地球温暖化の防止、
  林産物の供給等の多面的な機能を持つこと。
 2、国産材の需要を拡大することは、林業の再生を通じた森林の適正な整備につな
  がり、森林の有する多面的機能の持続的な発揮や山村をはじめとする地域の経済
  の活性化にも資すること。
 3、木材は再生可能な資源であり、エネルギー源として燃やしても大気中の二酸化
  炭素の濃度に影響を与えない「カーボンニュートラル」な特性を有する資材であ
  ること
などを挙げ、『地球温暖化の防止及び循環型社会の形成にも貢献することが期待される。』とされています。
 当グループは、これらに加え、以下の文章を追加することを求めました。
 『森林の適正な手入れにより、松枯れ、ナラ枯れ(カシ類、シイ類、ミズナラやコナラの集団枯死)の拡大防止を目的として散布される農薬の使用量を減らし、その環境汚染や人体への影響を減らせる。また、杉や桧による花粉症の抑制も期待できる。さらに、国産木材の利用拡大は、輸入木材の検疫処理のための臭化メチルなどの薬剤使用量を削減することになる。』 とし、
その理由に、以下の4点をあげました。
 1、松材を建材として利用するために森林の適正な手入れが必要である。病害虫の
  被害を受けた樹木の伐採除去など、木材利用のための適切な森林管理により被害
  の拡大が防げる。
 2、松枯れやナラ枯れ対策として、農薬散布が実施されており、周辺自然環境や
  ヒトの健康に悪影響をあたえることが少なくなる。
 3、杉や桧の間伐や枝払いにより、花粉の発生量が減少する。
 4、植物検疫法に基づき、輸入木材は、地球温暖化ガスの臭化メチルでくん蒸され
  ているが、国産材の利用が増えれば、輸入材への検疫くん蒸の減少につながる。
 しかし、指摘個所は、「意義」の項ではなく、「その他」の項に回され、『本基本方針は、公共建築における木材の利用を促進するためのものであり、松枯れやナラ枯れ、輸入材の検疫処理等に対するに対する薬剤対策を対象としているものではないため、特に明示しておりません。』との考えが示されただけでした。

★シックハウス対策等には化学物質過敏症も含まれれると
 原案の公共建築物の整備の用に供する木材の適切な供給の確保に関する基本的事項には、『建築基準法に基づくシックハウス対策等に係る建築材料に該当する木材を製造する場合にあっては、当該木材の製造に当たり、適切なシックハウス対策を講ずるために必要な施設の整備及び人材の確保等が図られるものであること。』とあります。他者からの『4 V O C ( トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン) についても業界の自主基準等について言及すべき』との意見に対しては、『業界団体等による自主基準等に配慮することも含め、適切な木材製品の供給が図られるものと認識しております。』との見解が示されました。
 私たちは、文中の『シックハウス対策』を『シックハウス症候群や化学物質過敏症対策』とするよう求めましたが、「シックハウス対策等」に「シックハウス症候群や化学物質過敏症対策」も含まれているとの認識も示されました。

★木炭の利用推進を訴えたが
 原案では、木材の製材利用だけでなく、木質バイオマスを燃料とする暖房器具やボイラーの導入に触れた個所があります。
 私たちは、これを一歩進め、方針に『木炭を燃料以外の建築資材や環境改善剤として、積極的に製品開発に努め、その利用拡大を図る。』という一文の追加を提案しました。さらに『木炭化により、被害木中の病害虫は死滅し、被害の拡大を防止できる。また、病害虫駆除に使用される農薬類の使用量を減らし、その環境汚染防止に役立つ。さらに、木炭を森林土壌に還元すれば、樹木の健全な育成にも有効となる。』との利点をあげました。
 これに対しては『本法は、公共建築物等における木材の利用を促進することとしているものであり、本基本方針では木炭について特に明示しておりません。』と一蹴され、その結果、木炭という語句は基本方針にはひとつも出て来ないことになりました。
 ただし、林野庁は木炭を山村地域の重要な収入源として、その利用拡大は重要であると考えており、来年度予算概算要求では、新たな用途の利用促進をめざすそうです。

★木材の薬剤処理については触れず
 もうひとつ留意すべき事項として、木材防蟻・防虫・防腐に関する項を設け、以下の一文の追加を求めました。
 『木材を建築物に利用する場合、シロアリ、木材害虫、木材腐朽菌等により木材の強度の低下が起こることがある。そのため、 シロアリほかの木材害虫や菌・かび類対策として、木材防蟻・防腐・防虫剤(以下シロアリ防除剤という)を使用することが、なかば、常識のようになっている。
 環境保全を目的とした木材の使用増に伴い、有害なシロアリ防除剤の使用が増えれば、薬剤による環境汚染やヒトの健康への影響が拡大し、本末転倒となる恐れがある。
 人の生活環境や自然環境を保全するため、建物敷地(床下の土地)や建築物、木製家具・寝具・木製遊具・木製ガーデニング材等において、シロアリや木材害虫、木材腐朽菌対策用の薬剤を出来るだけ使用しないで、耐蟻性や耐木材害虫性、耐木材腐朽菌性の木材を使用したり、物理的防除手法をとることを第一に考えるべきである。
 さらに、建築物等において、設計段階から、シロアリ等が侵入・繁殖しにくく、また、木部被害を受けやすい個所の点検やその部分修理が容易にできるよう配慮すべきである。』
 これに対する見解は、『設計段階からの配慮については、本基本方針第6 の2 の、「部材の点検・補修・交換が容易な構造 とする等の設計上の工夫により維持管理コストの低減を図ることを含め、その計 画・設計等の段階から、建設コストのみならず維持管理及び解体・廃棄等のコストを含むライフサイクルコストについて十分検討するとともに、利用者のニーズや木材の利用による付加価値等も考慮し、これらを総合的に判断した上で、木材の利用に努めるものとする。」に含まれております。』でした。木材防蟻・防虫・防腐用薬剤については方針では触れられませんでした。

★グリーン購入法の役務[木材防蟻・防虫・防腐]を「害虫防除」で対処できるか
 環境省は、12月3日『グリーン購入法に係る特定調達品目及びその判断の基準等の見直しの概要(案)』を公表し、パブコメ意見募集を1月4日締切で実施中です。
 本年6月、当グループは特定調達品目・役務として、シロアリ防除剤等の使用を出来るだけ行わないことを目指した「木材防蟻・防虫・防腐」を提案していましたが、今回出た環境省案には、新提案は採用されませんでした。
 当グループ案の判断基準は以下のようで、
 1、防蟻・防虫・防腐において使用する物品が特定調達品目に該当する場合は、
  判断の基準を満たしている物品が使用されていること
 2、建築物においては、防蟻剤・防虫剤・防腐剤の乱用を避け、シロアリや木材
  害虫等の生息状況等の調査を重視した総合的な防除措置が講じられていること。
 3、建築物においては、シロアリや木材害虫等の発生侵入を防止するための措置や
  シロアリや木材害虫等、木材腐朽菌の生息・繁殖を防止する措置が講じられて
  いること。
 4、建物敷地や建築物の防蟻・防虫・防腐作業にあたり、事前計画や目標が設定
  されていること。また、防蟻・防虫・防腐作業後に、効果判定(確認調査、
  防蟻・防虫・防腐の有効性評価等)が行われていること。
 5、建築物や木製品等においては、耐蟻・耐木材害虫・耐木材腐朽菌性の高い
  木材が使用されていること。
 6、建築物において、シロアリや木材害虫、木材腐朽菌が繁殖しにくい環境が
  つくられており、これらの繁殖状況を点検しやすく、また、被害個所を修理
  しやすい設計がなされていること。
 7、建築物や木製品等においては、異臭を放出したり、揮発性のある有害な
  化学物質が使用されていないこと。
 8、防蟻剤・防虫剤・防腐剤の使用に当たっては、関連法令が遵守されていること。
の8項目で、私たちは、9月21日、環境省の担当部署総合環境政策局環境省経済課から個別ヒアリングを受け、提案の説明をしました。この時の論議では、私たちの提案にある設計段階からの木材防蟻・防虫・防腐対策は、グリーン購入法ではなじまないが、薬剤処理については、すでにある役務「害虫防除」の項で、害虫等となっているから、「等」の中にシロアリや木材腐朽菌を含めて考えることは出来そうだとの話がでました。
 私たちは、「害虫防除」は、建築物衛生法での衛生害虫の話で、シロアリのような木材害虫を含むならば、判定基準にしっかり、書いてほしいと要望しました。しかし、見直し案では、害虫防除の役務も、従来どおりの文面で、かわりはありませんでした。
 建築基準法や国土交通省の仕様書では、シロアリ防除剤などの使用は義務付けられていないことは、すでに、本誌228号でも紹介しましたが、グリーン購入法に新たな役務「木材防蟻・防虫・防腐」が無理なら、最低でも、役務「害虫防除」にシロアリの文言をいれるようにしてほしいと思います。
 現在の判断基準のままでは、シロアリ防除剤は、薬事法の対象外であり、業界認定の薬剤しかない現況に対応できないので、判断基準の変更・追加を新たに提案する必要があります。

【参考サイト】環境省:環境省の特定調達品目検討会及び平成22年度検討会
      グリーン購入法特定調達品目及びその判断の基準等の見直しの概要(案)に対する意見の募集について(12/03)
      見直し案当グループ意見意見募集結果環境省見解
      2月4日:「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」の変更について
      4月4日:環境物品等の調達の推進を図るための方針の公表について環境物品等の調達の推進を図るための方針
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作成:2011-05-28