農薬の空中散布・松枯れにもどる

t23703#この期におよんでまだ空散とは〜長野県の空散のあり方検討会の中間報告批判 その2 松枯れ空散 ごまかしてでも空中散布したいのが本音か#11-05

 記事t23603で、長野県中間報告で、松枯れ対策の農薬空中散布が効果ありとした2つの事例、茨城県鉾田市と長崎県平戸市生月島に疑問があることに触れましたが、現状がわかってきました。
【関連記事】記事t23704その1その3その4その5その6その7最終回
      農薬空中散布情報:2009年10年11年
      空中散布予定の7市村への要望
【参考サイト】長野県のHPにある農薬の空中散布検討連絡会議の頁
       今後の農薬の空中散布のあり方についてのパブリックコメントの実施について
       松くい虫防除のための農薬の空中散布の今後のあり方検討の中間報告(案)当グループ意見
       第4回有人ヘリ松くい虫防除 検討部会県の見解(5/12)
       パブコメ結果と長野県の見解(5/31)
    農水省:平成23年度 農林水産航空事業 実施計画 県別散布予定面積
    林野庁:平成23年度松くい虫特別防除等の適切な実施について県別散布予定面積・補助金額

★茨城県では、散布継続
 長野県が、空散はこんなに効果があるとして麗々しくカラー写真を載せていた地域は、1980年当時、茨城県旭村となっていました。林野庁に現在どうなっているか調査してもらったところ、鉾田市玉田の「とちぎ海浜自然の家」(以下、自然の家)になっているとのことでした。
 ここは、海のない栃木県の子どもたちに海を見ながら学習できるようにと、栃木県が1992年に開設したということです。
 写真を見ると、海岸に松林があり、そこに隣接して施設が建っています。こういうところに農薬を空散したら、直接、飛散するような場所です。
 茨城県に問い合わせると、海岸地区の松林には、毎年6月に空中散布をしており、自然の家からも要望が出ているとのことでした。「こういう場所で空散すべきではない」というと「防除実施基準には200m離せとは書いてない。朝早く実施するので防止措置はとっている。林野庁に聞いたら問題ないと言われた」と驚くべき回答でした。
 散布農薬はスミパインMCで、出雲市で児童生徒を中心に1200人以上の健康被害をだした農薬です。子どものための施設に直接飛散するような場所で空散するのは許せません。  自然の家から空散の要望が出ているのかと聞くと「口頭で毎年でている」との回答。防除実施基準の留意事項には「文書等で」とわざわざ断っています。「文書等」とあるから、口頭でもいいのだと茨城県は言いいますが、たとえば、静岡県では要望文書を公表したことがあります。
 茨城県は長年、松枯れ空散を続けていますが、このような基本的なこともしていないのでは、他の地区での空散もずさんに実施されている可能性があります。
 農水省植物防疫課が公表した今年の茨城県の松枯れ空散の予定は、大洗町、鉾田市、東海村、那珂市、北茨木市、筑西市の6市町村の194ヘクタールとなっています。
 反農薬東京グループは、この6市町村に空散中止の要望と質問を出しました。

★栃木県も加害者だった
【関連記事】記事t23804
【参考サイト】とちぎ海浜自然の家
     栃木県教育委員会:当グループの要望と栃木県からの回答
 いっぽう、栃木県の自然の家に問い合わせると、茨城県が実施しているのでそちらに聞いてほしいとのことでした。
 しつこく質問を繰り返した結果、栃木県は、自然の家の施設だけでなく、海岸松林を含む敷地全体の土地を所有しており、茨城県と同日に、松林に空散しているということが、わかりました。
 自然の家の担当部局は県教育委員会です。子供のための施設に教育委員会が空散していることに唖然としました。私たちの抗議で県は今年度は空散をやめ、地上散布するとのことですが、地上散布も危険です。

★生月島は09年から散布中止
【参考サイト】長崎県農林記述開発センター:スミパインMCの1回空中散布による松くい虫予防効果
 長崎県の事例は、私たちの調べで、平戸市生月島での調査結果であることが判明し、地元の養蜂家久志冨士夫さんに現地調査を頼みました(その結果は、長野県へのパブコメ意見として、ミツバチたすけ隊のHP久志さんの意見がアップされています)。

 長崎県の研究報告で、おかしいのは、松林の状況が異なる2地区で被害率を比較していることです。散布区(火口山=ひくちやま)と対照区(無散布の山頭=やまがしら)は3 km以上離れ、散布区は海岸に近く、無散布区は島のなかほどの高原という地理的地形的相違に加え、両区の調査対象樹木本数が散布区約1500本、無散布区約300本と著しく異なっていることです。松枯れ発生は、同一松林においても場所的偏りがあることは既に明らかになっていることであり、このような著しく調査対象樹木数などの異なる区域についてのデータで松枯れ率を比較することは科学的ではありません。
 長崎県や生月島役場に尋ねたところ、島では、09年から空中散布を中止しているということでした。久志さんの現地聞き取りでは、散布をやめたのは「効果がなかったからだと聞いている」という答えが返ってきたそうです。
 私たちは、不適切な二つの事例を長野県の最終報告から除くことを求めました。

 上の2事例は、長野県の最終案(8月11日)では削除されました。

★空散出来ない場所を出来るとした長野県の欺瞞
 この節について、長野県は、訂正を求めて来ましたが(特に、青字個所は、誤解である。表では、県の防除実施基準の内容を述べただけだと主張)、検討の結果、当グループは、訂正に応じない旨の回答を行いました(その経緯および回答をご覧ください)。

 長野県は松枯れ空散に関する中間報告で、国や県が定めている空中散布実施基準をまとめて、表にしていますが、その中で、「実施できる森林の指定」として挙げている9項目のうち、国の防除実施基準で、無条件で空散できない場所となっている以下の個所を空散できる場所に組み入れていました。
@国内希少野生動植物種や天然記念物の等の貴重な野生動植物の生息地又は生育地
A野生動植物保護地区又は鳥獣特別保護区のうち自然環境の保全に支障を及ぼす恐れのある地区
B病院,学校,水源等の周辺
 また、住宅、宿泊所、公園、レクリェーション施設などの周辺松林での空散は原則禁止ですが、地域住民から要望があり、飛散防止、交通規制、立入規制などの措置が十分とられることを条件に実施可能となります。しかし、県のまとめた表では、住民の要望という条件が抜けおちています
 さらに、農畜水産業への被害防止については、 関係団体等と協議し、十分な被害防止対策を実施しなければ、空中散布はできませんが、ここでも、団体等と協議するとの条件の記載がありません。
 これらの禁止又は原則禁止を、「実施できる森林の指定」と表記することに、はじめから農薬空中散布ありきという県検討部会の意図が明確にでています。
 長野県のごまかしてでも、空中散布をしようとする態度は許せないので、表題の「空中散布の実施基準及び実施できる森林の指定」を「原則散布禁止となっている森林についての例外規定」となおし、表の記述を絶対禁止地区と原則禁止地区にわけ、後者については実施が許される条件を明記するよう求めました。
最終案では、下のように、変更されました
       
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作成:2011-09-26