空中散布・松枯れ<にもどる
t23704#松枯れ空散の具体的規制:国の防除実施基準と解説#11-05
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【参考サイト】農水省:森林病害虫等防除法の一部を改正する法律の施行について
林野庁:森林病害虫等防除法第7条の2第1項の規定に基づく防除実施基準の運用に関する留意事項
並びに都道府県防除実施基準の策定について
松枯れ対策として全国的に松へ農薬の空中散布が行われるようになったのは、1977年に「松くい虫防除特別措置法」が成立してからです。この法律はほとんど強制的に、松林へ農薬空中散布をするために作られました。当時、林野庁は多くの反対運動を無視し、ねつ造されたデータを元に、5年間の時限立法としたのです。「5年で松枯れをなくす」と豪語して。
しかし、松枯れは増える一方で、5年後、林野庁は「松くい虫被害対策特別措置法」と名前を変え、さらに5年間延長しました。それでも松枯れはなくならず、それから2回、法律は延長されました。もちろん、私たちも黙っていたわけではありません。全国のネットワークを結成し反対してきました。1997年、今度こそ廃止させると反対派の総力を挙げてこの法律の廃止のために闘いました。
いろいろありましたが、結局、特別措置法は「森林病害虫等防除法」に吸収され、松枯れ空散は継続されることになりました。
しかし、反対運動の主張する規制は、ある程度取り入れられ、その集大成として「防除実施基準」が決められました。これは、森林病害虫等防除法第7条の2「農林水産大臣は、薬剤による防除が自然環境及び生活環境の保全に適切な考慮を払いつつ安全かつ適正に行われることを確保するため、森林病害虫等の薬剤による防除の実施に関する基準(防除実施基準)を定めなければならない」に基づいて、農水大臣が定めたものです。
防除実施基準は、改定森林病害虫等防除法が公布された後、1997年4月7日に公表され、その後、条文中の法律の改定があったため、2003年にその部分の字句が改定されています。また、より詳しい解説として「防除実施基準の運用に関する留意事項」(以下、留意事項)という文書も同時に公表されています。
松枯れ空散を実施する国、県、市町村はこれを遵守しなければなりません。なお、林野庁は松枯れ空散のことを「特別防除」と呼んでいますが、ここでは空中散布とします。また、紙数の関係で防除実施基準の1「特別防除を行うことのできる森林に関する基準」の部分のみを掲載します。
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森林病害虫等防除法第7条の2第1項の規定に基づく防除実施基準
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森林病害虫等防除法(昭和25年法律第53号)第7条の2第1項の規定に基づき同項の防除実施基準
を次のとおり定めたので,同条第5項の規定に基づき公表する。
平成9年4月7日(平成15年9月26日最終改定)
農林水産大臣
森林病害虫等防除法第7条の2第1項の規定に基づく防除実施基準
1 特別防除を行うことのできる森林に関する基準
特別防除は,次に掲げる森林以外の森林のうち特別防除の実施が特に必要と認められ
るものであり,かつ,その実施につき地域住民等関係者の理解が得られる見込みがある
ものについて行うことができるものとする。
ア 次に掲げる地区等に存する森林
(ア)国内希少野生動植物種(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律
(平成4年法律第75号)第4条第3項に規定する国内希少野生動植物種をいう。以下同じ。)
又は天然記念物(文化財保護法(昭和25年法律第214号)第69条第1項の規定
により指定された天然記念物をいう。以下同じ。)等の貴重な野生動植物の生息
地又は生育地
(イ)自然環境保全法(昭和47年法律第85号)第26条第1項又は第46条第1項の規定に
より指定された野生動植物保護地区
(ウ)自然公園法(昭和32年法律第161号)第14条第1項の規定により指定された特別保護地区
又は鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(平成14年法律第88号)
第29条第1項の規定により指定された特別保護地区であって、特別防除の実施に
より当該特別保護地区の自然環境の保全に支障を及ぼすおそれがあると認めら
れるもの
(エ)病院,学校,水源等の周辺
【解説】(ア)から(エ)の森林では空散はできない。(エ)は、病院、学校、水源地
等の周辺の森林であって、そのものに空散するのはもってのほか。ただし、周辺がどの
くらいかははっきりしないが、林野庁は国会で200mを目安にしていると答弁している。
(参議院行政監視委員会 第7号 平成17年6月13日)
イ 次に掲げる家屋等の周辺の森林(ただし、地域住民から要望があり、かつ、当該
家屋等の居住者又は管理者の意向を十分確認でき、2に掲げる事項に即して適切な
防止措置を講ずることができるものを除く。)
(ア)住宅、宿泊所その他の家屋
(イ)公園、レクリエーション施設その他の利用者が集合する場所
【解説】(ア)、(イ)の周辺の森林は原則として禁止だが、例外として、
@地域住民から要望があり、A当該家屋等の居住者又は管理者の意向を十分確認でき、
B適切な防止措置を講ずることができるという3つの条件が満たされれば、空散して
もいいという例外規定を示している。
ウ 次に掲げる施設等の周辺の森林その他その所在地等からみて薬剤の飛散・流入に
より周囲の環境に悪影響を及ぼすおそれがある森林(ただし、地域住民から要望が
あり、かつ、2に掲げる事項に即して適切な防止措置を講ずることができるものを
除く。)
(ア)水道、井戸その他の給水施設
(イ)鉄道、道路その他の交通施設
【解説】 イと同様だが、居住者、管理者の意向は条件に入っていない。水道などの給
水施設を利用する人の意向も条件に入っていない。
エ 次に掲げる栽培地等の周辺の森林その他周囲の土地及び水面の利用状況等からみ
て薬剤の飛散・流入により農業・漁業その他の事業に影響を及ぼすおそれのある森
林(ただし、地域住民から要望があり、かつ、3に掲げる事項に即して適切な防止
措置を講ずることができるものを除く。)
(ア)葉たばこ栽培地、桑園、茶園その他の農作物の栽培地
(イ)採草地、放牧地、畜舎等
(ウ)養蜂群又は蚕児に悪影響が及ぶおそれのある場所
(エ)水産動物の増養殖場、漁場、も場又は保護水面(水産資源保護法(昭和26年
法律第313号)第14条の保護水面をいう。以下同じ。)
【解説】留意事項では、『防除実施基準の1のイ、ウ及びエにおいて、「地域住民から
要望があり」とは、地域住民から都道府県又は市町村に対し文書等をもって要望があっ
た場合をいうものとする。また、防除実施基準の1のイ、ウ及びエのただし書きにより
特別防除を実施する場合は、地域住民からの要望及び適切な防止措置の内容について、
4の(1)の連絡協議会等において明示するものとする。』となっている。
文書での要望が必要であり、その内容は連絡協議会で明示されることが原則になる。
関連通知「森林病害虫等防除に係る連絡協議会等の設置要領例について」では、「連
絡協議会設置要領例」や「地区連絡協議会設置要領例」で、協議会の構成員例が挙げら
れている。農薬被害を受ける恐れのある養蜂・養蚕業者や環境の保全に関する地域の有
識者その他地域の実情に応じ必要な者のほか、森林病害虫等の防除に関心を有する団体
等の代表(空散に反対する団体を意味する)もメンバーになれる。
以下、2 特別防除を行う森林の周囲の自然環境及び生活環境の保全に関する事項
3 特別防除により農業、漁業その他の事業に被害を及ぼさないようにするため
に必要な措置に関する事項、
4 その他森林病害虫等の薬剤による防除に関する基本的な事項
と続きます。
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作成:2011-05-28