農薬空中散布・松枯れにもどる

t24201#この期におよんでまだ空散とは〜長野県の空散のあり方検討会の中間報告批判 その7 無人ヘリで空散しても環境保全型農業??#11-10
【関連記事】その1その2その3その4その5その6記事t24202最終回記事t243012011年の農薬空中散布情報
【参考サイト】長野県:農薬の空中散布検討連絡会議の頁
           農作物に対する無人ヘリコプターを利用した農薬空中散布の今後のあり方(案)
           当グループ意見パブコメ結果と長野県の見解
           当グループの要望と長野県の回答(2011年前半)
           今後のあり方(2011年5月公表)
      林野庁:質問と回答

 長野県における無人ヘリコプターによる水田等での農薬空中散布予定面積が、昨年度より増え、しかも、ネオニコチノイド系ジノテフランの使用が2.2倍となったため、県に質問と要望を行っていました(記事t24103参照)。県農政部から回答がきましたので、その要旨を紹介します。

★無人ヘリ空散について調査もしないという県の姿勢
【参考情報】当グループの質問と長野県回答8月5日9月16日
 1、無人ヘリ散布と健康被害防止
 (1-1)無人ヘリ指導要領改正の進捗状況はどうなっているか。
   [回答] 想定される事例等を検討しながら指導要領の内容の改正について検討を進
    めております。なお指導要領は、次年度に向け実施主体に対し十分な説明をした
    上で改正、公表する予定です。

 (1-2)散布地域と住宅地等との緩衝地帯幅について、県として、地域ごとに示すべきで
   はないか。
   [回答] 緩衝地帯幅は、地域の立地条件や風向等を勘案し、実施主体が周辺住民に
    配慮し決めるべきものであると考えます。県としては、実施主体が設定した緩衝
    地帯幅を遵守し散布するよう指導してまいります。
   [コメント] 県は、実施主体におまかせと言いながら、30mとしている実施主体が
    いくつあるかも教えてくれません、

 (1-3)空中散布についての相談窓口は?
   [回答]本年の実施主体は49であり、実施主体ごとに相談窓口は設置されています。

 (1-4)インターネットによる散布情報等の公開
   [回答] 実施の必要性については地域内(実施主体)で検討した上で行うべきであ
    ると考えております。また、インターネットのホームページで周知をしている事
       例は把握しておりません。
     [コメント] 散布地域内だけに周知すれば、いいのでしょうか。他地域から出入り
       する人には情報は伝わりません。

 (1-5)散布を通知すべき範囲は、どの程度か。散布地域からの距離で示されたい。
   [回答] 散布する地域の周辺住民をはじめ、市町村の広報等で住民等へ広く周知さ
       れております。
   [コメント] 散布地域の隣接市町村の住む人はどうなるのか、わかりません。

 (1-6)農薬に対して感受性の高い人への対応は?
   [回答] 農薬への感受性の高い方が、散布地域周辺にいらっしゃる場合は、実施主体
    と個別に相談いただき適切に対処すべき事項であると考えております。
     [コメント]もっと具体的な方針を示さないと実施主体は対応出来ないと思うのですが。

 (1-7)無人ヘリコプター散布する、ジノテフラン、エトフェンプロックス、フサライド
      含有農薬の健康への影響は?
   [回答] 御質問の成分を含む農薬に関しては、健康異常との明確な因果関係や健康
    への影響に関する公的データがなく検討は行っておりません。
  [コメント]エトフェンプロックスは○頁に記したように発がん性があります。

 2、環境保全型農業と無人ヘリ農薬空散
 (2-1)農薬散布による生態系への影響について、慣行農業と環境保全型農業を比較した
      データがあるか。なければ、貴県で調査されたい。
   [回答] そのような調査データはございません。また調査を実施する予定もござい
       ません。

 (2-2)環境保全型農業では、無人ヘリコプターの使用について、何らかの規制があるか
   [回答] 本県では、農業生産活動の中で、化学肥料・化学合成農薬の使用量をでき
    る限り減らすことを進めており、無人ヘリコプター等防除手法についての規制を
       設けてはおりません。

 (2-3)無人ヘリ散布面積が昨年より増加しているが、どう考えるか。
   [回答](2-2)でお答えしているとおり、環境保全型農業を進める上で、無人ヘリ防除
       に対し規制をしているものではないので、散布面積の増加は問題ないものと考
       えております。
   [コメント]環境保全型農業では、化学肥料・化学合成農薬の使用低減が眼目になっ
       ていますが、有機肥料を投入すれば、従来と同じ農薬を使ってもよい。また、農
       薬の使用回数を慣行栽培より減らせば、使う農薬の毒性や散布方法を問わないと
       いうことでしょうか。

 3、ジノテフラン製剤スタークルについて
  貴県での無人ヘリコプター空中散布農薬の散布状況をみると、ネオニコチノイド系ジ
  ノテフランを含有する製剤(商品名スタークル液剤10等)の使用が多く見られる。
  当該農薬メーカーは、同成分の吸入毒性試験や飛散・気中濃度調査を実施しているが、
  データの詳細は明らかなっていない。

 (3-1)ジノテフランについて、吸入毒性試験データを把握しているか。
   [回答] 公表されているデータは把握しております。

 (3-2)ジノテフランの無人ヘリコプターによる飛散・大気調査などについて、メーカー
       のデータを把握しているか。
   [回答] 把握はしておりません。

 (3-3)上記データを把握していないならば、メーカーからデータを取り寄せ、その内容
       を評価し、結果を公表されたい。
   [回答] 農薬メーカーのデータの評価は、農薬登録制度を所管する官庁が行う事項
       であると考えます。本県は、登録農薬を適正に使用するよう指導しております。

 (3-4)貴県が、独自に、無人ヘリコプター空中散布によるジノテフランの大気調査、水
    質調査、土壌調査を実施し、公表されたい。
   [回答] 農薬に関する調査等は、農薬登録制度を所管する国及び農薬登録を申請す
    るメーカーが主体で行うべきものであると考えます。したがって、調査等を実施
    する予定はございません。

 (3-5)スタークル液剤10は、ミツバチや蚕への毒性があり、使用上注意を要するが、
    貴県における養蜂および養蚕地域と空中散布実施地域を示す地図をお示しの上、
    両者の連携がどのようになっているか教えてほしい。
      また、貴県において、いままで、同剤使用によるミツバチや蚕の被害があるか。
  [回答] 同剤の使用に関しては、実施主体が事前に周辺地域の状況を調査し、実施主
   体と養蜂業者で連絡をとって散布するよう指導しております。なお、本剤によるみ
   つばち・蚕への被害の報告は受けておりません。
  [コメント]無人ヘリ散布の一番多いネオニコチノイド系のジノテフランについて、
   データの所在を知りながら情報の入手努力もせず、長野県環境保全研究所を持ちな
      がら、農薬環境調査もしないとの回答には、驚きあきれます。
     群馬県は有機リンの無人ヘリ散布自粛を求めるにあたり、県の衛生研究所で神経細
      胞を使った実験をしていました。
★松枯れ対策案のその後〜県議会での質疑
【参考サイト】なかがわ ひろじ県議のブログにある 9/27日の質問内容
       長野県議会平成23年9月定例会会議中継より中川博司議員の質疑(27分30秒ごろより)

 長野県では、当初の目論みに反して、農薬の空中散布検討連絡会議に出された「松枯れ空中散布のあり方案」が継続審議となっています(本誌240号)。その後について、9月の県議会で質疑がありました。
 27日開催の本会議での中川博司議員の質問に対する答弁の要旨は、次のようでした。
 林務部長は、空中散布のあり方案については現在、細部の詰めをしている/周辺地域に化学物質過敏症など感受性の高い人いる場合、健康への影響リスクを可能な限り低減するため、実施主体である周辺市町村が、周辺住民のみなさんとのリスクコミュニケーションを強化して、影響のリスクの可能性を把握した上で、空中散布の実施の可否の判断をを適切に行う/空中散布を実施の判断をした場合、出来る限り農薬の飛散が少ない方法など安全性に配慮した方法をとる/きめ細やかな住民への対応体制をつくることなど、を挙げ、県としては、防除実施基準の改正等により必要な支援をするとし、すでに、関係する12市町村と意見交換をしたことを明らかにしました。
 また、知事からは、 空中散布ついては、周辺住民の健康とりわけ、化学物質過敏な皆さんの健康との調和をどうはかるかは極めて重い問題である/市町村のみなさまの意見を十分聞かねばならない/適切な防除対策で松林を守ることを基本に据え、周辺の住民の健康にどう配慮すべきか、どういうことが可能かを考えていきたいとの、発言がありました。
 いずれも、具体性に欠くものだったため、市町村へのヒアリング等について、あらため て、県に問い合わせました。

★県からの回答
【参考情報】長野県:「松枯れ対策の今後について」への質問と回答(10月3日)
      長野県および12市町村:松枯れ対策のあり方についての質問・要望(10月14日)
 1 聴取なさった市町村名と当該市町村を選んだ理由を教えてください。
  [回答]9月5日から14日かけて、以下の12市町村
   被害が拡大している市町村:安曇野市、
   松本市空中薬剤散布中止市町村:上田市、坂城町
   空中薬剤散布実施市町村 :千曲市、駒ヶ根市、豊丘村、筑北村、生坂村、
                大町市、麻績村
   スポット散布実施市町村::飯田市

 2 それぞれの市町村で、どのようなところから、どのような事項について聴取され、
   その結果はどうであったか、内容を教えてください。
  [回答]県から「松くい虫防除のための農薬の空中散布の今後のあり方(案)」の考え方
   及び内容を説明させていただき、それぞれの市町村から様々な御意見をいただいた
   ところです。
   あくまで意見交換ということで、全ての御意見等を公表するという約束で実施して
   おりませんので、個別詳細な御意見全てを公表することはできないことを、御了解
   お願いします。
   多くの市町村から共通していただいたご意見としては、
   @ 地域住民の皆さんの意向を反映できるようにしてほしい
   A 地域の実情を熟知する市町村長が必要な取組等を判断できるようにして欲しい
   B 化学物質過敏症など感受性の高い人等がおられた場合への対応に特化すべきな
     どがありました。

 3 市町村から得た情報をもとに、最終的な「今後のあり方」の提示および「県防除実
  施基準」の改正が実施されるとのことですが、これらが決定されるまでの今後のタイ
  ムスケジュールをお示しください。
  [回答]今後のタイムスケジュールにつきましては、「有人ヘリ松くい虫防除検討部
   会」の委員の皆さんからの意見聴取を含めた検討を進め、その進捗状況等を踏まえ
   てスケジュールを決定していくこととしており、現時点でスケジュールをお示しす
   ることはできませんが、農薬の空中散布検討会議の開催を含めて、年内には「松く
   い虫防除のための農薬の空中散布の今後のあり方」を決定してまいりたいと考えて
   おります。

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作成:2012-02-26