空中散布・松枯れにもどる

t24301#松枯れ空散に関して林野庁に改めて質問(その1)〜都道府県防除実施基準を改定させるべき#11-11
【関連記事】記事t23805記事t240012011年松枯れ空中散布情報
【参考サイト】農水省:農林水産航空事業に関する情報(病害虫防除に関する情報にあり)
       井筒屋化学産業エコワン3フロアブル

 当グループは、長野県等への松枯れ空散に対して、さまざまな質問や要望をしてきましたが、9月5日に、林野庁に改めて質問と要望をしました(記事t24106参照)。その内容は、@国有林での有人ヘリコプター空中散布、Aエコワン3フロアブル、B国の防除実施基準と都道府県の防除実施基準、C空中散布実施地域と住宅地との距離等、D空中散布の気象条件について、の五点でした。
 回答は10月14日に届きました。今号では、@BCの質問と回答の要点を紹介します。

1、国有林の空散は何故増えたのか〜エコワン3の2回散布のため
 国有林の空散は、2011年度は3623haで、2010年度の2599haより増加していました。そもそも林野庁は「将来的に空散をやめる」と何度も表明しておきながら、自分が管轄する国有林で空散を増やすのはおかしいではないかと、その原因を聞きました。
 回答は、散布農薬をスミパインMC(有機リン剤MEP)からエコワン3フロアブル(ネオニコチノイド剤チアクロプリド)に替えたからだというものでした。つまり、スミパインMCは一度の散布ですむが、エコワン3は二回散布しなければならないので、延べ面積が増えたということでした。
 では、なぜ、エコワン3にしたのかという質問には「薬剤の散布にあたっては、毎年度、地元への説明も行いながら、散布箇所ごとに決定しています」と、回答とも言えない答えでした。

3,国の防除実施基準と都道府県の防除実施基準について
 森林病害虫等防除法に基づく防除実施基準の第1項「特別防除を行うことのできる森林に関する基準」では、原則散布禁止地区が挙げられており、一部、例外的に散布が認められることになっています(記事t23704参照)。
 長野県や愛知県、香川県などの防除実施基準では、国が原則散布してはならないとしている個所について、何の記述もされていないのは問題があると考え、この件に関する以下の質問と要望をだしました。
【質問3-1】都道府県の防除実施基準において、国の防除実施基準の1項のように、空中
  散布原則禁止地域を記載しているのは、どこか。
【質問3-3】国の防除実施基準に沿って、原則実施しない地域を都道府県の防除実施基準
  に記載するよう指導してほしい。
【両質問への回答】森林病害虫等防除法では、
 @国は防除実施基準において、「特別防除を行うことができる森林に関する基準」を
  定め(第7条の2第2項)、
 A都道府県は都道府県防除実施基準において、国が定める「特別防除を行うことがで
  きる森林に関する基準」に適合する森林に関する事項を定める(第7条の3第2項)、
  こととしています。
  なお、Aにつきましては、地域森林計画対象森林は林小班名、その他の森林は大字、
  字名で区域を表示することを基本としています。このため、ご指摘のような「空中散
  布原則禁止地域」を記載することを求めているものではありません。
  なお、北海道防除実施基準には、野ねずみの駆除を目的とした特別防除について、ご
  指摘のような記載があると承知しています。
【コメント】国の防除実施基準の特別防除(空散)ができる森林の決め方は、まず、空散
  ができない森林をはっきり定め、それ以外の森林のうち、特に空散が必要であり、か
  つ、住民等関係者の理解が得られる森林となっている。空散をしてはならない森林と
  して、病院、学校、水源等の周辺、希少野生動植物種などの生育地ほかが挙げられて
  いる。これが原則空散禁止森林である。空散できるのは「これ以外のところ」と指定
  しているのに、都道府県の防除実施基準で「これ」が不明ではどうしようもない。改
  めさせるべきである。

【質問3-4】国の防除実施基準の2、3 、4 項にある周辺自然及び生活環境の保全や農漁業
  らへの被害防止のための条件は努力規定となっているが、義務規定としてほしい。こ
  れに伴い、都道府県の防除実施基準にある努力規定を義務規定に変更するよう指導し
  てほしい。
【回答】ご指摘のような義務規定への変更は考えておりませんが、都道府県や市町村に対
  して、防除実施基準の内容が、より一層徹底されるように努めていく考えです。

【質問3-5】都道府県の防除実施基準がホームページなどで公表されていないところがあ
  る。必ず、誰にでもわかる形で公表するよう指導していただきたい。また、基準や県
  報などで告示される実施地域については、林班名の記載以外に、一般の人にもわかる
  地名および地図を添付するよう都道府県を指導していただきたい。
【回答】森林病害虫等防除法第7条の3第4項にて、都道府県知事は、都道府県防除実施基
  準を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、公表することとなっており、都道
  府県において適切に公表されているものと理解しております。なお、都道府県に対し
  て、わかりやすい形での公表に、より一層努めていくよう依頼していく考えです。
【コメント】林野庁がどのように「理解」しようとも、県の防除実施基準は公表されてい
  ないところが多いのは事実だ。せめて、これくらいは直ちに公表させるべきではない
  か。また、林班名には地域の通称名を併記させればすむ。
4、空中散布実施地域と住宅地との距離等について  国の防除実施基準には、『病院、学校、水源、家屋、給水施設等に薬剤が飛散・流入しないよう風向、風速等に十分注意し、これらの施設等から十分な間隔を保持する等適切な措置を講ずるものとする。』とあり、具体的距離は明示されていない。この点について質問と要望をします。

【質問4-1】2005年、当時の前田林野庁長官が「200mを目安とする」と国会で答弁してい
  るが、根拠となる論文、調査報告を示してほしい。また、この目安は、散布する製剤
  の種類や希釈濃度により、変わることはないのか。
【質問4-2】200m以上という数値は国の防除実施基準には書かれていないが、県の防除基
  準には、この数値を記載しているところがある。200mもしくは一定の数値を、防除実
  施基準に挙げている都道府県名を教えてほしい。また、貴庁は、先の長官の国会答弁
  がその根拠になっていることについて、どのように考えているか。
【両質問への回答】国の防除実施基準により、特別防除を実施できる区域は、「病院、学
  校、水源等の周辺」以外の森林とし、「薬剤が飛散・流入しない風向、風速等に十分
  注意し、これらの施設等から十分な間隔を保持する等適切な措置を講ずる」こととし
  ているところです。
  この「十分な間隔」については、落下調査紙で確認できるドリフト距離等から、目安
  としては200m程度と考えていますが、一律に定めることは困難であり、現場で実施
  する場合には、地域の立地条件等を勘案して個々に検討する必要があると考えていま
  す。
  また、都道府県防除実施基準において、200mもしくは一定の数値を記載しているのは
  静岡県がありますが、これについては静岡県が地域の実情等を勘案して設定したもの
  であると考えています。

【質問4-3】一般にミラコートによる飛散調査は、対象作物等に農薬がきちんと散布され
  ているかどうかを調べる簡便方法で、環境汚染調査には不適切と思うが、貴庁の考え
  は?
【回答】薬剤散布に当たって薬剤の落下状況を調査するために使用されているミラコート
  紙は、液状薬剤を空中散布した場合に「薬剤の落下の程度と散布の均一性」を手早く
  知るためのものであって、落下薬剤の絶対量を測定するものではないとされています。
  このように、ミラコート紙は、薬剤の飛散量を把握するためのものではありませんが、
  散布予定区域以外への飛散状況を把握する等、安全面での補助的な手段として活用す
  ることができると考えられます。また、特別防除の実施に当たっては、できる限り大
  気の気中濃度調査を含め、自然環境等影響調査を実施するよう都道府県に依頼してい
  るところであり、今後もその推進に努めていく考えです。
【コメント】ミラコート紙では、正確な飛散調査にならないと言っておきながら、前項の
  回答で200mの根拠としている。林野庁には有人、無人ヘリ散布による飛散調査結果
  があるのではないか。いつまでもミラコートなどと言っておらず、早く、科学的に定
  めるべきである。

【質問4-4】無人ヘリコプターによる空中散布についての緩衝地帯幅について、長野県は
  一部で実施されている水田での低空散布の場合と同じ30mとしているが、貴庁は、こ
  の距離についてどう考えているか。
【質問4-5】(4-5)科学的根拠がないまま、緩衝地帯幅を、有人ヘリコプター空中散布で
  200m、無人ヘリコプター空中散布で30mを見直すよう、検討願いたい。
【両質問への回答】ご指摘の緩衝地帯幅については、一律に定めることは困難であり、現
  場で実施する場合には、地域の立地条件等を勘案して個々に検討する必要があると考
  えています。
  なお、長野県の「松くい虫防除のための農薬の空中散布の今後のあり方(案)」にお
  いては、無人ヘリコプター散布は、人家等から「30m以上の距離をとって行う」もの
  とされています。長野県に考え方を確認したところ、一律30mの距離をとっていれば
  良いというものではなく、現場での防除の実施に当たっては、地域の立地条件等を十
  分勘案して行うとのことでした。
【コメント】なぜ、一律に定めることは困難なのか。どういう条件があると仮定している
  のか。また、緩衝地帯は最低200m以上という決め方もできるのではないか。

【質問4-7】上記の長野県の松枯れ空中散布のあり方(案)では、ひとの健康への影響防
  止のため、『化学物質への感受性が高い体質の人などの健康への影響の可能性に、特
  に配慮が必要な場合で、かつ予防措置をとることが困難な場合には、空中散布を実施
  しない判断も必要である。 』としていますが、貴庁はいかがお考えか。
【回答】国の防除実施基準においては、特別防除の実施に当たっては、地域住民等関係者
  の理解と協力を得るよう努めることとしています。また、松くい虫被害対策は、薬剤
  の予防散布、樹幹注入、伐倒駆除等の的確な防除と、樹種転換、抵抗性マツの植栽、
  林床整備等の森林の健全化の取組を地域の実情に応じて適切に選択して推進すること
  としています。松くい虫被害対策として特別防除を選択するかどうかは、これらを踏
  まえて、地域で判断するものと考えています。
【コメント】出雲市の再検討会での吉田副会長の発言のように(記事t24202参照)、
  空中散布だけでは、松枯れは防げないというのが最近の林野庁の見解ではないか。
  その事実を県に伝えるべきである。実施市町村は、空散しかできない場所に空散をし
  ていると言っている。全く、理解されていない。空中散布への補助金は廃止すべきである。

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作成:2011-11-25