空中散布・松枯れにもどる
t24401#出雲市、松枯れ空散はしないと再検討会議で決定#11-12
【関連記事】記事t23508、記事t23905 記事t24202
【参考サイト】倉塚さんのHPとブログ
出雲市:健康被害原因調査委員会 議事録、健康被害原因調査委員会報告(08年9月)、
松くい虫防除検討会議報告(08年12月)
松枯れ対策再検討会議の頁:第五回会議議事録(10/20)、第六回会議議事録(11/25)
2012/02/10の答申書:表紙 本文 付属資料
2008年に松枯れ対策のスミパインMCの空散で児童を中心に1200人以上の健康被害を出した島根県出雲市では、農薬との因果関係は否定できないとの認識の下、以後の空散は中止されましたが、昨年、松枯れ被害が増大したため、市は本年6月に、松枯れ対策再検討会議を設置し、来年度からの対策の検討をしてきました(本誌242号)。
11月25日に開かれた第6回再検討会議で基本方針がとりまとめられ、32地区中8地区は防除地区から外し、残りの地区の松枯れ対策は、空散以外の樹幹注入と伐倒駆除、抵抗性マツの植栽を柱とする内容になりました。
本誌242号でも紹介しましたが、専門家として参加し、再検討会議の副会長として意見を述べた元森林総合研究所九州支局長の吉田成章さんは、空散だけでは松枯れは防げないと何度も主張していました。マツノザイセンチュウ-マツノマダラカミキリ原因説をとり、空散を推進してきた人の意見であり、無視はできなかったと思います。
検討会議のメンバーで、空散の危険性を主張しつづけてこられた倉塚香織さんのブログから、再検討会議を終えての思いを以下に抜粋紹介します。
★空散反対の倉塚さんのブログより
【結論】松枯れ対策は、農薬空中散布以外の方法で実施する、との結論が出た。
A委員(大社町町内会長連合会代表)は、前回に続き、今回の案で出ている1部の低い松への地上散布について、この方法を広げて無人ヘリなどの散布はどうか、農薬そのものがすべて危ないという発想は、おかしい、森林の場合、こまかい法令の元、実施する、万ヶ丸山、天台ヶ峰など航空防除ができないのか?何度考えても航空防除を排除するのはなぜかわからない、と述べられた。
【空散への専門家の見解】
それに対して吉田副委員長は、「健康調査委員会の見解が変わらない限り、空散はできない、また第1回松枯れ検討委員会では地上散布すら賛成されなかった。」
同じく、専門家として参加している黒田委員(神戸大学農学部教授)も同じように「健康被害の可能性がある、の見解は医学の専門家が出されたもので私たちがそれを覆すことはできない」と述べられた。
【すべて公開でやってきた】
対策を決める会議は、密室で開かれていたわけではない。松枯れ対策の協議会はもちろん、その後の健康調査委員会も、検討委員会もいつでも開かれた会議だった。開催日の周知はもちろん、傍聴もできたし、健康調査委員会の後の会議はすべて、議事録も公開されている。
おそらく、出雲市役所で開かれているどの会議よりもオープンだったと思う。
決定過程で異議申し立てをする機会は幾度もあったが、この間、委員長宛にそういう申し立てがあったとも聞いていない。
副委員長の吉田さんは最後に、いずれは枯れるかもしれない松にこれほどの税金をかけてもいいですか?と問われた。
【出雲市で農薬空散が中止になった理由】
出雲市で農薬空中散布が中止になった理由は、市民ひとりひとりの力によるものだった、と振り返って思う。
農薬は、安全、飛散はしないというメーカーの宣伝をうのみにして国をはじめ各県でこの事業を、ほぼ国策として続ける中で、出雲市内での空散後「なんか目がゴロゴロしておかしい」「うちの子は山登りの後、普段より喘息がひどくなって、入院した」「市外に出たらだいじょうぶだけど家に帰ると目の奥が痛くなる」「学校まで車で送り迎えしても子どもの体調が悪くなる」「保育園の子どもたちが外遊びの後具合が悪くなり病院に連れて行った」そのほか「鳥が死んでる」「池の魚が死んだ」など勇気を出して市役所に伝える人々がいた。その中には子どももいた。
ときには、診断書をもって県庁を訪れたこともある。2008年までは、役所にはほとんど取り合ってもらえなかったが、自分たちの症状や周りの様子をあきらめることなく訴え続けた。
そうした訴えを聞きながらも、飛散しないはずだし、また、農薬の検出はNDになっているのに、少しはなれたところにも健康被害を訴える人がいることがなぜかわからなかった。ただ、話を聞けば、その健康被害が空散によるものであることは,すぐにわかった。
そして2008年、子どもを中心とした1200人以上の市民が健康被害を訴えた。学校では、すぐに市への通報が行われ、子どもたちは病院に。市役所が地元だけに実施したアンケートで健康被害を訴えた人々も364人。
これらの積み重なったひとりひとりの声が、「中止」という結果をもたらした。
健康被害にあっていた市民の方々の声を振り返ってみると、とても的確だった。こうした声を丁寧に聞いていれば、もっと早く、松枯れ対策をどうすればいいのか、考えることにつながっていたのではないかと思う。
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作成:2011-12-29