農薬空中散布・松枯れにもどる

t24403#松枯れ空散に関して林野庁に改めて質問(その2)エコワン3フロアブルについては試験成績の要旨も示さない#11-12

【関連記事】記事t23805記事t24301 2011年松枯れ空中散布情報
【参考サイト】農水省:農林水産航空事業に関する情報(病害虫防除に関する情報にあり)
       井筒屋化学産業エコワン3フロアブル

    林野庁への質問と要望(11/09/05)

 今号は、記事t24301につづき、国有林をはじめ、各地で空中散布面積が増えている(2)エコワン3フロアブル(ネオニコチノイド系チアクロプリドを含有)及び(5)気象条件規制についての林野庁回答を記します。

★チアクロプリドの毒性は評価中
【質問2-1】活性成分であるチアクロプリドについて、農薬評価書や農薬抄録等に記載の
  ある毒性試験成績データ。大気汚染を想定した吸気毒性試験結果は?
 [回答] チアクロプリドは、食品安全委員会において評価中なので農薬評価書等は公表
  されていないが、評価が終われば公表。
  登録時の一部のデータが農薬ハンドブック(日本植物防疫協会発行)に公表されている。
 ・急性経口毒性(LD50):ラット444 mg/kg 体重(♀), 836 mg/kg 体重(♂)
 ・急性経皮毒性(LD50):ラット>2000 mg/kg 体重(♂, ♀)
 ・急性吸入毒性(LD50):ラット1223 mg/m3 (♀), >2535 mg/m3 (♂)
 ・眼刺激性:ウサギ刺激性なし
 ・皮膚刺激性:ウサギ刺激性なし
 ・皮膚感作性:モルモット感作性なし
  また、チアクロプリドは、2006 年にFAO/WHO 合同残留農薬専門家会議 (JMPR))にお
  いて評価が実施されている。

【質問2-2、2-3】チアクロプリドのマツノマダラカミキリに対する致死量又はLD50値。空
  中散布による、松林フィールドでのマツノマダラカミキリの駆除率。
 [回答] マツノマダラカミキリは、エコワン3フロアブル等の適用害虫であり、各製剤
  の農薬登録に当たって適用害虫に対する薬効試験を提出させ、その薬効を確認してい
  ますが、LD50値や駆除率は求めておりません。
 [コメント]林野庁は、以前は空散農薬を定めていましたが、最近は松枯れに適用のある
  ものを使うようにと責任回避しています。従って、エコワン3フロアブルを使えとい
  っているわけではないから、空散の標的であるマツノマダラカミキリのLD50(半数
  致死量)や、フィールドでの駆除率については知りませんと言っているわけです。L
  D50くらいは実験ですぐわかるものなのに、それすら、求めていない。薬効を確認し
  ているというが、データを示せないようでは、その評価を検証しようがない。

【質問2-4】空中散布した際の、ミツバチや蚕,標的外の昆虫類、野鳥、両生類ほかの生物
  への影響調査結果。
 [回答]農薬登録申請に当たって、エコワン3フロアブルを空中散布した際の生物影響調
  査結果は求めておりません。但し、農薬登録申請に当たって求めているチアクロブリ
  ド(有効成分)を標的外の昆虫に投与した試験結果の一部は、農薬ハンドブックに公
  表されており、以下のとおりです。
   ミツバチ(LD50):17.32 μg/頭(経口投与), 38.83 μg/頭(接触投与)
   天敵(LD50):ナミテントウ2.60 μg/頭, キクヅチコモリグモ27.8 μg/頭
   鳥類(LD50):コリンウズラ>2716 mg/kg, ニホンウズラ49 mg/kg
   魚類(LC50):コイ>100 mg/l (96 時間), ニジマス30.5 mg/l (96 時間),
          ブルーギル25.2 mg/l (96 時間)
          オオミジンコ(EC50):>85.1 mg/l (48 時間)
          緑藻(ErC50):97 mg/l (72 時間)
  また、蚕については、桑に散布した場合にその桑を食べた蚕が影響を受けない散布後
  の日数を安全基準日数として示されており、それは60日以上となっています。
 [コメント] 製剤ごとに試験成績の提出が必要なのに、活性成分の試験データしかない
  のか。林野庁が補助金を出して推奨している登録農薬なのに、こうしたデータを示せ
  ないとは驚きである。

【質問2-7】松の生育に影響を与える菌根菌やマツタケの生育に対する影響調査結果
 [回答]ご照会の事項に関し、承知している調査結果等はありません。

【質問2-8】空中散布による人の健康への影響についての報告
 [回答]エコワン3フロアブルについて、人の健康へ影響があったとの報告は承知していません。

【質問2-9】チアクロプリドの人体毒性と解毒剤
 [回答] チアクロプリドの人体への影響については、(2-1)への回答で示した動物実験
  の結果をもとに、眼刺激性、皮膚刺激性、皮膚感作性の有無、及び急性毒性の強さを
  判断しています。
   また、食品を通じた経口摂取による人体への影響については、2006 年のFAO/WHO 
  合同残留農薬専門家会議において、ADI(毎日一生食べ続けても健康に悪影響が出な
  い量)及びARfD(一日にここまで食べても健康に悪影響が出ない量)が、以下のとお
  り評価されています。
   ADI:0 - 0.01 mg/kg 体重  ARfD:0.03 mg/kg 体重
  チアクロプリドの中毒症例報告がなく、解毒剤については情報がありません。一般的
  に、医師の手当を受け、問診及び中毒症状の観察により胃洗浄等による治療を行うこ
  とが必要と考えています。
★再質問への回答〜試験は企業に所有権
 上述のような回答では、とても納得できないので再質問しました。
【再質問1】、マツノマダラカミキリに対する急性毒性試験内容とその結果
 [回答]10月14日付け林野庁回答における通りで、マツノマダラカミキリに対する急性
   毒性試験はありません。
[コメント]エコワン3フロアブルによるマツノマダラカミキリ駆除効果を示す試験がな
   いとは信じられません。
  ミツバチやテントウ、クモ類に対するLD50は公表されているのに、肝心のマツノマ
 ダラカミキリの致死量についてデータがなくて、なぜ、登録されるのか。

【再質問2】松に対する薬効試験に関しては、有人・無人ヘリを用いた試験の実施時期、
    試験場所、松の生育状況、松の被害状況、農薬散布試験方法、農薬散布以外の伐倒処
    理ほか実施の有無、試験結果、考察等がわかる報告書や関連資料
【再質問3】万一、資料をお示し願えない場合は、その理由および試験成績要旨を教えてください。
 [上記2と3への回答]試験結果等につきましては、当該企業に所有権があり、その公表
    について、当方で関与できないことをご理解頂ければ幸いです。
 [コメント]無人ヘリコプター空中散布に適用するというのに、試験効果を示すデータ
   もその要旨も明らかにできないとは。だいいち、1回散布でなく、2回散布せねばなら
   ない理由もわからない。
★空中散布の気象条件について
【質問5-1】水田の空中散布と樹高10mを超え、山地に生える松林での空中散布とで、風速
  測定の高さを同じにするのは問題であると考える。風速測定の高さを地上1.5mでの測
  定としているのは何故か。
 [回答]風速は、当該散布地域の気象の状況を示す指標として、統一的に測定するために、
  一定の高さで測定しているものです。なお、定められた風速の範囲内にあっても、風
  向き等に十分注意し、散布区域外への薬剤の飛散防止に努めることとしています。

【質問5-2】液状少量散布等の場合での、風速規制を3m/秒、液状散布の場合を5m/秒とし
  た場合、散布高度および粒径と飛散距離の関係はどうなるか。
 [回答]散布高度及び粒径と飛散距離の関係につきましては、現場における気象条件、立
  地条件等により異なるものと考えています。なお、特別防除の実施に当たって行って
  きた平成15年度以降の大気の気中濃度調査では、散布区域外において、航空防除農薬
  による人の健康への影響を評価する際の目安として設定された「気中濃度評価値」(M
  EP:10μg/m3)を超える薬剤濃度は検出されていません。

【質問5-4】風向について、通知には、『散布区域外に薬剤が漂流飛散しないよう努め
  る』とあるだけだ。風速が義務規定であるのに対し、風向が努力規定なのはなぜか。
  仮に1m/秒の風速でも5分間で300m飛散し、風下に住宅地等があれば、確実に汚染する。
  風向規制を厳格にすべきと思うが、貴庁の考えは?
 [回答]特別防除の実施に当たっては、基準以下の風速で実施するものとし、風速が基準
  以下であっても、風向に注意し、散布区域外に薬剤が漂流飛散することのないよう指
  導しており、今後も一層の指導の徹底を図ってまいります。

【質問5-5】単位面積あたりの農薬散布量が同じであっても、同一地域で、一時の散布面
  積が大きい=すなはち、散布総量が大きいと、気流によっては、散布区域外でも局所
  的に気中濃度が高くなる恐れがある。そのため、散布総量規制が必要と思うが、貴庁
  の考えは?
 [回答]特別防除の実施に当たって行ってきた平成15年度以降の大気の気中濃度調査では、
  散布区域外において、航空防除農薬による人の健康への影響を評価する際の目安とし
  て設定された「気中濃度評価値」(MEP:10μg/m3)を超える薬剤濃度は検出されて
  いません。また、現在の特別防除の実施区域面積は、昭和50年代半ばの1/10以下まで
  縮小しているところであり、ご指摘の散布総量規制が必要な状況にあるとは考えてい
  ません。
 [コメント]一箇所当たりの散布面積が多ければ、揮発する農薬の量が多くなるのは当然
  考えられることであるが、林野庁は、日本全体の空散面積が減っているので、そう考
  える必要はないと答えている。わざと、論点をはずして回答しているのか。
  また、大気からの摂取量をADIの10分の1以下にするという原則を無視した環境省
  評価値に固執している点も問題である。

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作成:2012-03-26