松枯れ・空中散布にもどる
t24601#農水省がようやく無人ヘリ事故を調査、HPで公表〜11年度は物損事故のみ43件 原因はほとんど操作員のミスと・・・#12-02
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電子版「脱農薬てんとう資料集」No.4<無人ヘリコプター農薬散布∞現状と問題点>
脱農薬ミニノート3号野放し!無人ヘリコプター農薬散布
【参考サイト】農水省:農林水産航空事業に関する情報(病害虫防除に関する情報にあり)
平成23年度の無人ヘリコプターによる空中散布等に伴う事故情報の報告状況及び
平成24年度以降に向けた安全対策の徹底について
農薬インデックス:無人ヘリコプター用農薬の頁
登録農薬、関連法令・通知、機種別仕様、安全対策(マニュアルやリーフレットあり)
当グループは無人ヘリコプターによる農薬散布に反対し、さまざまな活動をしてきました。特に、2010年には重大事故の頻発を受け、都道府県にアンケート調査等を行い、その結果を持って農水省など関係省庁に改善を要望してきました。(脱農薬ミニノート3 「野放し!無人ヘリコプター農薬散布」参照)
私たちの調査で07年〜10年の4年間に97件の無人ヘリ事故がありましたが、農水省は13件の事故しか把握していませんでした。何が事故かすらもはっきりしておらず、当然、都道府県の調査もバラバラです。たとえば、無人ヘリの不時着は、事故と認識するのかしないのか、軽微な機体損傷なら事故としないのか、実に曖昧でした。
そこで、11年1月14日に「無人ヘリコプターによる農薬空中散布に関する農薬取締法関連法令の改定と新法制定の要望」農水省と環境省の関係部署に提出しました(記事t23301、記事t23401)。
★農水省の事故調査依頼
この要望を受けて農水省は11年1月28日付けの植物防疫課長名の「無人ヘリコプターによる空中散布等に伴う事故情報の報告依頼について」という文書で、都道府県に事故情報の報告を依頼しました。この通知には、細かな報告様式例示されていますが、『個人情報や特定の地域の情報等については、関係法令に基づき慎重を期して取り扱うものとし、提出された個票をそのまま公表することはしないこととする。』との記載があります。こんな文言をつけないと、正確な情報が挙がってこないというのでしょうか。
そのため、農水省の発表では、事故発生の場もわからず、事故の詳しい内容もわかりません。何が事故かという定義も相変わらず、不明です。
★11年度は物損事故が43件のみ
初めての農水省の調査を早く公表するようにという私たちの要望に対して、暮れも押し迫った11年12月28日、農水省はようやく11年度の事故をホームページで公表しました。
それによると、2011年度は全国で43件の無人ヘリの事故が報告されています。比較的重大な事故のみでこれだけあるわけで、無人ヘリコプター機体数は約2350機ですから、事故率は1.8%と、ずいぶん多いと思われます。幸い、人身事故(通知では、軽微なものは除くとなっている)も農薬事故(ドリフトや農薬流出)もなく、すべて物損事故ということです。軽微な怪我や物損、農薬漏洩は統計に入っていないと思われます。また、1件を除いてすべての事故で機体が損傷していますが、修理ですんだのか、廃棄せざるを得なかったのか、損傷の程度はわかりません。
★水田散布が37件、架線事故が38件
表に、 農水省が報告した事故の一覧をまとめました。
事故は、初夏にかけては小麦畑で4件、その後、6月末から9月はじめまでに、水田で37件、9月には大豆畑で2件発生しました。
43件の物損事故の内容は電線や電話線などに接触する架線事故が38件で、全体の88%を占めています。次ぎに多いのは、電柱や樹木等への接触事故5件(12%)でした。その結果、機体損傷は当然ですが、電線切断で停電、電話の不通などが起こっています。
表 無人ヘリコプター事故一覧(2011年、農水省資料より作表)
月日 作物 事故概要 被害状況* 事故原因
4/28 小麦 電話線に接触し墜落 電話線切断 C
5/10 小麦 電話線に接触し墜落 電話線切断(不通:1戸) @
5/10 小麦 電線に接触し宙吊り 電線切断(停電:1戸) BD
6/9 小麦 電線に接触し墜落 電線切断(停電:320戸) BC
6/27 水稲 電柱に接触し墜落 電柱損傷なし AC
7/13 水稲 電線に接触 切断された電線が民家の窓ガラスを損傷 AC
7/24 水稲 電線に接触し墜落 電線切断(停電:40戸) @ABC
7/25 水稲 防風ネット支柱接触,墜落 民家の外壁タイル/ガラス/網戸破損 AB
7/26 水稲 電線に接触し墜落 電線損傷切断なし C
7/26 水稲 共同アンテナ線接触,宙吊り 架線切断 @A
7/28 水稲 電線に接触し墜落 電線損傷切断なし @A
7/28 水稲 電話引込線に接触し墜落 引込線損傷(不通1戸) ABD
7/30 水稲 電話線に接触し墜落 電話線切断 BC
7/31 水稲 電話引込線に接触し墜落 電話引込線切断 @A
8/2 水稲 電線に接触し墜落 電線切断(停電なし) ABC
8/2 水稲 電話線に接触し墜落 電話線切断(不通:1戸) @BC
8/3 水稲 操作ミスで墜落の際、
建物壁面等に接触 建物壁面等損傷 BC
8/4 水稲 電話線に接触し墜落 電話引込線切断(不通:1戸) BC
8/4 水稲 防災無線に接触し墜落 架線切断 @A
8/8 水稲 電線に接触し墜落 電線損傷(切断なし) @A
8/8 水稲 電話引込線に接触 電話引込線切断、機体損傷なし @AC
8/8 水稲 電線に接触し墜落 電線損傷(切断なし) AC
8/9 水稲 電柱最上部アース線接触 架線切断なし @A
8/9 水稲 電話引込線に接触し墜落 電話引込線切断 @A
8/9 水稲 電線に接触し墜落 電線切断なし @BC
8/10 水稲 電線に接触し墜落 電線切断(停電:106戸) @AC
8/10 水稲 散布ほ場隣接住宅敷地の
庭木の枝に接触し墜落 庭木の枝を切断 ABC
8/12 水稲 電線に接触し墜落 電線切断(停電:約160戸) @BD
8/12 水稲 町内放送ケーブルに接触墜落 架線切断 @
8/13 水稲 電線に接触し墜落 電線損傷(切断、停電なし) AD
8/14 水稲 電線に接触し墜落 電線切断(停電なし) ABC
8/17 水稲 ほ場内竹支柱に接触、
有線放送等の電線に接触墜落 架線切断 @
8/19 水稲 電柱に接触し墜落 電柱損傷なし @D
8/20 水稲 電話線に接触し墜落 電話線切断(不通:1戸) @A
8/20 水稲 電話線に接触し墜落 電話線切断(不通:5戸) D
8/20 水稲 電話線に接触し墜落 電話線切断機損 ABC
8/20 水稲 架線(避雷線)に接触し墜落 架線切断 ABC
8/26 水稲 電線に接触し墜落 電線切断(停電:1戸) @AC
8/28 水稲 電柱支線に接触し墜落 架線切断なし @
8/31 水稲 電話線に接触し墜落 電話線損傷 ABC
9/1 水稲 電柱引っ張線接触、墜落 架線切断なし @A
9/2 大豆 電話線に接触、墜落 電話線切断 ABC
9/19 大豆 避雷線に接触、宙吊り 架線切断 ABD
* 事故例43件中42件に機体損傷があった。被害状況の項には、機体破損なしの場合のみ記載した。
* 事故原因の番号の内容は次節
★原因は操作員の不注意など
事故原因として分析されたものは、ほとんどが操作員のミスか不注意になっています。
表には、事故原因をまる番号で記しましたが、その内容は以下のようです(1件の事故に対し、複数の原因があるものを含む)。
@事前の確認不足による危険箇所の見落し:21件
A操作要員と補助員との連携不足:27
B操作要員の操作ミス、目測誤り:19
C飛行の高度、方向等が不適切:22
Dその他(散布実施の判断が適切であったか等):7
★事故防止の指導内容
事故原因が、操作員達のせいにされていますから、その対策は、当然、操作員が気をつけなければならないことになります。都道府県へ示した対策の主なものは
@散布地やその周辺の事前確認の強化、徹底。実施主体は危険箇所等を具体的に書き込んだ地図を作成し、実施前に散布実施者に配布する、ことがあげられていますが、今まで地図なしに散布していたのでしょうか。
Aとして、操作要員と補助員の連携強化があります。連携不足で27件も事故が起こっているというわけですから、当然ですが、連携しなければできない仕事なのに、今頃、こんなことを注意するのでいいのかと疑問に思います。
事故原因に機体の不備はなかったのでしょうか。2008年8月、山形県JA庄内たがわでは、散布中に制御不能となり、日本海に消えた無人ヘリがありましたが、この原因もまだ明らかにされていません。
★無人ヘリ散布規制の法律を
しかし、2010年までの事故の報告すらなかった頃に比べれば、一歩前進と言えます。これをもっと進めて、以下のような条項を含む法律の制定を、一層強く目指す必要があります。
1、無人ヘリ飛行禁止地帯の設定
2、国によるオペレーターの研修・訓練、資格・免許制度
3、機体整備の厳格化
4.事故報告の義務化と原因調査機関の設置
5、事故責任の追及と罰則
6、農薬散布計画・実績の報告義務化
7、地域住民が参加した地区協議会の設置
8、散布地周辺への周知徹底
9、現地混用の禁止
10、住宅地通知の遵守
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作成:2012-06-26