街の農薬汚染にもどる

t24903#有機リン剤DDVP、すべて農薬登録失効〜衛生害虫駆除用などで、しぶとく生き残らせてはならない#12-05
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★登録失効理由は販売予定がないためと
 記事t24503号で、有機リン剤DDVP(ジクロルボス) が、長野県松本市の公共施設などで、アメリカシロヒトリ対策に使用されていたことを問題にしましたが、このときは、DDVP含有の登録農薬は2製剤でした。1957年4月の初登録から製造販売されてきた製剤は204あり、1962年以降の成分出荷量の総計は2万2426トンになります。
1987-89年には、年間730トン前後の出荷量がありましたが、最近では急激に減少しており、2010年6製剤、11年20製剤が登録失効していました。今年になって、国際衛生社登録のくん蒸剤パナプレートが3月9日に、日本曹達が登録した日曹ホスビット乳剤が4月27日に登録失効したのを最後に、すべて姿を消すことになりました。DDVPは、劇物指定があり、ヒトの中毒をも惹き起こします。2000年、北海道の静内町特別養護老人ホームで、ゴキブリ駆除のための薬剤処理により、45名の入所者と職員が健康被害を訴えるという事件がおこりましたが、この時、DDVPくん煙剤として防除業者が使用したのは、ビニルハウス用の登録農薬でした(記事t10504記事t10604参照)。
 私たちは、有害なDDVP剤の使用をやめるように求めてきましたが、今年、登録失効した2剤の失効理由は、くん蒸剤が『原体の供給中止のため』、乳剤が『今後の販売予定がないため』となっています。有害な農薬を、このような形で、こっそり消していくことは許せません。農水省は、毒性を明確にし、失効農薬の使用をやめるようきちんと指導すべきです。

★有機リン農薬は減少しているが
 ところで、DDVPの農薬製造はなくなっても、有機リン系農薬の製造・販売・使用はまだ続いています。表1に、最近5年間の農薬種類別の出荷量の推移を示します。
 有機リン剤32成分の出荷総量は、減少の傾向をたどっているものの。2010年には、2743トンあり、成分別では、フェトロチオン(MEP、スミチオン)が最も多く565トン、ついで、アセフェート387トン、ダイアジノン347トン、DEP177トン、DMTP172トンと続きます。
 他の種類では、カーバメート系13成分は合計426トン(10年)で減少傾向に、ネオニコチノイド系7成分は合計407トン、ピレスロイド系15成分は合計195トン、IGR(昆虫成長阻害剤)系12成分は合計112、その他としてフィプロニル44トンなどは、いずれも、頭打ち傾向にあります。
 これらの農薬は、昆虫だけでなく、水生生物やヒトへの影響も懸念される薬剤だけにその使用の削減が求められます。
 
表1 主な農薬の種類別出荷量の推移(単位トン。出典:国立環境研究所農薬DB)
年度    有機リン カーバメート  ネオニコチ     ピレス         IGR   その他
         32成分   13成分      ノイド 7成分   ロイド15成分    12成分  フィプロニル 
2006   4136      551       364          241        142     40
2007   3958      537         404           237        138     40
2008   3720      498         420             219            144      41
2009   3291      466         409             201            125      42
2010   2743      426         407             195            112      44
★薬事法承認薬剤はそのまま
【参考サイト】アース製薬バポナ
       国際衛生株式会社第1類医薬品用パナプレート文化財用パナプレートベーパーセクトS&with(NAC社のwith)
       東京文化財研究所保存科学 No47 p209(2008年)
       財団法人文化財虫害研究所認定薬剤
       環境省のPRTRインフォメーション広場集計結果の頁にある届出外推計資料

 私たちは、昨年、衛生害虫駆除にDDVPプレート剤の使用やめるよう求めましたが、厚労省は適正使用を指導するというのみでした(記事t24406記事t24704参照)。従って、農薬登録はなくなっても、DDVPの使用はやみません。
 表2−省略−にPRTR(化管法)による対象化学物質別の排出量推計結果から、家庭用殺虫剤の年間排出量を成分別に示します。ピレスロイド、有機リン、カーバメートなど農薬と同じ成分が、家庭用や防疫用殺虫剤、不快害虫用殺虫剤やシロアリ防除剤として、身の回りで使用されていることがわかります。なお、使用されていても、化管法の対象物質に指定されていないもの、たとえば、ネオニコチノイド系の物質については統計すらありません。
 2010年のDDVP剤の家庭用や防疫用殺虫剤としての使用は、農薬出荷がなくなったとのうらはらに、23トンを超えています。このほか、文化財用の認定薬剤としても、同剤が生き続けていることも忘れてなりません。
  主なる重要文化財のDDVP燻蒸実施例(出典:国際衛生のHP)
   ●芝増上寺重文三解説門の燻蒸
   ●中尊寺金色堂の密閉燻蒸
   ●京都南禅寺収蔵庫二棟燻蒸
   ●島根県安来市清水寺重文阿弥陀如来像の燻蒸
   ●各地博物館収蔵庫燻蒸(埼玉県・和歌山県等)
   ●その他福井・岐阜・兵庫・埼玉教育委員会の重文の燻蒸
   ●竹林寺(高知県)
   ●雪渓寺(高知県)
   ●豊楽寺(高知県)
 2012年5月31日、厚労省が、DDVPプレート剤(DDVP21.39g以下含有)の劇薬指定解除。
   通知:ジクロルボス(DDVP)蒸散剤の留意点について

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作成:2012-05-26、更新:2013-10-08