街の農薬汚染にもどる

t25501#無農薬植栽管理施設リスト中間報告〜無農薬管理は可能だ〜これらの施設から学ぼう#12-11

 今年8月から読者の皆さまにお願いして無農薬で植栽管理をしている施設を調べていただきました。西日本関係からの報告がほとんどないので、偏っていますが、現時点でのリストということで、発表させていただきます。
 なお、記事t25302に掲載しましたが、環境省は「公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル」遵守の優良事例を調査しています。このマニュアルは無農薬管理のためのマニュアルではありませんので、私たちが調査した植栽無農薬管理施設は全国で初めてのものでしょう。これをもっと充実させて、たとえば化学物質過敏症患者が逃げこめるような施設のリストにできたらいいなと思っています。
 今回は反農薬東京グループに報告いただいた内容のうち、施設名と簡単な住所だけをまとめてあります。これ以外に「あそこの施設は無農薬管理なんだけど」という場所がありましたら、以前にお配りしたアンケート用紙に沿って記入してお送り下さい。用紙は、事務局にご連絡いただければ、お送りいたします。
 なお、反農薬東京グループは、東京都の区市町村と鉄道会社に別にアンケート調査をしています。都下区市町村については、記事t25502をご覧下さい。

★無農薬管理三つの分類
 今のところの感想ですが、少しまとめてみますと、無農薬植栽管理は、大きく三つに分かれると思います。
 一つ目は、神社仏閣など広大な面積を持ち、生態系がしっかりしているため、昔から農薬は使用してこなかった場所がそのまま続いているところ。
 二つ目は、近年まで農薬を使用してきたが、最近になって無農薬管理に変わったところ。これは、主に、市町村などが管理する公園、街路樹、学校などの施設が多くあげられています。
 この場合、市町村に働きかける人がおり、効果的に運動をしているところは、大きな成果を上げています。たとえば、名古屋市、岐阜市などがその例でしょう。
 西東京市の事例で言うと、無農薬管理のためにものすごく苦労しているということはありませんでした。無農薬が当たり前となっているようです。
 市町村が農薬散布のマニュアルや指針を作成しているところも多くありますが、いくら立派な指針があっても、やる気のないところでは、まさに、絵に描いたもちです。指針のあるところでは、是非、遵守するよう働きかけてください。
 三つ目として考えられるのは、それほど大面積ではないけれども、所有者の信念で農薬を使用していないところ。幼稚園、神社などがあります。

 以下に、無農薬施設のリストをあげますが、追加や間違いがありましたら、ご連絡下さい。
★植栽の無農薬管理施設リスト
 <宮城県>                          <岐阜県>
  加茂5丁目公園(仙台市)	                              岐阜県立美術館(岐阜市)
 <栃木県>                                                  岐阜県立図書館(岐阜市)
  NPO法人民間稲作研究所農業技術センター周辺山林(河内郡)    岐阜市立女子短期大学(岐阜市)
  上三川霊園公園(河内郡)                                  岐阜ファミリーパーク(岐阜市)
 <千葉県>                                                  齋苑(岐阜市)
  佐倉市内の公共施設(佐倉市)                              リフレ芥見(岐阜市)
  街路樹(通称文学の道)(市川市)                          岐阜公園(岐阜市)
 <東京都>                                                  加納公園(岐阜市)
  国道15号街路樹(品川区)                                  市営野球場八ツ草公園(岐阜市)
  東洋大学白山キャンパス(文京区)                          河川敷:鵜飼緑地(岐阜市)
  新宿区立下落合東公園(新宿区)                            河川敷:せせらぎ広場(岐阜市)
  しながわ区民公園(品川区)                                県営各務原公園(各務原市)
  高輪幼稚園(港区)                                        テクノプラザ科学技術振興センター(各務原市)
  宗教法人高輪神社(港区)                                  岐阜県先端科学技術体験センターサイエンスワールド(瑞浪市)
  港区高輪地区公園(港区)                                  国民宿舎恵那山荘(恵那市)
  西東京市内の公園、街路樹、学校(西東京市)                ソフトピアジャパンセンター(大垣市)
 <埼玉県>                                                 <京都府>
  臨済宗妙心寺派平林寺(新座市)                            法然院森のセンター(京都市)
  志木市内の公園、街路樹、学校(志木市)                   嵐山東公園(京都市)
  <愛知県>                                                   嵐山公園(京都市)         
   名古屋市東区*内の街路樹、都市公園**                       <奈良県>
   名古屋市西区*内の街路樹、都市公園**                        奈良公園(奈良市)
   名古屋市南区*内の街路樹、都市公園	                       奈良県道街路樹(奈良県)
   名古屋市緑区*内の街路樹、都市公園
   名古屋市守山区*内の街路樹、都市公園**            
   * 直轄で無農薬管理の区土木事務所は他にもあるが、 
    上記は少なくとも平成21年度から3年以上無農薬。 
   **一部指定管理者による管理の公園を除く。         
   名古屋市白鳥庭園(名古屋市)                     
   愛知県営愛・地球博記念公園(長久手市)           
   愛知県営小幡緑地(名古屋市)                     
   愛知県営大高緑地(名古屋市)                     
   愛知県営熱田神宮公園(名古屋市)                 
   ※愛知県内各公園でやむを得ず農薬を使用する可能   
    性はあるので、過敏な方は念のためご確認ください。
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事例報告:西東京市の場合
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1,経緯
 平成15年11月、市内4団体が農水省通知「住宅地等における農薬使用について」を踏まえ、農薬散布に関する質問と要望を提出した。平成16年1月、住宅地通知と東京都の子どもガイドラインを中心に農薬散布をしている10課と市民団体が話し合った。同年6月、市議会で農薬散布に関する質問があり、市は、害虫防除の方針を速やかに作ることを答弁した。庁内に検討委員会を作り、検討した結果、平成16年9月に「害虫防除方法基本方針」を策定した。(当時の担当は環境保全課)平成19年から担当が管財課に移り、現在まで続いている。
 市は、農薬散布をした場合は実積報告書を提出するよう依頼し、16年度から報告が上がってくるようになった。平成21年、22年は全施設で農薬散布はゼロ、23年は公民館、老人施設で一件ずつ散布があったが、市が管理する公共施設386ヶ所のほとんどで無農薬管理である。
 基本方針には、定期散布は行わない、殺虫剤を使わない方法(捕殺、こも巻等)、散布する場合の基準と殺虫剤の選定方法、殺虫剤の毒性と事故の際の応急措置、散布する場合の周知について、散布に対する苦情対応窓口などが書かれている。
 また、「一般家庭が散布する場合」も項目にあげられ、「一般家庭における殺虫剤散布でも、その必要性を再検討し、他の防除方法の検討」があげられている。


 左:12年10月撮影 金木犀生垣  右:07年6月撮影 サザンカ生垣

2,実績報告書
 正式には「害虫駆除(樹木等)、屋内衛生害虫駆除(ねずみを含む)に係わる化学物質の使用報告調査書」といい、屋外(樹木等)及び屋内衛生害虫駆除が報告対象になっている。
  屋外(樹木等)害虫駆除方法についての項目では、
 1,屋外樹木等の化学物質による害虫駆除を行っていますか。
 2,1で「はい」と答えた方は駆除方法を具体的に記入して下さい。
 3,1で「いいえ」と答えた方は対応した方法を具体的に記入して下さい。
 との質問がある。
  別に「実施報告書」があり、施設名、使用日、使用場所、使用目的、製品名、メーカー、化学物質名、危険有害性、低減化対策、使用量、実施の周知方法、立入制限の実施方法、実施にあたり注意した点を報告することになっている。
 この報告書は毎年度末に提出されるが、事前に相談を受ける場合もあるとのこと。

2,市立公園の対応
 みどり公園課が所管している。市立公園は208園ある。平成17年から無農薬管理をしている。ツバキ、サザンカなどチャドクガが発生する樹木は、人が入らない場所を除いて植え替えた。毎年同じようにチャドクガが発生するので、人件費をかけて駆除するより伐採して、他の木を植えた方がいい。平成20年くらいから植え替えている。代わりの木はキンモクセイが多い。
 サクラのモンクロシャチホコについては、人体に害がないので剪定で対応している。
 ちなみに、市の公園で植え替えた本数は、
   05年度:ツバキ・サザンカ等 約 80本
   06年度 ツバキ・サザンカ等 約490本
   07年度 ツバキ・サザンカ等 約180本
   08年度 サザンカ      約 2本

3,街路樹
 街路樹は、道路管理課が所管しているが、同様に無農薬管理である。平成16年に東京都からの指示があり、剪定、虫の手取りなどで対応している。苦情があった場合は、「剪定しているので農薬散布は出来ないことを理解してほしい」と伝えている。
 樹種はカエデ、カツラ、ツツジ、イチョウ、ケヤキ、ヤマモモ、ハナミズキ、など。サクラも一部にある。

4,小中学校
 教育委員会によると、小学校19校、中学校9校ある。平成16年から無農薬管理になった。(旧保谷市はもっと前から)。ほとんど剪定でやっている。普通は用務員がやっているが、学校からの要望があれば、業者を派遣する場合もある。

5,西東京市からのアンケートへの回答
 反農薬東京グループが今年9月に東京都下の区市町村に無農薬管理に関するアンケート調査を行った際、西東京市からの回答は以下の通りでした。
 各施設の、無農薬管理の状況は下記のとおりとなっております。
  
1 公園:農薬は使用していない。剪定等  5 学校:農薬は使用していない。剪定等
  により対応。                        で対応。
2 街路樹:農薬は使用していない。       6 老人施設:昨年度、1施設で農薬(薬
3 保育園:農薬は使用していない。         剤)を使用。その他の施設は農薬を使用
4 幼稚園:市では施設を持っていないの     していない。
  で該当なし。                         7 公共施設等:昨年度、1施設で農薬(薬
                                          剤)を使用。その他の施設は農薬の使用
                                          をしていない。
**** 囲み記事 ****
★国営公園での無農薬管理

 国土交通省が管轄する国営公園については記事t18002(06年8月)で、四国の讃岐まんのう公園での農薬散布を問題にしましたが、今回、その後の状況を聞いてみました。以下、国交省公園緑地景観課調べ。
 全国17の国営公園のうち、農薬散布をしていないのは7公園。害虫発生時には使用する
 としているが、近年、発生がないので農薬散布はしていない。
   @みちのく杜の湖畔公園(宮城県)
   A武蔵丘陵森林公園(埼玉県)無農薬管理ではっきりしている。
   B昭和記念公園(東京)
   C東京臨海広域防災公園(東京)
   D木曽三川公園(岐阜、愛知、三重県) 一部で害虫発生時に農薬使用
   E淀川河川公園(京都、大阪)基本的に使用していないが桜の木に使う
   F飛鳥歴史公園(奈良)朝顔、菊の鉢植えに農薬使用

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作成:2012-11-27