空中散布・松枯れにもどる

t25604#長野県の2012年の農業用無人ヘリ散布〜今年もネオニコ系ジノテフランが突出#12-12
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【参考サイト】長野県:農薬の空中散布検討連絡会議

 長野県では、松枯れ対策として有人ヘリと無人ヘリで農薬散布をしています。今年は、坂城町で空中散布が復活しましたが、来年は、松本市も無人ヘリ散布を予定しているということです。
 松枯れ対策の空中散布以外に、長野県では農業用の無人ヘリ散布が実施されており、実はこちらの方が面積が多いのです。
 2012年の農業用の無人ヘリ散布の実績について県からの回答を得ましたので報告します。

★届出数は減少も散布面積増
 長野県では、無人ヘリ散布は実施計画を届け出ることになっています。届出者の数は、2011年より合計で3件減っていますが、農事組合法人等が4件増加で目立っています。
  表1 届出者別件数

  届出者区分       2012年  2011年
  市町村関係        2     3
  農業協同組合等       17     21
  任意団体(協議会等)     10       10
  個人                      7        8
  散布作業受託者            1         1
  農事組合法人・営農組合等 10         6
  ゴルフ場                  1         0
     計                    48        51
 2012年の無人ヘリによる農薬散布面積は5708.8haで、2011年に比べて224.1ha増加しています。地域としては中信地区3市4町7村で、肥料等の散布を含め、4,225.0haで、全体の70.4%を占めています。

★水稲が散布面積の88%
 作物別の農薬散布面積は、水稲が約88%です。昨年、県は有機リン剤の使用自粛を求め、農薬空中検討連絡会議で無人ヘリ散布が見直しされたはずですが、224ha増加しています。長野県の水稲作付面積は34200haですので、約15%に無人ヘリ散布が実施されていることになります。それにしても、群馬県では無人ヘリによる有機リン散布自粛後、空中散布面積は、大幅に減少したのに、長野県が増えているのは理解できません。
  表2 作物別空中散布面積
  (単位:ha、()は内数で農薬散布のみ)

   作物等  2012年      2011年
   水稲   5,262.6(5004)     5,007.4
   大豆     573.4(573.4)      568.6
   小麦      111.8(81.9)     117.3
   アカマツ     49.5(49.5)        26.0
   合計    5,997.3          5,719.3
              (5708.8)          (5484.7)
★ネオニコ系ジノテフランがトップ
 では、どういう農薬が使用されているかですが、単剤での散布は少なく、ほとんどが混合剤です。
 一番多いのがビームエイトスタークルゾル(トリシクラゾール8%、ジノテフラン10%)で、3122.9haの散布があります。ジノテフランはネオニコチノイド系の殺虫剤で、主に斑点米の原因とされるカメムシ防除に使用されます。他のジノテフランの含まれている農薬を合計すると4,139.1haとなります。これは、2011年(約3,800ha)と比べると340ha増えています。

★事故もあった
 今年度の無人ヘリ散布時に事故がありました。県によると、9月7日、松本市で大豆畑で散布中に、ほ場奥の架線に接触し墜落しました。
 「墜落した機体は、メインローターやミッションケース等を損傷したが、農薬やオイルの流出等はなし。接触した架線は、傷がついたものの、切断には至らなかった。原因は、ほ場内の架線の設置状況を、オペレーター及び合図マンとも確認不十分であった。」とのことです。
 事故の原因はいつでも、オペレーターや合図マンの確認不十分ですまされますが、本当にそれが原因なら、事故を起こした作業員に何らかのペナルティが課せられているのでしょうか。

★無人ヘリに助成しているか
 地方自治体によっては無人ヘリ散布を環境保全型農業と位置づけているところもあります。長野県は無人ヘリ散布や購入時、その他に補助をしているかどうか聞きました。
<質問1>無人ヘリ購入時に融資や補助金、交付その他の施策をとっているか。
 <回答>
  本県では、無人ヘリコプターの購入に対する融資や補助金交付、その他の施策は
  行っておりません。

<質問2>無人ヘリコプターの操縦資格取得者を増やす方針をたてているか。その際、
  資格取得や講習に要する経費の融資や補助金交付、その他の施策があるか。
 <回答>
  本県では、無人ヘリコプターの操縦資格取得者の確保等に関する方針等は立ててお
  りません。また、資格取得のための講習に要する経費の融資や補助金交付、その他
  施策は設けておりません。

<質問3>無人ヘリコプターによる農薬散布を実施する者・団体に、散布経費の融資や
  補助金交付、その他の施策をおこなっているか。
 <回答>
  本県では、無人ヘリコプターによる農薬等の散布実施者・団体に対し、散布経費の
  融資、補助金交付、その他の施策は行っておりません。

<質問4>貴県が前記(1)〜(3)に予算をつける場合、どのような事業の予算から支出され
  ていますか。
 <回答>
  本県では、無人ヘリコプターの購入経費や散布経費、また、操縦資格者の研修経費
  等の支出はありません。

<質問5>貴県の環境にやさしい農業生産推進事業など環境保全型の推進に係る予算が、
  無人ヘリコプター散布関係の経費に使用されていませんか。
  されておれば、2010−12年の年間該当金額を無人ヘリ購入、操縦資格取得、農薬散
  布経費、その他にわけて教えてください。
 <回答>
  本県が推進している、「環境にやさしい農業推進事業」の予算には、無人ヘリコプ
  ターの購入経費や散布経費、また、操縦資格者の研修経費等の融資や補助金等は含
  まれておりません。
 以上の回答を見ると、長野県では無人ヘリ購入時、散布時、オペレーターなどの養成に補助金は出していないようです。しかし、環境保全型農業で、散布方法は問わないとして、無人ヘリ散布を認めていたことを考えれば、減らそうとは考えていないと言えます。

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作成:2013-02-26