街の農薬汚染にもどる

t26101#一歩前進ではあるが、まだ不十分〜「住宅地等における農薬使用について」新通知#13-05
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【参考サイト】農水省・環境省:
       「住宅地等における農薬使用について」に示す指導内容(案)パブコメ意見募集改定案
       当グループの意見結果公表本文
       通知「住宅地等における農薬使用について」pdf版(4/26)

 2012年4月から要望してきた通知「住宅地等における農薬使用について」の改定版(以後、「新通知」)は、約束より一ヶ月遅れて、4月26日にようやく発出されました。先月号で全文をお送りしましたが、農水省のホームページの以下に掲載されています。
 昨年、3度に渡って岡崎トミ子参議院議員と共に、農水省・環境省と話し合いを持ち、その様子は記事t24801記事t24901記事t25002記事t25301記事t25402で報告してきました。
 その結果、12年12月21日に、新通知の概要が公表され、パブリックコメントが実施されました。当グループの会員始め、多くの人から65通延べ250余りの意見がよせられ、その整理を理由に、農水省は通知発出を遅らせました。パブコメ意見に対する農水省・環境省の回答もでています。こちらも是非目を通してください。
 もう既に、農薬散布が始まっており、通知に新しく入れられた防除委託の条件も今年は間に合わないところがあるかもしれませんが、今からでも遅くありません。この通知を元に行政と交渉してください。

★新通知に反映されなかった要望
 新通知は、2007年に出された2回目の通知に比較して、論旨が明確になり、規制が前進していることは確かでしょう。しかし、私たちが何度も要望した点
 @農薬は適正使用であっても健康被害が起こることを明記する
 A大気中の農薬による被害を明記する
 B住宅地周辺での無人ヘリコプター散布を禁止する
 C登録されていない除草剤の使用も通知を準用する
 D遵守事項に違反した場合、ペナルティをつける
  等は、新通知に反映されませんでした
 また、最初に要望した通知へ罰則をつけることについては、「省令(農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令)を変えないと通知に罰則はつけられない」との理由で、見送られました。省令を変えるのは法律を変えるより簡単なはずです。省令は食用作物の農薬使用にしか罰則がありません。しかし、農地よりも身近な場所で使用され、しかも生産に直接関係のない公園や街路樹などの農薬使用についてこそ、罰則をつけるべきです。この点は、今後もしつこく要望していかなければなりません。

★委託者責任が明確に
 新通知は、前文、記、別紙と3つに分かれています。今回の通知の一番大きな変更点は、委託者責任を明確にしたところです。記の2の(1)、(2)、(3)になります。
 ここでは、地方公共団体が植栽管理を委託する場合、別記1「住宅地等における病害虫防除に当たっての遵守事項」を遵守して実施されるよう施設管理部局及び病害虫防除等を行う者に徹底すること、と、まずあり、そのために、仕様書の内容と入札の要件、研修を受けることが決められています。
 (1)仕様書の内容
   業務の委託にあたり、仕様書に、@農薬ラベルに表示された使用方法の遵守、
   A周辺住民等への周知、B飛散低減対策の実施、C農薬使用履歴の記帳・保管等、
   別紙1に掲げる事項を業務内容として規定する。とあります。
 (2)入札の資格要件
   入札の資格要件として業務の実施上の責任者が、@当該地方公共団体が指定する
   研修を受けていること。またはA当該地方公共団体が指定する資格を有している
   ことを規定しています。入札の段階でこの通知を十分に理解しているか、どうか
   が問われます。
   Aの資格は、農薬管理指導士、農薬適正使用アドバイザー、緑の安全管理士、
   技術士(農業部門・植物保護)となっています。技術士はパブコメ意見で新しく
   加えられたものです。
   「業務の実施上の責任者」とは、パブコメ意見への回答で「現場における防除の
   方法を決定する者」となっています。また、「具体的な入札の資格要件は発注者
   である地方公共団体が決定する」とあります。
   「研修」については、パブコメ意見への回答で「資格を有していなくても、研修
   を受講していることでもよい」とされ、都道府県が対応することになっています。
   国としては「消費安全対策交付金」で、農薬使用者を対象とした講習会の実施を
   支援しているということです。このような交付金があるとは知りませんでした。
   研修の内容は「施設管理部局の担当者が、本通知の趣旨・目的や住宅地等におい
   て農薬を使用する際に遵守すべき事項について理解し、植栽管理等の業務の発注
   に当たって、適切な対応をとれるようにするためのもの」とされただけで、具体
   的には書かれていません。また、「農薬担当部局等がなく、対応が難しい場合等
   は、関係団体の主催する研修に参加してもよい」と、トーンダウンしています。
  (社)緑の安全推進協会のような組織が実施する研修会でもいいということでしょう。
   もうひとつ、IPMを推奨しているグリーン購入法の役務「植栽管理」が庁舎管
   理の担当者に求められました。
   このことは、無農薬植栽管理の表彰制度や農薬不使用ゾーンの表示につなげてい
   きたいものです。
 いずれにしても、入札の資格要件とグリーン購入法については、私たちの要望で、今回の通知で新しく定められたものであり、今後どれだけ効果を上げるか注目したいところです。

★前文はパブコメ案に入ってなかった
 パブコメ案には、前文はありませんでした。通知が発出されて初めて書かれていることが分かったのです。全部の文章を出さずに意見を求めるのは不法、不当ではないでしょうか。
 もし、前文がパブコメ資料に入っていたら、少なくとも最初の「農薬は適正に使用されない場合」という箇所は、徹底的に批判されていたはずです。現在、適正であろうがなかろうが、農薬散布をされると健康被害を受ける人が多いからです。この前文から「適正に使用されない場合」を削除すべきです。
 さて、前文は「農薬は、適正に使用されない場合、〜関係者へのご指導をお願いしてきたところである」までは2007年の前通知と同じ文章です。
 2003年の一回目の通知では、前文の書き出しは「農薬は飛散することで人畜に被害を及ぼすおそれがあり」となっています。前回から、わざわざ「適正に使用されない場合」と入れたのは、農薬使用者が、自分は適正に使用している」という言い訳を与えるためのものと言われても仕方ないでしょう。
 「しかしながら」以下は、新しい情報であり、何故、通知が必要かを説明しており、また、通知の趣旨が周知されていないことも書かれており、この点は評価できます。

★遵守事項―別紙の内容
 別紙で、農薬使用者が守るべき内容が書かれています。まず、住宅地等の定義として、「学校、保育所、病院、公園等の公共施設内の植物、街路樹及び住宅地に近接する森林等、人が居住し、滞在し、又は頻繁に訪れる土地又は施設」が該当すると思われます。
 この定義は初めてですが、はっきりしていいと思います。「住宅地等における病害虫防除に当たって遵守すべき事項」は、2つにわかれ、1は「公園・街路樹等における病害虫防除に当たっての遵守事項」2は「住宅地周辺の農地における病害虫防除に当たっての遵守事項」となっています。

  ★公園等での遵守事項
1の公園等での遵守事項は10項目が書かれています。以下に要約します。

 (1)病害虫が発生しにくい植物及び品種を選ぶとともに、多様な植栽による環境の
   多様性確保に努めること。
 (2)定期的な農薬散布を止める。
 (3)やむをえず、農薬を使用する場合、散布以外の方法を活用する。やむをえず
   散布する場合でも最小限にとどめ、微生物農薬など人の健康に悪影響が少ないと
   考えられるものを使用。
 (4)ラベルに記載されている使用方法、使用上の注意を守って使用する。
 (5)現地混用は行わないこと、特に有機リン系農薬同士の混用は決して行わないこと。
 (6)農薬散布は無風、風の弱いときを選び、飛散低減ノズルの使用に努める。
 (7)事前に周辺の住民に、農薬使用の目的、散布日時、使用農薬の種類、農薬使用者
   の連絡先を十分な時間的余裕を持って幅広く周知すること。化学物質に敏感な人
   や子どもに十分配慮すること。
 (8)農薬使用履歴を記録し、一定期間保管すること。防除を他者に委託している場合
   は、当該記録の写しを委託者が保管すること。
 (9)散布後、体調不良等の相談があった場合は、農薬中毒に詳しい病院等を紹介する
   こと。
 (10)公園マニュアル等を参考にすること。
 周知に関しては、公園等と住宅地近隣の農地にも以下の同じ文章が付け加えられています。「その際、過去の相談等により、近辺に化学物質に敏感な人が居住していることを把握している場合には、十分配慮すること」が付け加えられています。パブコメ意見を取り入れたものと思われますが、「十分配慮する」内容がはっきりしないため、どこまで改善されるかわかりません。ただ、お知らせするだけでは、逃げるところもない人にとっては、何の役にもたちません。

★住宅地周辺の農地の遵守事項
 別紙の2は、住宅地周辺の農地における病害虫防除に当たっての遵守事項で、以下の要約のように8項目があげられています。

 (1)病害虫に強い作物や品種の栽培、適切な土づくりや施肥、人手による害虫の捕殺、
   防虫網の設置、機械除草等の物理的防除の活用で、農薬使用回数、量を削減する
   こと。
 (2)ラベルに記載されている使用方法、使用上の注意を守って使用すること。
 (3)飛散の少ない農薬を使用するか、飛散低減ノズルの使用に努めること。
 (4)散布は無風、風が弱いときに行うなど近隣に影響が少ない天候や時間帯を選ぶ。
 (5)農薬散布の事前に周辺住民に周知すること。(周知内容は、1−(7)と同文)
 (6)農薬使用履歴を作り、保管する。
 (7)周辺住民から体調不良等の相談があった場合は、農薬中毒に詳しい病院、または、
   日本中毒情報センターを紹介すること。
 (8)IPM指針等を参考とすること。
 私たちが何度も要望した無人ヘリコプター散布や、土壌くん蒸剤クロルピクリンの住宅地周辺での使用禁止には、一言も触れられていません。

★隣の家の農薬散布
 地方公共団体等が実施する農薬散布に関しては、この通知での改善が期待されますが、人々が困っている隣家からの農薬については、はかばかしくありません。
 通知本文には個人の散布については何も触れられていませんが、一応「農薬使用者」ということで、当てはめることはできると思います。
 というのは、パブコメ資料では、「防除業者」とあったものが、新通知では、すべて「者」などに変更され、防除業者という言葉はなくなっているからです。防除業者も個人の庭に散布する人も同じということです。多種多量の農薬散布に携わる防除業者が免罪されるのではないかとも考えられますが、一方で、個人も防除業者並みの規制を受けると考えることもできます。
 パブコメ回答では、どの程度まで周知すべきかに関して「自らの敷地内で、周辺への飛散がおよそ考えられないような方法で散布する場合にまで「周辺住民」への周知を行うことを求めているのではありません。しかしながら「農薬の飛散が考えられるような使用に当たっては」とすると、取り組みが必要な場合も拡大解釈等により、必要な対策がとられない恐れがあることから、原案のとおりとします」とあります。
 「周辺への飛散がおよそ考えられない方法」とは何をさすのでしょう。たとえ、スプレーによる散布でも被害を受ける人がいます。根本的には、農水省や環境省が大気中の農薬による被害を過小評価しているところから来るものと考えられます。

★通知の徹底的な周知を
 さて、不十分ではあっても、前通知よりは厳しくなった新通知ですが、この周知がまた大変です。前回の通知でも発出後9年経っても知らない行政が多数ありました。
 その度に、会員がいちいち通知を印刷して届け、説明し、議会で質問してもらってようやく理解してもらうという事例が多々ありました。
 今回の通知も同様の可能性がありますので、通知が発出される前に、環境省に周知先のリストを送ってもらいました。
・都道府県知事  ・関係府省(略) ・環境省(略) ・農水省(略)
・関係団体(名称のみ) 残留農薬研究所/食品農医薬品安全性評価センター/
 日本ゴルフ協会/日本花普及センター/日本植物調節剤研究協会/
 日本葉たばこ技術開発協会/全国植物検疫協会/全国食糧保管協会/
 全国農業改良普及支援協会/全国農業共済協会/日本ゴルフ場事業協会/
 日本農業法人協会/日本くん蒸技術協会/日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会/
 日本家庭園芸普及協会/日本花き生産協会/日本種苗協会/日本植物防疫協会/
 日本植木協会/日本造園建設業協会/日本造園組合連合会/日本農業機械化協会/
 日本農業機械工業会/農林水産航空協会/緑の安全推進協会/林業薬剤協会/
 全国たばこ耕作組合中央会/全国共済農業協同組合連合会/全国山林種苗組合連合会/
 全国主食集荷協同組合連合会/全国森林組合連合会/全国農業会議所/
 全国農業機械化研修連絡協議会/全国農業機械商業協同組合連合会/
 全国農業協同組合中央会/全国農業協同組合連合会/全国農薬協同組合/
 日本チェーンストア協会/日本園芸農業協同組合連合会/農薬工業会
 経験からこれでは、とても末端の農薬使用は減らないと思い、以下の団体を付け加えるよう要望しました。
 高層住宅管理業協会/住宅管理協会/日本賃貸住宅管理協会/全国賃貸住宅経営協会/マンション管理センター/UR(都市再生機構)/シルバー人材センター
  その他、追加すべき場所として、 1、道路(高速道路、国道や、県道・市道その他の地方自治体管理の道路における除草や街路樹植栽管理)
2、鉄道(JR及び民営鉄道における線路用地の除草、駅構内植栽管理、廃線跡地除草)
3、遊園地やテーマパーク、美術館その他の文化施設での植栽管理や除草での農薬使用
4、神社仏閣、霊園
 等を要望しました。国交省、文科省などには直接出向いて説明するとのことでしたので、厚労省、経産省へも行っていただくよう詳しく要望してあります。

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作成:2013-05-30