街の農薬汚染にもどる

t26501#「住宅地通知の周知アンケート43都道府県が回答」〜対応はバラバラで心許ない 突き上げが必要#13-09
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 農水・環境の二局長通知「住宅地等における農薬使用について」(以下「通知」とする。最初の発信は2003年9月)が全国の農薬による健康被害者の声を受けて、今年4月に2回目の改定がなされました。
 反農薬東京グループは、この通知が末端の農薬使用者まで届いているか47都道府県(以下、代表して「県」という)にアンケートで聞きました。今までの経験から、無法な農薬散布をする人は、この通知を知らないことが多かったためです。
 通知が出されてすぐに、環境省などに具体的な団体名をあげて、周知するよう要望もしました。それがどれだけ効果を上げているかも調べました。
主な質問内容は、@二局長「通知」を受け取ったのはいつか、A農水・環境省以外の省庁から通知があったか、B県からは、いつ、どこに通知を周知したか、C県独自の広報をしているか、D今後の方針などです。

 47都道府県のうち、最終的に43都道府県が回答してくれました。催促しても回答しなかった府県は、石川、福井、大阪、沖縄でした。以下、報告はこの4県を除いたものです。   アンケート内容質問2の回答表

★いつ通知を受け取ったか
 この項目に対する回答がなかったところは、43県中、京都、鳥取、長崎でした。
 農水・環境省が二局長通知を発出したのは4月26日でした。4月中に受け取ったところは21県、5月になってからは18県でした。たとえば、山梨=5月10日、滋賀=5月上旬、佐賀=5月10日頃となっています。4月中に受け取ったところに比べれば10日くらいの差があります。どこで滞っていたのか、明らかにしていただきたいと思います。

★他省庁からの通知は
 日本は縦割り行政なので、たとえば学校などについては文科省から、教育委員会などに届かないと実際は動きません。農薬を使用する街路樹、公園などは国交省からの通知が必要になります。
 そこで、農水・環境省以外の省庁から通知が届いたかどうか質問しました。やはり、縦割りのせいか、他の部署にきた通知を把握しているところは少ないようです。
 一箇所でも受け取った県があれば、その知らせは全ての県に届いているはずですが、アンケートをまとめた農業部局が把握していないところが多いと言えます。
 農水・環境省の正式な通知以外に他省庁から事務連絡などで、関連部局に知らせたところは以下の通りです。
(1)林野庁森林整備部研究指導課森林保護対策室から県林業関係部局へ
 5月22日付の事務連絡で秋田など21県が受け取ったと回答しています。この通知は反農薬東京グループが発出するよう要望したものです。
(2)文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課から教育委員会事務局等へ
 5月24日付の事務連絡(大阪府のHPにある文書)で、青森など11県が受け取ったと回答。
(3)警察庁長官官房会計課管財専門官から各都道府県警察(方面)本部総(警)務部会計課(施設)課長へ
 5月8日付の事務連絡で、受け取ったと回答した県は神奈川、長野、鹿児島の3県でした。警察庁から住宅地通知のお知らせが出ていたことは知りませんでした。それを認識していた県が3県とは情けない話ですが。
(4)東北運輸局鉄道部技術課から青森県企画政策部青い森鉄道対策室へ
 国交省関係から知らせを受けたと回答した県は青森だけでした。それも東北運輸局ですから、国交省が直接発出したかどうか不明です。
 国交省関係は農薬散布の現場が多いので、環境省農薬環境管理室に、直接出向いて特に強く依頼してほしいと要望したのですが。
たったこれだけしか、中央省庁からお知らせがなかったことに非常に腹立たしい思いがします。
 しかも、受け取った部局がどのように対処したかはわかりません。きちんと縦割りでもいいから知らせたのか、本当に末端まで知らせているのか。農薬弱者が被害を受けて初めて明らかになるというのは、あまりにもひどい話です。

★県広報誌やリーフやチラシは
 県が広報誌やホームページで県民に直接しらせているかどうか聞きました。  残念ながら通知を広報誌で知らせたという回答は、群馬のみでしたが、県の広報「ぐんま広報5月号」を見ると「住宅地やそれに隣接した家庭菜園では・・・」となっており、隣接農地が抜けているのは残念でした。
 農薬危害防止運動の中に通知の内容を入れたという県は、愛知、奈良、長崎でした。  市町村に依頼しているというのは、青森、栃木、長野、岐阜、佐賀で、関係機関に依頼しているというのが、和歌山、徳島で、検討中が京都でした。
 広報誌で知らせていない県は、全部で29県ありました。

★県独自のリーフレットは2県のみ
 県独自のリーフレットを作成し、広く県民に知らせているのは、千葉と愛知でした。  千葉は、広報誌では詳細に内容を伝えることが難しいため、毎年発行するリーフレットを主な周知手段としています。市町村に配布し、自治会組織等への周知を依頼しています。発行部数は5万5000部(平成24年度)で、ホームページにもアップしているとのことです(千葉県リーフレット)。
 愛知は、7000部(平成25年度)発行し、県内54市町村に各50部、20総合農協へ各10部、その他関係団体、研修会で配布しており、の県ホームページに掲載していると答えています(愛知県リーフレット同H25年版)。
 独自のリーフレットの作成はたった2県とは情けないと思います。それでもこの2県のリーフレットは、なかなかよくできていて、他県の農薬弱者にも好評です。これを守らない農薬使用者が多いのが残念です。

★国の作成したリーフレットは
 県が独自にリーフレットを作成しないのなら、国のリーフレットを活用しているかどうか、質問しました。
 この項目に回答がなかったのは、茨城と宮崎で、驚いたことに「活用していない」と回答してきたのが北海道、山梨でした。
 埼玉も活用していないとの回答でしたが、県独自のリーフレットを作成予定のためとのことです。
 他の県は、ホームページに掲載している、講習会、研修会で配布する、通知と一緒に送ったなどで活用しているとの回答でした。
 では、上記以外の方法で通知の周知をしているかとの質問には、山形は、全ての農薬販売店舗に配布し、購入者への周知をお願いしているとのことでした。長野は、新聞などの広告媒体を活用し、周知を図るとしています。

★県は受取った通知をどこに発出したか
 省庁からの通知を受け取ったのち、県が管轄の市町村や、県内の他部署、所管の団体等に、いつ、通知を連絡したかを問いました。
質問内容は、下記のように通知連絡の受け取り部署を詳細に尋ねましたが、回答内容はまちまちで、長野のように400以上の発出先を示したところもあれば、愛知のように、発出元、発出日、発出先をきちんと答えてくれなかったところもありました。
 以下に、宛先ごとに、連絡通知の有無について、その都道府県からの回答数を示しますが、個々の設問に対して、触発されたのか、今後、検討を予定したり、研修を行うとの答えをしめしたところもありました。

【市町村への連絡】
 回答総数 43で、すべての都道府県が市町村に連絡していました。その多くは、県の農政部署と環境部署の連名で、5月中に、「通知」を添付した連絡が管轄の市町村宛に送られていました。そのうち、11道県が市町村等への通知文書を示してくれましたが、単に通知があった旨を知らせたり、適正使用や周知を簡単に求めていたのは、北海道、秋田、埼玉、栃木、岐阜、岡山、島根、宮崎の8県、通知について、内容をまとめたり、具体的な指示を記載したのが、神奈川、長野、佐賀の3県でした。

【都道府県内部署への連絡】
 下表に示した12の部署中、2個所以下しか発出ていないのは、北海道、青森、山梨、愛知、三重、兵庫、長崎、宮崎でした。
 教育関係部署への発出が一番多く、県の教育局や教育委員会、県立学校、私学担当部署などへの連絡が36都府県で行われていました。長野のように、県立校名を全て挙げたところもありました。そのほか、発出先で30を超えたのは、病院・福祉・保育園等と道路関係でした。発出先が20以下だったのは、警察・消防、交通・鉄道関係でした。
   表1 県内部署への連絡の有無
    通知連絡先       連絡あり 連絡なし
    @教育関係         36    7
    A病院、福祉施設、保育園等 31    12
    B公園、市民農園管理関係   28       15
    C道路管理関係(街路樹等)  35        8
    D河川・港湾関係            28       15
    E公営・公共住宅           24       19
    F庁舎等管理関係            28       15
    G交通・鉄道関係             16       27
    H産業・労働関係             19       24
    I警察、消防               22       21
        J上下水道、環境関連施設等  27       16
    Kその他の部署             25       18
【都道府県内の関係団体への連絡】
 農林部局から関連団体への連絡について、7分野に分けて、その有無をたずねました。農業団体(県農協中央会、全農県本部、各農協、農業共済、ほか)へは、40府県が実施しており、なしとしたのは、東京、島根、大分だけでした。
 農薬防除業者への連絡は、半数に満たない22県でした。その内訳は、
   ・無人ヘリコプター業者:秋田、山形、富山、山口、佐賀、長崎
   ・造園業者:神奈川、和歌山、香川、長崎、宮崎
   ・農協や農業共済:宮城、新潟
 また、千葉、埼玉、神奈川、奈良、鳥取、熊本は、農薬管理指導士取得や研修で周知を実施するとしています。
 防除業者は、改定農薬取締法で、届出が不要となっており、防除業者数を正確に把握している県は殆どなく、兵庫が1117業者に連絡したと答えたのみでした。
 造園業者やゴルフ場への連絡は、それぞれ、26、27自治体でした。
 農業部局関係団体には、農薬の卸売業者の団体や販売業者、植物防疫協会などが含まれ、連絡しているのは33自治体でした。
 A〜L については、県から、関係団体に連絡している事例は少なく、病院・福祉関係団体の12を除き、すべて、10自治体以下となっています。
 すべての関係団体に連絡をしていないか、回答がない自治体は、北海道、岩手、群馬、千葉、山梨、新潟、長野、静岡、愛知、三重、滋賀、和歌山、島根、広島、山口、高知、愛媛、佐賀、大分、宮崎、鹿児島の21道県でした。
 また、すべての県が連絡していない団体は、産業・労働関係団体等(民間企業の敷地等)、観光業関係団体等(ホテル、民宿等、遊園地、テーマパーク等)宗教法人関係団体等(神社仏閣、霊園等も含む)の3分野でした。
 埼玉は、項目にあるような団体等の連絡先を把握しておらず、通知することが難しい状況であり、国から関係省庁を通じて、周知してもらいたいとの考えを述べていました。
    表2 県内関係団体への連絡の有無
      通知連絡先       連絡あり 連絡なし
    @農林部局の関係団体等
       農業団体        40         3
      防除業者関係団体      20(2)      21
      造園・植木・植栽管理業団体24(2)    17
      農業者大学校等     30(1)      12
      ゴルフ場関係団体     26(1)      16
      民間経営の農園関係    2(2)      39
      農林部局関係団体等   33         10
    
    A環境部局の関係団体等      4(2)      37
    B教育・文化・スポーツ関係団体等4(2)  37
    C病院・福祉関係団体等     11(1)      31
       D公園管理関係団体等       6(2)      35
    E道路管理関係団体等       3(2)      38
    F交通・鉄道関係団体等      3(2)      38
    Gマンション・賃貸住宅関係団体等1(2)   40
    H産業・労働関係団体等      0(2)     41
    I観光業関係団体等          0(2)     41
    Jシルバー人材センター関係 4(2)      37
    K宗教法人関係団体等        0(2)     41
    Lその他の関係団体等       3         40
   なお、表中の()は 今後予定しているや検討中で外数として示しました。
★今後について
 県の姿勢によってこれだけ差があるのかと驚きました。まったく、意に介していないと思われる県もあるかと思えば、担当者の熱心さが伝わってくる県もありました。
  未だに、農薬散布による健康被害を訴えても、動こうとしない県があることを考えれば、市民が積極的に働きかけていかなければ、百年たっても変わらないわけです。
 このアンケート調査がとても参考になったという県もあり、その点は少し慰められました。
 いずれにせよ、通知を受けた現場がどのように対応しているかが一番重要で、今後、身の回りで、しっかり、監視していく必要がありそうです。読者の皆さんの周辺のいい例や悪い例をお知らせ下さい。
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作成:2013-09-28