空中散布・松枯れにもどる
t27404#2014年度の有人ヘリコプターによる農薬空中散布〜水稲ではスタークル、松枯れではスミパインが多い#14-06
【関連記事】記事t26203(2013年)、記事t27203、記事t27303、記事t27405
【農薬空中散布情報】2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
【参考サイト】農水省:平成26年度 農林水産航空事業 実施計画について
全国、都道府県別実施計画
農林水産航空事業の実施状況についてにある
H25年度空中散布実績:全国、都道府県別の無人ヘリコプターと有人ヘリコプター
林野庁:松くい虫特別防除等の適切な実施について(事務連絡)と
2014年度都道府県別散布計画(民有林と国有林)
記事t27303で、農水省植物防疫課の調査をもとに、今年の有人ヘリコプターによる空中散布の都道府県別散布予定面積を示しましたが、今号では、水稲と松枯れ対策にどのような農薬が使用されているかをまとめました。
★水稲空散面積:スタークル系3分の2
本年度、水稲用農薬の散布面積は約3万8000haです。殺虫剤及び殺虫・殺菌剤の成分として、多く使われている農薬を表1に示します。有人ヘリ散布をしている8県33市町村 で一番防除面積が多いのは、ネオニコチノイド系のジノテフランを含むスタークル系製剤で、全体の3分の2程度を占めていました。次に多いのは、ピレスロイド系のエトフェンプロックスを含むトレボン系で、クロチアニジン、エチプロールと続きます。市町村別では、茨城県筑西市、山形県村山市、秋田県男鹿市が3000haを超えていましたこれら4農薬は、斑点米カメムシ対策に夏場での散布が多く、ミツバチには要注意です。
一方、 殺菌剤ではいもち病や紋枯病対策にアミスター(アゾキシストロビン)、カスミン(カスガマイシン)、ラブサイド(フサライド)などの散布が目立ちます。
水稲では、有人ヘリとは別に、無人ヘリコプター空中散布が約90万haありますが、これらの製剤の農薬別散布面積は不明です。
表1、2014年度水稲有人ヘリ空中散布の市町村別、殺虫剤別の散布面積(単位:ha、植物防疫課調)
都道府県 市町村 スタークル系 トレボン系 キラップ系 ダントツ系
ジノテフラン エトフェン エチプロール クロチアニジン
プロックス
北海道 遠別町 450
青森県 青森市 60 60 60
平内町 480 480
蓬田村 560 560
今別町 140 140
外ケ浜町 220 220
秋田県 男鹿市 3030
潟上市 1015
五城目町 740
井川町 680
由利本荘市 1480
横手市 280
山形県 上山市 100 100
寒河江市 180 180
村山市 2042 2042
東根市 558 558
茨城県 筑西市 6142
桜川市 1410
下妻市 2359
千葉県 香取市 1273
多古町 1215
東庄町 1030
旭市 703
宮崎県 小林市 200
鹿児島 南さつま市 103 682
伊佐市 396
霧島市 380 170
曽於市 1235
志布志市 222
大崎町 599
鹿屋市 757 120
東串良町 766
肝付町 507
合計 25556 8086 1460 1582
★松くい虫空散:スミパイン系が58%
植物防疫課の調べで、本年度の松くい虫対策の有人ヘリコプター空中散布予定面積は約1万7000haです。表2に*印で示したように使用農薬は有機リン剤MEP(フェニトロチオン)を含むスミパインMC(マイクロカプセル剤)とスミパイン乳剤、及びネオニコチノイド系チアクロプリドを含むエコワン3フロアブルの3種です。スミパイン系が全体の約58%、エコワンが残りの約42%で、その比率は昨年と変りません。国有林に限れば2428haのうち、エコワン3が約87%を占めています。県別で、スミパインMCが多いのは岡山県1127ha、新潟県963ha、鹿児島県915ha、スミパイン乳剤が多いのは鳥取県1734ha、宮崎県974ha、エコワン3が多いのは兵庫県1668ha(全て民有林)、鹿児島県1041ha(すべて国有林)です。
なお、有人ヘリ空中散布が実施されているゴルフ場は、栃木県、新潟県、静岡県、三重県、福岡県、佐賀県などにあります。
同表には、散布形態別県別の散布面積を示しましたが、これは林野庁の調査によるもので、有人ヘリ空散面積については、調査時期が異なるためか、植防調査結果とは数値が異なります(たとえば、合計面積14640haは植防調査結果より約2300ha少ない)。
散布形態別面積では、有人ヘリ空散70%、地上散布23%、無人ヘリ7%となっています。
前年増減面積を比較すると、有人ヘリ空散が増えたのは兵庫県498ha、福島県141ha、石川県102haです。地上散布が増えたのは千葉県197haが目立つ程度で、減少面積が多いのは、新潟県310ha、茨城県137ha、秋田県102ha、石川県101haです。その分、無人ヘリ空散が増加しており、新潟県260ha、茨城県123ha、石川県94haが目に付きます。秋田県は、有人ヘリ、無人ヘリ、地上散布とも減少しています。
なお、松枯れ対策用の無人ヘリコプター散布や地上散布は、散布農薬別統計はありませんし、地方自治体が行う場合もあり、その防除面積が統計表には加算されていないことに留意してください。
表2 松枯れ対策の都道府県別の農薬散布面積(単位:ha、林野庁調。*は植物防疫課調)
県名 有人ヘリ空散面積 無人ヘリ空散面積 地上散布面積
2014年 前年 *スミパ *スミパ *エコワン 2014年 前年 2014年 前年
増減 インMC イン乳剤 3フロアブル 増減 増減
岩手 27 0 28 40 4
宮城 386 0 386 204 -10
秋田 120 -120 120 222 -14 720 -102
山形 0 0 19 0 287 12
福島 645 141 645 122 -10
茨城 80 -37 116 123 123 192 -137
栃木 0 0 63 87 -1
群馬 0 0
埼玉 0 0
千葉 0 0 12 -5 217 197
東京 0 0 12 0
神奈川 0 0 62 62
山梨 0 0 5 0
長野 260 2 230 150 58 12 90 -7
静岡 483 -16 593 206 521 60 6 372 33
新潟 344 -25 963 587 260 150 -310
富山 0 0 29 29 37 -9
石川 818 102 588 168 94 325 -101
福井 573 -55 573 110 -18
岐阜 0 0
愛知 160 0 160 6 -1
三重 0 0 270 184 0 -13 27 20
滋賀 0 0
京都 0 0 28 28 0 -12
大阪 0 0
兵庫 1668 498 1668 66 -9
奈良 0 0
和歌山 116 0 116 169 0
鳥取 2625 -14 110 1734 995 69 -1
島根 69 0 69 3 -1
岡山 1376 -6 1127 249 48 0
広島 0 0 27 2
山口 0 0 8 3
徳島 0 0 46 0
香川 88 0 88 119 -29
愛媛 140 -50 158 24 -4
高知 0 0 33 4
福岡 855 8 39 63 876 66 58 264 -47
佐賀 161 0 167 78 -1
長崎 400 -2 317 84 118 -10
熊本 158 0 158 56 3
大分 0 0 26 0
宮崎 1132 0 974 158 298 0
鹿児島 1956 -33 915 35 1041 167 78 198 -42
沖縄 123 4
合計 14640 393 7133 3282 6522 1540 657 4838 -518
(322) (2106) ( )は国有林での散布面積
速報:島根県隠岐の島町の松枯れ空中散布で健康被害〜地上散布は中止に
【参考サイト】島根県:空中散布の実施について、終了情報
隠岐の島町:空中散布、地上散布についてと地上散布中止について
日本海に浮かぶ島根県隠岐の島町では、松枯れ対策のための農薬散布が実施されています。今年も、島の北部の代地区・西村地区・布施地区では、有人ヘリコプターによるスミパインMC(MEP23.5%)の空中散布が65.88haが、布施・中村・都万の防風林ではスミパイン乳剤のスパウターによる地上散布が3.62haが計画されていました。
町によると、5月 19 日空中散布実施後、 26 日に一家3人が体調不良(眼の痛み、立ちくらみ等の症状)を申し出た。地域の総合病院で受診したが、異常は認められなかった。空中散布後の大気調査では、MEP濃度は、0.05μg/m3の検出限界以下だったとのことです。
町は、『 体調不良と薬剤空中散布との間に因果関係は明らかではないものの、体調不良を訴える事案が発生したことから、本年度の松くい虫防除薬剤地上散布を中止する。』とし、6月3日と17日の3地区でのスミパイン乳剤の地上散布をやめました。今後については、周辺地域住民の健康状態や被害の実態把握を行い、薬剤散布に対する地域住民の意向を確認した上で被害対策を決めるとされています。私たちは隠岐の島町に、今回の健康被害の経緯を含め、松枯れ対策について、質問をするとともに、次の要望を行いました。
【要望】松枯れ対策として、農薬空中散布など中止を決めた出雲市の事例を参考に、被害防止効果が明確でなく、人の健康被害や自然環境・生態系に影響を及ぼす恐れの強い、農薬の地上散布や空中散布を中止し、他の対策をとることを求めます。
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作成:2014-07-01