街の農薬汚染にもどる

t27702#デング熱蚊対策: ウイルスチェックで陰性でも、殺虫剤を散布するとは・・・#14-09

【関連記事】デング熱・蚊対策に、ウエストナイル熱の教訓を生かそうに関連記事一覧あり(資料「脱農薬蚊対策」ダウンロード可)。
【参考サイト】厚労省:デング熱についてデング熱国内感染事例発生時の対応・対策の手引きについて
       国立感染症研究所:Top Pageデング熱とは        東京都:デング熱の頁蚊対策の頁
       千葉市:デング熱に関する相談窓口について       神奈川県:デング熱について
       蚊のサーベイランス;東京都健康安全研究センター横浜市衛生研究所:H23-25H17-21
8月27日、厚労省結核感染症課課長は、都道府県らに「デング熱国内感染症例について」という通知を出し、国内でデング熱に感染した患者がでたことを伝えました。
 デング熱はアジア、中南米、アフリカ等、世界の広範な地域で流行している蚊による 感染症で、症状は発熱、頭痛、筋肉痛や皮膚の発疹等で、1,2週間で回復するとさ れていますが、まれに、重症化することもあるということです。
 千葉県のHPによりますと、国内でデング熱にかかった人は今までも結構いるのだ そうです。主に、海外でり患したとされています。その全国の数値を見ると、H21(93人)、H22(244)、H23(113)、H24(221)、H25(249)となっています。既にこれだけ患者がいたのであれば、国内の蚊がウイルスを持っていたのは不思議ではないと思えます。
 2005年のウエストナイル熱騒ぎのとき、厚労省は蚊の調査体制をとったのではない でしょうか。空港などの周辺、あるいは神奈川県では公園でも調査をしていましたが、 今までにデング熱ウイルスを持った蚊を発見したことはありませんでした。
 しかし、ウイルス蚊はいたのです。となれば、その調査体制を考え直す必要があるのではないでしょうか。来年、ウイルス蚊が発生しないとは言い切れないのですから。

★国内で感染したのが問題か
今回の患者は海外渡航歴がなく、デング熱ウイルスをもった蚊が国内にいることが 明らかになりました。その後、患者が次々明らかになり、患者の多くが都内の代々木 公園で蚊にさされたと訴えていることがわかりました。
 厚労省によると、その後、患者数は増え続け、代々木公園以外で蚊に刺された人な ども増えてきました。9月16日に、厚労省がまとめた感染場所の内訳は
    代々木公園周辺(112名)        新宿中央公園(6名)
    代々木公園周辺又は新宿中央公園(1名) 神宮外苑または外濠公園(1名)
    千葉県千葉市(1名)          外濠公園または都立青山公園(1名)
    東京都台東区(1名)          不明(1名)
となっています。
 私たちは、殺虫剤を散布すると蚊以外の昆虫なども死んで、生態系に悪影響を与え るのではないかと、9月5日に東京都に以下のような質問を出しましたが、回答はま だ、きません。
 東京都への質問:デング熱媒介蚊の駆除について

★殺虫剤散布状況
 代々木公園は8月28日、9月5日、9月12日と3回殺虫剤散布をしています。散布したのは3回ともサニタリーEP水性乳剤(フマキラー)でした。サニタリーEP水性乳剤は、ピレスロイド系殺虫剤でエトフェンプロックスが7%入っています。この薬剤を選んだのは、厚労省のお知らせにあった蚊成虫用殺虫剤のリストから選んだとのことです。
 代々木公園は一部を立ち入り禁止にしたまま、毎週、蚊のウイルスチェックをして、陽性が続く間は殺虫剤を散布すると言っています。
 新宿中央公園は、新宿区が9月5日に散布しました。区の説明は、「近くに国立感染症研究所があるので、そこの人と蚊が多くいるところを調べて散布した。ウイルスの有無は調査してないし、これからもしない。撒いたのは商品名でレナトップ(三井化学アグロ)だ。代々木公園で撒いたのと同じ系統だ。業者に依頼して撒いた。敷地に隣接して専門学校と神社があるのでそこには知らせた。薬剤を選んだのは業者だ」
 外濠公園では、9月12日に千代田区保健所が業者に依頼して散布したとのことです。薬剤はベルミトール水性乳剤(三井化学アグロ)です。蚊からウイルスは検出されていませんが、だからといって全部の蚊が陰性とは限らないと保健所は言っていました。また、JRの線路に隣接しており、そちらの方がむしろ蚊が多いので、JRにも対策を頼んでいるとのこのことでした。
 国技館では、そこから感染したということはありませんが、念のために散布したとのことです。ここでもレナトップを100リットル散布しました。テレビで報道された映像を見ると、高い木のてっぺん向けて散布していましたが、そんなところに蚊がいるのでしょうか。また、入り口に虫よけ剤を「ご自由にお使いください」とおいているとのことで「使用上の注意を知ってますか」と聞いたところ、知らないとのことでした。事故が起こったらどうするつもりでしょう。
 青山公園では、9月12日に、代々木公園と同じサニタリーEP水性乳剤を散布したとのことです。
 明治神宮では、9月6日に感染症研究所や都のすすめでミラクン(フェノトリン1%含有)という炭酸ガス噴射型殺虫剤を散布したとのことです。ただ、広い場所だし参拝者もいるので感染症研究所の専門家と話し合って最小限に止めたとのことでした。
 千葉市では、感染者が出たということで、患者が住んでいた近くの半径100mを目途に草の茂ったところなどに、9月10日に、EPS水性乳剤、スミスリン乳剤(フェノトリン含有)、ミラクンの3種類の殺虫剤を散布したということです。周辺は住宅地なので、チラシを投函したり、自治会長に知らせたとのことです。

★農薬より高濃度で散布
 どこで、どのような殺虫剤が使用されたかは、正確にははっきりしませんが、ピレ スロイド系のエトフェンプロックス製剤が多くみられます。エトフェンプロックスは 農薬活性成分として年間約100トン使用され、トレボンという商品名で知られています。ミツバチ毒性が強く、水稲の斑点米カメムシ駆除のほか、野菜、街路樹、公園・緑地、学校でも散布されます。樹木の場合の希釈倍率は20%含有乳剤で2000、4000倍ですが、蚊成虫に直接噴霧される場合は、7%含有製剤で、50〜100倍であり、散布 濃度は農薬にくらべ、7〜20倍程度高くなり、ヒトやミツバチへの影響が農薬よりも一層大きくなることが懸念されます。

★ふたつの虫よけ剤
 厚労省や自治体では、蚊に刺されないため肌の露出の少ない着衣をすすめるほか、虫よけ剤を使えといっています。虫よけ剤には2種類あることを忘れてはなりません。
【蚊には使えない虫よけ剤】昨年、記事t26201記事t26306でとりあげましたが、戸外ぶら下げ型の虫よけ剤として売られているものは、蚊のような衛生害虫への適用はなく、「カ」といっても対象はユスリカで、不快害虫用のものです。蚊に効果があるのは薬事法で承認された「防疫用医薬部外品」の表示のある製品に限ります。

【ディート系虫よけ剤】ヒトに吹き付けたり、塗ったりするのは、ディートという蚊の忌避剤が主で、私たちは、2005年に、赤ちゃんにスプレーしているテレビCMを問題視し、放映をやめさせましたが、その理由はディートの神経毒性についてでした(記事t11603記事t16803記事t16901)。
、  厚労省は、通知で、商品に使用上の注意を明記することや健康被害の定期報告と神経毒性の研究を製造販売業者に報告を求めました。その後の業界の試験*で(医薬品等安全対策部会安全対策調査会)、神経毒性は認められなかったということで、厚労省は、2010年10月、新たな通知で、副作用の定期報告を解除しましたが、使用上の注意に関する事項は、そのまま残っています。そのため、蚊対策の虫よけ剤には、「医薬品」や「医薬部外品」の表示があります。
 下表に代表的なスプレー型の製品を示します。
   *注:神経毒性試験は、7週齢から11週齢のラット成獣の経皮毒性試験にすぎず、     ピレスロイドなどとの複合作用は検討されていない。

  表 ディート含有虫よけ剤
   メーカー    商品名        ディート含有率

   アース製薬   サラテクトFA       12 %
   池田模範堂   ムシペールα        12
   近江兄弟社   メンターム虫よけスプレーEX 12
   フマキラー   スキンベープミスト     10
   ジョンソン   スキンガード         9.75
   金冠堂     キンカン虫よけスプレー     7
   アース製薬   サラテクトマイルドミスト   6
   大日本除虫菊  金鳥プレシャワー          6
   ジョンソン   スキンガードアクア         5

 ディートの含有率は5から12%で、たとえば、ムシペールαには、以下のような使 用上の注意があります。
 『小児(12才未満)に使用する場合には、保護者等の指導監督のもとで、以下の回数
  を目安に使用してください。なお、顔には使用しないでください。
  6カ月未満の乳児には使用しないでください。
  6カ月以上2才未満は、1日1回。2才以上12才未満は、1日1〜3回。』
 『次の物には付着させないでください。(変質する場合があります。)食物、食器、
  玩具、床や家具などの塗装面、メガネ、時計、アクセサリー類、プラスチック類、
  化繊製品、皮革製品、マニキュア等。』
 『ストッキングなどの上に直接噴霧しないでください。
  (生地が傷む場合があります。)』
 スプレー型の虫よけ剤は、スポーツやイベント会場の入り口に置かれ、自由に使う ようになっています。ディートとピレスロイド系殺虫剤との複合作用や虫よけ剤に添 加されているエタノールの影響も心配されますので、主催者は注意を喚起すべきです

★ デング熱蚊対策に思う〜会員からのお便り −略−


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作成:2014-09-28