空中散布・松枯れにもどる

t27703#利用技術指導指針の改訂で、農水省植物防疫課への無人ヘリ散布計画の提出を求める#14-09
【関連記事】記事t27203記事t27601
【参考サイト】農水省:無人ヘリコプター利用技術指導指針改訂(6/19)、H26/11/18改訂版2008/07/15の指針
               報告要領、都道府県別実施計画・実績報告先事故情報連絡先
       農林水産航空協会:Top Page

 農水省は、6月19日に、無人ヘリによる農薬空中散布に関する「無人ヘリコプター利用技術指導指針」を改訂しました。
 主な改訂個所は、
 @定義などの字句を改訂
  実施主体として、個々の農林業者とあったのを「農林業者及び防除業者等」とした。
  操作要員を「オペレーター」として、無人ヘリコプターを操作する者と定義した。
  そのほか、オペレーターの作業を補助する者を「合図マン」とした。
 A無人ヘリコプター協議会、地区別協議会の役割の項に、旧第九項にあった一般社団
  法人農林水産航空協会の役割が移された。
 B遵守事項として、下表にあるような実施計画を、無人ヘリ協議会だけでなく、農林
  水産省消費・安全局植物防疫課に報告することが追加された。
 C空中散布による危被害防止対策に、架線等の危険箇所、実施除外区域だけでなく、
  飛行経路並びにオペレーター及び合図マンの経路を示した地図を作成し、散布前に
  実地確認することが追加された。さらに、オペレーター及び合図マンの留意事項に
  下記5項目が追加され10項目になった。
 ・ 離着陸時を含め、オペレーター、合図マン及び作業者と機体の距離は十分離し、
   空中散布等を実施すること。
 ・オペレーター及び合図マンは、散布前に共同で実地確認を実施し、危険箇所等の
   情報を確実に共有すること
 ・近くに家屋や架線等がある場所を離着陸地点にしないこと
 ・家屋や架線等に向けた操作を行わないこと
 ・オペレーター及び合図マンの連続作業時間が長時間に及ばないよう作業時間に留意
   すること。
 D事故報告への対応に関して、2011年1月に、通知「無人ヘリコプターによる空中散布
  等に伴う事故情報の報告依頼について」を農水省が発出していたが、これに準ずる
  内容が第六項に追加された。
以上の中で、最も重要な改訂は、Bにある散布計画を農水省に報告するよう指導したことです。しかし、無人ヘリ認定、オペレーター管理などを民間団体に任せっぱなしになっていることにかわりはありません。

★消えた3200人のオペレーターの謎解き
 前号のトップ記事(記事t27601)で、2013年度の無人ヘリコプター関連の統計データを示しましたが、その中で、前年度より認定オペレーター数が一挙に3200人も少なくなったミステリーを紹介しました。その回答が、植物防疫課から来ました。
『24年度の調査までは、オペレーターの認定者数の累積(有効期限切れや技能認定 証返還届を出された方を含む)を掲載しておりましたが、25年度の調査より、有効 なオペレーターの認定者数を掲載することとしました。』
 要するに、農林水産航空協会の杜撰なオペレーター管理の結果、認定者リストから毎年の認定証返還者等を削除してこなかっため、2012年から13年で、みかけ上、一挙に認定者を3200人も削減せざるを得なかったということです。
 農水省から、オペレーターの認定を任されている協会は独自の「産業用無人ヘリコプターオペレーター技能認定基準」を制定し、教習、技能認定、認定証交付を実施しています。その認定証は下図−省略−のようなもので、氏名や有効期限のほか、技能区分には操作機種名が記載されています。
 基準によると、認定証は、無人ヘリメーカー主導の教習施設管理者による認定推薦状に基づき、協会長が公布するものです。有効期限は5年間になっており、有効期限がすぎれば、失効者となり、無人ヘリ操作ができませんが、更新教習を受けることによって期限延長ができます。更新を希望しないものは、認定証返還届を協会長に提出することになっていますが、事故などを起こしたものの認定が取り消されるかどうかの決まりやペナルティーもない、お粗末なものです。

★無人ヘリの法規制に踏み切るべき
  ヤマハ発動機は、昨年から新型無人ヘリ「フェーザー」の発売を始めました(記事t27203参照)。今年になって、山形県のメーカーは、一機1000万円を超える現在の無人ヘリよりも低価格の300万円台の機種(薬積載量は従来の2分の1の約9L)を農家個人向けに販売しようとしています。さらには、総重量100kgから150kgとして、積載量を増やした機種の開発が容易になりました(記事t27601参照)。このような無人ヘリコプターの使用について、取り締まる法律を制定しないで、「利用技術指導指針」という行政指導のみで対応していくには、限界があることを、農水省は、はっきりと認識すべきです。

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作成:2014-10-26