街の農薬汚染・シロアリ防除剤にもどる
t27805#デング熱など感染症で厚労省が小委員会設置〜蚊対策はどうあるべきか#14-10
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デング熱・蚊対策に、ウエストナイル熱の教訓を生かそう
【参考サイト】厚労省:デング熱のページ
厚生科学審議会(感染症部会)のページと第6回資料と議事録、小委員会設置
第7回資料、小委員会について
東京都:蚊媒介感染症対策に関する国への緊急提案について、提言本文
東京都蚊媒介感染症対策会議報告書についてと概要、報告書本文
デング熱発症事例の報告数推移は図のようですが、10月になって、沈静化しています。発端となった東京代々木公園での蚊のウイルスチェックでは陰性がつづいているとのことですが、一方で、兵庫県西宮市での発症例のように、海外渡航による感染が否定出来ず、また、周辺のウイルスチェックでも陰性なのに、殺虫剤を散布した例もあります。
★厚労省があげる蚊対策用殺虫剤
【参考サイト】環境省のPRTRインフォメーション広場にある届出外推計資料
2012年度殺虫剤に係る需要分野別・対象化学物質別届出外排出量推計結果(xlsファイル)
前号でも述べたように、私たちは、どこで、どのような殺虫剤が使用されたがはっきりしない上、農薬と同じ成分が、しかも農薬より高濃度で、身の回りの蚊対策に安易に使用されることを問題視しています。
国立感染症研究所による「デング熱国内感染事例発生時の対応・対策の手引き」−地方公共団体向け−には、蚊の成虫及幼虫用の医薬品や防除用医薬部外品として、成分数別では16、製剤数では59が、リストアップされています。内訳は、有機リン剤5成分31製剤、ピレスロイド剤7成分22製剤、昆虫成長制御剤3成分15製剤です(製剤数は複合成分を重複して数えた)。
殺虫剤成分のうち化管理法(PRTR法)の指定物質については、需要分野別の排出量が調査されており、2012年の結果を表に示します。★印は、厚労省の蚊防除用のリストにある成分で、有機リン系やピレスロイド系が多くみられます。
一般に、有機リン系は、ヒトに対する神経毒性などが強く、ピレスロイド系は環境ホルモン作用が懸念されるとともに、トランスフルトリンを含むワンプッシュ型殺虫剤に魚を飼う水槽のある部屋では使用できないとの注意があることからわかる通り(記事t27609参照)、魚毒性が強く、蚊幼虫の天敵である魚には影響が大きく、池の近辺での使用は問題です。ただし、エトフェンプロックスは魚毒性B類のためか、レナトップ乳剤は水場の幼虫ボウフラ対策にも使用されています。また、エトフェンプロックスを活性成分とする農薬トレボン乳剤容器には、ミツバチ毒性が強いため、養蜂への注意が記載されていますが、蚊対策用薬剤には、そのような注意はありません。
表 2012年度殺虫剤の需要分野別排出量推計量(PRTR法統計より。単位:kg)
成分名 成分の種類 家庭用 防疫用殺虫剤 不快
殺虫剤 自治体 防除業 害虫用
フィプロニル その他 18
エトフェンプロックス ★ピレスロイド 840 560 791
トラロメトリン ピレスロイド 518
フェンプロパトリン ピレスロイド 912
テトラメトリン(フタルスリン) ★ピレスロイド 19042 314 209 2519
トリクロルホン(DEP) 有機リン 274 182
ダイアジノン ★有機リン 211 141
フェニトロチオン(MEP) ★有機リン 39 15482 10321 844
フェンチオン(MPP) ★有機リン 2660 2216 1478 283
ペルメトリン ★ピレスロイド 3528 1105 736 850
カルバリル(NAC) カーバメート 12020
フェノブカルブ(BPMC) カーバメート 5334
ジクロルボス(DDVP) ★有機リン 12071 31956 21304
★殺虫剤散布はせめて農薬なみの規制を
蚊駆除の場合は、幼虫のボウフラ対策が最も重要で、生育場所の除去が最重要です。
また、蚊を絶滅させることが困難である以上、ヒトが蚊に刺されないようにする長袖等の着衣も必要です。一方、感染症の病原菌やウイルスがみつからないのに、安易に、殺虫剤を散布すれば、耐性蚊を生み出し、蚊の天敵昆虫や捕食水生生物にも影響を与えますし、薬剤が大気を通じて、ヒトに取り込まれることも心配です。
表に見られるように、蚊対策に使用される薬剤の成分は、農薬活性成分と同じです。農薬の「住宅地通知」なみに、殺虫剤に頼らない蚊対策の実践を第一に、菌やウイルスをもつ蚊の生息調査に重きを置き、万一、陽性で、殺虫剤を散布する場合は、周知と立入規制措置が不可欠です。この件に関しては、〇頁の森田さんの投稿<蚊対策は発生源対策を重視してもっと物理的防除の啓発を>を参考にしてください。
★今後に向けて
10月8日に開催された厚労省の第6回厚生科学審議会感染症部会では、デング熱等、蚊媒介性感染症の対策についての検討が行われました。『デング熱のほか、蚊の媒介する感染症としては、ウエストナイル熱、チクングニア熱、マラリア、日本脳炎などがある。デング熱やチクングニア熱については、今後とも、国外で感染した者が国内で蚊に刺されることにより、国内で感染が拡大するおそれがある。これらの蚊の媒介する感染症については、蚊への対策を講じることにより、その発生を予防するとともに、そのまん延を防止することが重要である。』とされ、蚊が媒介する感染症の発生の予防及びまん延の防止に向けた今後の対策を検討するための、「蚊媒介性感染症に関する小委員会」が設置されました。本年度中に、「蚊媒介性感染症に関する特定感染症予防指針」を策定することになっています。
同委員会には、農薬での経験を踏まえ、殺虫剤使用についての要望等を提出していきましょう。
反農薬東京グループから厚労省への感染症媒介蚊対策について質問と要望
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作成:2014-12-26