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t28301#消費者庁が虫よけ剤に措置命令〜安全性はおかまいなく、表示を変えろのみ#15-03
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【参考サイト】アース製薬 TopPage対応興和大日本除蟲菊フマキラー

 2月20日、消費者庁表示対策課は、「虫の忌避効果を標榜する商品の販売業者4社に対する景品表示法に基づく措置命令について」という文書を出し、アース製薬(株)、興亜(株)、大日本除蟲菊(株)(商標名金鳥、KINCHO)、フマキラー(株)の4社に対する措置命令を公表しました。
 これより前、2013年7月に当グループは、虫よけ剤メーカーへの質問に対する回答を踏まえ(記事t26201参照)、消費者庁や厚労省、内閣府、国民生活センターに要望を出しています(記事t26306参照)。 その要旨は以下のようです。

2013年7月の要望
 1、メーカーが私たちに回答しなかった下記の事項について、科学的に妥当なものか
  調べて、報告してください。
  薬効試験/フィールドでの風向や風速、気温、湿度など気象条件と薬効との関係/
  対象昆虫の忌避気中濃度と殺虫効果
 2、商品の虫よけ効果がメーカーの主張どおりのものであるかどうか、貴省庁等で試
  験を実施して、その結果を公表してください。
 3、虫よけ剤のメーカーに対し、以下のアクションをとってください。
  科学的なデータの公表/製剤の有効成分とその含有量を製品に表示/人の健康への
  影響と気中濃度の関係の調査/昆虫に対する薬剤抵抗性
  さらに、虫よけ剤の商品名は「虫よけネット」「虫よけバリア」「虫コナーズ」
  「虫よけ当番」などで、その対象昆虫がユスリカとチョウバエの2種であるにも拘
  わらず、あたかも蚊、その他の昆虫に対して忌避効果があるような誤解を消費者に
  与え、景品表示法上問題があります。
   虫よけ製品のCMには、対象昆虫を明示し、製品の表示には、対象昆虫を目立つ
  ように表示するよう指導してください。
  ―中略― 蚊への効果が確認されていないことを表示するよう指導してください。
 4、薬事法(2014年11月25日から「医薬品医療機器等法」に法律名称変更)の適用を
  受けない虫よけ剤は、薬事法の殺虫剤成分と同じか類似した成分で、その無制限な
  使用は、薬事法対象の他の昆虫(たとえば、蚊)の生息にも影響を与え、薬剤抵抗
  性の昆虫を生み出すことになります。
 5、虫よけ剤により健康被害を受ける人は、室内外で使用するこれら製品の販売・使
  用中止を求めています。―中略―虫よけ剤の法的規制を求めます。
 この要望に対する回答はありませんでしたが、消費者庁は調査をすすめたものと思われます。

消費者庁措置命令
 【措置命令より抜粋】
  ア 表示の概要
   4社は、(略)あたかも、対象商品をベランダ等に吊り下げるなどするだけで、
  表示された範囲、表示された期間にわたり、対象商品から放出される薬剤により、
  ユスリカ及びチョウバエを寄せ付けないかのように示す表示をしていた。

  イ 実際
  前記アの表示について、当庁は、景品表示法第4条第2項の規定に基づき、4社に
  対し、それぞれ当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたと
  ころ、4社から資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合
  理的な根拠を示すものとは認められなかった。

 (3)命令の概要
  ア 4社が行った前記の表示は、対象商品の内容について、一般消費者に対し、実際
   のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するもので
   ある旨を一般消費者へ周知徹底すること。
  イ 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
  ウ 今後、表示の裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有することなく、同様の表
   示を行わないこと。
★事例 アース製薬への命令
 消費者庁は上記の概要以外に坂東久美子長官名で2月20日に4社に対してそれぞれ「不当景品類及び不当表示防止法第6条の規定に基づく措置命令」を出しています。そのうち、アース製薬に出した命令は以下です。
 措置命令のp-5にあるアースの表示例とp-12にあるアースへの命令内容

★4社の言いわけ
 これに対して、4社はそれぞれホームページで言い訳をしています。
<アース製薬>
「(略)消費者庁からの求めに従い、資料を提出いたしましたが、当該資料は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないと判断され、本件商品の取引に関し行った表示は、本件商品の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するものでありました。(略)指摘を受けた表示につきましては、すみやかに是正処置を行う所存でございます。」
<興亜(株)>
「今般の措置命令は、本製品の効果がないというものではなく、本製品のパッケージにおいて強い風等のあらゆる気象条件下においても、不快害虫に対する虫よけ効果を示すと誤解されると表示がされていたことによるものでございます。今後のパッケージ表記については、誤解されることのないよう留意し、適切な対応をしてまいります」
<大日本除蟲菊(株)>
「措置命令を受けるに至った原因は(略)開放空間においても同等の効果があるように消費者の皆様に誤解を与える内容になっていたことによるものでした」
<フマキラー(株)>
「本措置命令に関して消費者庁から指摘された問題は、虫よけバリアのパッケージ表示の一部に関するものであり、虫よけバリアの虫よけ効果が否定されたものではありません。消費者庁より指摘を受けたパッケージ表示については既に変更を完了しており、今後も虫よけバリアを継続することに問題はございません。」

★どこがどう違うのか〜アースの表示
 アース製薬は、前述の消費者庁の措置命令を受け容れて、パッケージなどを変更した虫よけ剤の宣伝をホームページ上で、繰り広げています。
 アース製薬の対応にある新たな表示をみてみましょう。

 どこが違うかわかりますか。上が旧の表示、下が直した表示です。旧の「早く効く! 長く効く!」が「ネットタイプの簡単虫よけ!」に変わっています。
さらに、パッケージに2個所あった虫の図がなくなりました。また、バポナの特長などには以下が記載なされました。
 『※窓の上部に製品をつるし、ユスリカの侵入抑制率を確認しました。(気温:22
  〜24℃、湿度:55〜65%の条件下にて)トランスフルトリンとエムペントリンの2つ
  の薬剤を配合!』
 『使用期間 約160日間(使用環境により異なります)屋外自然条件下(6月〜11月)
  にて行った試験に基づく』
 『●いやな虫(ユスリカ)が飛来しそうな場所に設置してください。
  ●本品は蚊を対象とした商品ではありません。
  ●風向きなどにより効果は異なります。(風上には効果はありません)』
★私たちの要望を無視・退けたメーカー
 商品そのものについては、消費者庁は何も言わず、単なる表示への命令のため、メーカー4社は、あ、そう、じゃあ書き換えますとばかりに、指摘された不都合な個所を上述のように変えたのです。
 メーカーは、はじめから、意図的に、医薬品医療機器等法(旧薬事法)の承認が不要なユスリカなどの虫よけを、あたかも蚊に対して効果があるように誤認させる宣伝をしていたことが明らかになったわけで、消費者庁には、商品名を「虫よけ」ではなく「ユスリカよけ」とするよう指導を求めます。
 しかし、私たちは虫よけ剤の効果のみを問題としたのではありません。健康被害を訴える人が多いことに重点を置いて要望したのですが、消費者庁はそこには踏み込まず、表示問題に矮小化してしまいました。
 使用されているピレスロイド系殺虫剤は、農薬と同じ成分であり、蚊でもユスリカでもチョウバエでも殺します。人が吸入すれば健康被害を受ける人もでてきます。
 メーカーは虫は殺さない、逃げるだけだから、環境にやさしい製品だといっていましたが、含有するピレスロイドは、蚊用殺虫剤としても使用されています。死なない程度の薬剤を暴露された蚊が次第に殺虫剤に抵抗性をつけていくことはないのでしょうか。虫よけ剤の問題点は、何も解決されていません。

   4月21日不快害虫用虫よけ剤についての要望


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作成:2015-03-30、更新:2015-04-25