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t28405#環境省、殺虫剤等の調査結果を公表(その1)製剤数だけで、出荷量なし#15-04
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【参考サイト】環境省:「平成18年度殺虫剤等に関する使用実態等調査業務」報告書
           平成26年度調査報告書H25年度調査報告

 農薬取締法や旧薬事法(現「医薬品医療機器等の品質有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)の適用を受けない殺虫剤等は、実態が明らかでなく、基礎資料すらないため、私たちは調査するようずっと求めてきました。
 その結果、「平成18年度殺虫剤等に関する使用実態調査業務報告書」を、私たちが手にしたのは08年のことで(記事t20605記事t20703記事t20804で報告)、その後、何の調査もなされていませんでした。
 私たちは、機会あるごとに環境省に毎年調査して公表するよう要望してきました。ようやく、今年(2015年)4月に「平成25年度殺虫剤等に関する使用実態調査業務報告書」が環境省のホームページにアップされ、同時に平成26年度の報告もアップされました。26年度の報告は入札が決まってから2か月ほどで公表されたことになります(記事t28205参照)。しかし、平成25年の調査は1年以上ほったらかしにされていたわけで、環境省の怠慢を責めたいと思います。
 また、入札状況調査をみると、平成18年、25年は一般財団法人日本環境衛生センターが落札していましたが、26年度の調査は一般財団法人化学物質評価研究機構が落札しています。
 しかも、その価格が環境衛生センターは753万6千円なのに対して、化学物質評価研究機構は350万円を示していました。同じ調査でも、半分でできるところもあるわけで、18年度、25年度はどうだったのか気になるところです。
 今号と次号で26年度の報告を主に25年度、18年度と比較しながら報告したいと思います。なお、ここでいう「殺虫剤等」は「農薬取締法、薬機法の適用を受けないものであって、環境中への飛散の恐れが高いもの」と定義されており、農薬も衛生害虫用殺虫剤も含まれていません。具体的にいえば、不快害虫用製剤、繊維害虫用防虫剤、シロアリ防除剤、家庭用カビ取り剤、鳥獣用忌避剤、非農耕地用除草剤等です。

★出荷量の調査なし
 26年度の調査は、@殺虫剤等の市場実態把握・整理、A殺虫剤等の製造実態の等の調査、B化学物質が使用された消費者製品の表示に関する実態把握、C消費者製品に関する事故等の整理、D専門家へのヒアリング、EEUと米国に関する殺虫剤等における安全性情報の表示について がなされたとあります。
 市場実態把握に関する調査は、約100社の製造業者へのアンケートをもとになされています。
 アンケートの内容は製品名、剤形、内容量、配合成分、対象種、使用場所などですが、18年度調査にあった国内への出荷量が25、26年度にはなく、そのために、18年度にあった出荷量は25年以降には不明になっています。どの成分がどれくらい市場に出ているかは非常に重要なデータですが、なぜ、調査しないのか理解できません。
 ちなみに、18年度の調査の出荷量で、もっとも多かったのは、パラジクロロベンゼンで、全体の83.8%の7031.3トン(PRTR統計16763トン)ありました。ついで、ナフタレンの453.9トンで、3位、4位のショウノウ、エンペントリンとともに、衣料用防虫剤の配合成分でした。(調査対象にハエ、カ、ゴキブリなどの衛生害虫駆除剤は入っていません)。
 こうした出荷状況が7年後にどのように変化したか、今回の調査では全くわかりません。

★激増した不快害虫用忌避剤
 26年調査のアンケートは不快害虫用殺虫剤、シロアリ等防除剤の取り扱いのある企業129社に発送し、有効回答数は47社とのことです。(18年度調査では、117社に発送し、60社から回答。回収率51.3%。25年度調査では、111社に発送し、61社から回答(回収率55%)。
用途別製剤数は表のようになっています。  18年度の総計が621、25年度調査が746、26年度が492とあり、そもそもの回答数が違うため、用途別でどのような変化があったのかははっきりしません。H26年は不快害虫用殺虫剤、忌避剤が287剤で58%を占めています。これには、最近問題になっている虫よけ剤も含まれるのでしょう。ユスリカ、チョウバエが対象のはずの不快害虫用忌避剤は18年調査では31剤であったのが、26年調査では138剤と激増しています。

★製剤の配合成分
 企業が回答した製剤の配合成分は203あり、これを整理したら120成分になったとのことです(25年調査では139)。うち農薬登録されている成分が39(25年調査では37)、薬機法で承認されている成分が26(25年調査では25)。農薬、医薬品等の承認がなく、いずれにも該当しない成分は、25年調査で88であったものが26年調査では66成分でした。これらの成分が、どこで、どのような毒性評価がされているかが、不明であることは、問題だと思います。たとえば、シロアリ防除剤に13剤あげられているIPBC(ヨウ素系の木材保存剤成分)、繊維害虫用防虫剤のボルネオール、不快害虫用忌避剤のモンフルオロトリンなどの毒性はきちんとわかっているのでしょうか。また、ハーブ系の製剤がいくつかありますが、ハーブだけでできているはずはなく、それ以外の配合成分は不明です。

★もっとも多かったのはエンペントリン
 全製剤の成分数で一番多かったのがエンペントリン(ピレスロイド系殺虫剤)で、46剤ありました。用途は不快害虫用殺虫剤、同忌避剤、繊維害虫用防虫剤です。H25年の調査で、44剤でトップだったペルメトリンは26剤に減り、同じピレスロイド系でも栄枯盛衰が見られます。

 以下にH26年度調査の用途別配合成分の上位10位までを示します。()は製剤数です。下線は、農薬(失効した物を含む)や医薬品関連の成分と同じもの。
・不快害虫用殺虫剤: 149剤
 ペルメトリン(17)、フタルスリン(16)、ピレトリン(16)、エトフェンプロックス(13)、
 フェノブカルブ(12)、シフルトリン(12)、ジノテフラン(11)、メタアルデヒド(11)、プラレトリン(7)

・不快害虫用忌避剤:138剤
 エンペントリン(31)、トランスフルトリン(30)、天然植物精油(26)、
 メトフルトリン(22)、コパイバオイル(8)、脂肪族カルボン酸エステル系(8)、
 香料(7)、プロフルトリン(5)、ディート(5)、レモンユーカリオイル(5)

・シロアリ駆除剤:100剤
 ビフェントリン(25)、IPBC(13)、クロチアニジン(10)、エトフェンプロックス(9)、
 フィプロニル(9)、イミダクロプリド(9)、ペルメトリン(8)、シプロコナゾール(8)、
 ジノテフラン(5)、チアメトキサム(5)

・繊維害虫用防虫剤:45剤
 パラジクロロベンゼン(20)、エンペントリン(13)、天然植物精油(7)、香料(4)、
 プロフルトリン(4)ボルネオール(3)、コパイオイル(1)、界面活性剤(1)、
 水酸化ナトリウム(1)

・鳥獣用忌避剤:33剤
 木酢液(6)、天然植物精油(5)、ナフタリン(4)、アリルイソチオシアネート(4)、
 *アリルイソチオシアナート(3)、タール(3)、硫黄(3)、ハッカ油(3)、天然植物成分(2)、
チモール(2)
    *アリルイソチオシアネート、アリルイソチオシアナートは別の成分として
     扱っているが、同じ物質の異名で、ワサビの辛味成分。

・家庭用カビ取り剤:16剤
 次亜塩素酸塩(12)、水酸化ナトリウム(4)、界面活性剤(3)、水酸化カリウム(2)、
 アゾール系(2)、ベンズアミノ系(2)、高分子ポリマー(2)、カルベンダジム(2)、
 香料(1)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(1)

・非農耕地用除草剤:11剤 
 グリホサートイソプロピルアミン塩(3)、銅化合物(2)、ペラルゴン酸(2)、酢酸(1)、
 DBN(1)、アンモニウム(1)、イソウロン(1)、シアナジン(1)、
 塩化アルキルジメチルベンジン(1)、塩化アルキルジメチルベンジンアンモニウム(1)

・コケ駆除剤、防腐防蟻剤:今回調査では回答なし
 判明しているのは成分名だけで、出荷量がないため、それぞれがどのくらい市場にでまわっているか不明です。
 前述のようにH18年度では、衣料防虫剤が一番出荷量が多かったのですが、同年の報告には、グリホサート系除草剤が1735トンあったと記されています。最近のホームセンターなどをみると非農薬系除草剤が山積みになっているので、もっと増えている可能性があります。また、薬機法承認のハエ・蚊・ゴキブリ・ダニなど衛生害虫用殺虫剤やディート系蚊忌避剤も身の回りで多くみられます。とくに、蚊対策の殺虫剤はピレスロイド系が主流で、同じ成分が、不快害虫用製剤にも転用されています。消費者庁が今年2月に、効果がはっきりしない、対象が蚊でないことを明記していないなどとして、メーカー4社に虫よけ剤の表示に関しての措置命令を出しましたが(記事28301参照)、製剤数の多さからも、ピレスロイド系の出荷量が気になります。
 環境省は調査するなら、H18年と同様メーカーへのアンケートに出荷量を加え、ホームセンターを調べるなど、もっと実態がわかるような調査をすべきと思います。
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作成:2015-06-27