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t28505#環境省、殺虫剤等の調査結果を公表
   (その2)除草剤に無登録があることを知らない消費者が八割#15-05

【関連記事】】記事t20605(2008年の記事)、記事t28205記事t28405記事t28605
【参考サイト】環境省:「平成18年度殺虫剤等に関する使用実態等調査業務」報告書
           平成26年度調査報告書H25年度調査報告

   記事t28405で、15年4月に環境省が公表した平成25年、26年度の「殺虫剤等*に関する使用実態調査業務報告書」のうち製剤の種類や使用成分について紹介しました。今号では、業者や業界団体、製品表示について、報告内容を見てみましょう。
 *注:殺虫剤等というのは農薬取締法にも薬機法(旧薬事法)の適用を受けないものであって、環境中への飛散の恐れが高いものとされ、具体的には、不快害虫用製剤、繊維害虫用防虫剤、シロアリ防除剤、家庭用カビ取り剤、鳥獣用忌避剤、非農耕地用除草剤などです。

★防除業者は3935社、業界団体加盟は3分の1以下
 H25年度の調査では、防除業者についてという項目があり、日本ペストコントロール協会(PCO)や日本しろあり対策協会(白対協)に加盟していない業者も含めた防除業者数は、各地の電話タウンページで調べたところ3935社だということです。そのうちPCO加盟:765(19.4%)、白対協加盟:682(17.3%)で、いずれにかに加盟しているのは、1169(29.7%)でした。PCO業者は、「建築物衛生法」により、ねずみや衛生害虫駆除を業務として都道府県に登録を行い、登録業者を名乗ることができますが、登録がなくとも営業は可能です。しろあり業者については、全く法規制がありません。そのためか、( )で示したように、協会加盟業者の比率は30%以下になっています。また、この調査では、農薬散布業者は対象となっていませんが、2003年の改定農薬取締法施行に伴い、それまでの防除業者の事後届出制度がはずされ、以後、防除業者の実態はわからなくなったことも念頭においてください。ちなみに、2001年の農薬関連の防除業者数は2万2763社でした。
 農薬も含めすべての防除業者の登録は法律できちんと義務づけておくべきです。

★業界の自主管理ルールなど  H25年には、日本ペストコントロール協会日本しろあり対策協会日本家庭用洗浄剤工業会生活害虫防除剤協議会の自主管理ルールやガイドライン等の調査が実施されていますが、業界資料のタイトルと頁数と簡単な内容の紹介があるだけで、どんな問題点があるかもわかりません。
 H26年は、前年になかった、日本エアゾール協会日本繊維製品防虫剤工業会日本植物調節剤研究協会が調査されていますが、エアゾール協会のものは、防水スプレーや冷却スプレーなどを主たる対象にした自主ルールです。
 農薬類似成分であるにも拘わらず、法律で定められていない自主管理ルールではいかほどの効果があるか、ヒトや環境への影響はどうかなども、消費者には伝わりません。家庭用化学物質による事故は、殺虫剤が毎年上位を占めていることを考えれば(記事t28503参照)、業界団体の自主管理ルールでは限界があることは明白ですが、環境省の内容のない報告をみても、具体的な改善策はでてきません。

★8割が知らなかった除草剤の規制
 除草剤には農薬登録されているものと、無登録のものがあります。主にグリホサートが成分の無登録の除草剤は農地では使用できません。つまり、栽培する植物の近くで使用してはならないことになっています。
 日本植物調節剤研究協会が実施した消費者の除草剤の使用実態に関する2回のアンケート調査結果では、農薬として使用できない除草剤があることを知らない消費者は8割ありました。また、知っていても、自分が使用した製品が登録品であるかどうか知らない消費者が3割あり、そのためか、店頭で登録、無登録除草剤が並べて売られていることについて「気になる」と回答したのが全体の6割とのことです。
 購入場所はホームセンターが8割弱で圧倒的に多く、購入頻度は年一回以上が半数を占めていたということです。
 また、使用場所について、花壇や家庭菜園が5割以上で、草花や作物の周辺で本来使用できない除草剤を使用していることがわかりました。報告では「除草剤への関心が高いと思われる『農薬登録認知者』の中で、かつ、商品のラベルを『よく読んだ』と回答している人においても、樹木や作物の近辺で除草剤を使用している点が確認された」と結んでいます。
 このような状況が確認された以上、環境省は、農水省と協力して無登録除草剤を早急に規制すべきです。

★化学物質規制の一元化を業界も望む
  日本化学品輸出入協会は、ヒアリング文書の中で、日本の化学物質が用途別の縦割り規制であることについて、国際ルールに従った化学物質管理制度を作る必要があるとして以下のように記述しています。
 『日本の化学物質規制の法律は、製品経由の摂取に対する規制と、環境経由での悪影響を防ぐ規制に大別され、その数は10を大きく上回る。しかも、所管する官庁も多いため、健康被害が顕在化した際に対応が遅れがちになるのではないか。消費者・生活者の製品安全や食品安全を確保するためにも、化学物質管理制度の一元化が必要だと感じる。』
 私たちは、用途別でなく、成分別に規制するよう、何度も関係官庁に要望していますが、農薬と同じように、欧米に殺虫剤を輸出しようとすれば、一元化が必要なことは、業界団体も考えているようです。

★消費者事故情報調査  目次に「消費者製品に関する事故等の整理」とあるので、独自の調査がされるかと期待したのですが、消費者庁のホームページにある事故情報データバンクシステム(「殺虫剤」で検索した結果)と厚労省の家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告(記事t28503)が調査対象になっただけでした。
 データバンクは事故にあった消費者が各地の消費生活センターに報告した20例を集めただけのもので、原因物質などは特定されていません。

★表示内容より、法規制が先決
 市販されている殺虫剤等の商品の表示についての調査があります。インターネットで調べ、日本、アメリカ、EUの表示項目が簡単に、比較されていますが、それよりも、欧米と日本との根本的違い−農薬や医薬品でない殺虫剤等には法規制がないこと−に、眼を向けることが第一です。
 農薬、家庭用殺虫剤等の区別がないアメリカでは、EPA(環境保護庁)所管のFIFRA(連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法)により、ヨーロッパでは、農薬指令と殺生物剤指令(その後殺生物剤規則となる)で、統合的に取締まられています。日本のように不快害虫用やシロアリ防除剤、衣料防虫剤、非農薬系除草剤などが、業界の自主規制に任かされ、無法状態になっているのと訳けが違います。
 除草剤成分のグリホサートの発がん性ランクをIARC(国際がん研究機関)が2Aに上げましたが(記事t28401)、カナダでは、早速、ラベル表示で、学校や住宅地などでのドリフトを最小にする/農業者には散布後12時間の立入規制/非標的生物への毒性など環境への影響を使用者に知らせる、などを求める案が出されており、農薬除草剤は取締まるが、同じ製品である非農薬系除草剤は、関係ないと、放置することなどあり得ません。

★法規制のない商品事例
 当グループには、法規制のない除草剤や殺虫剤についての問合せや情報が寄せられます。その中のいくつかを紹介します。

アース製薬:「雑草が生える前の脱草計画」】塩化ナトリウムと香料が配合成分です。「この除草剤は農薬として使用することができません。農作物の栽培・管理に使用すると罰せられます。」とありますが、食塩を撒けば、農作物も枯れるのはあたりまえ、それより、なんで、香料がいるのでしょう。
【アース製薬:「みんなにやさしい除草剤 おうちの草コロリ」】ペラルゴン酸 2.5%を成分とするスプレー式の製品です。ペラルゴン酸は自然界にも存在し、バレイショ、ラッカセイ、ノシバや非農耕地での雑草茎葉散布の除草剤として、日本たばこ産業が商品名「グラントリコ乳剤」で登録していましたが、事業撤退により2003年8月失効しました。それが、登録のいらない非農薬として復活しています。
住化エンバイロメンタルサイエンス:ユスリカ幼虫用殺虫剤「フルスター粒剤S」】ネオニコチノイド系のイミダクロプリドを成分とする粒剤で、水中に投入します。類似の農薬アドマイヤー粒剤1(イミダ1%含)がじゅんさい田のユスリカや水稲本田のツマグロヨコバイやウンカに適用があり、非標的のミツバチや水系生物、生態系への影響が懸念されます。
大日本除虫菊(キンチョウ)「コバエがポットン」、アース製薬:「コバエがホイホイ」住友化学園芸「ウイズット コバエこいこいポット」】いずれも、ネオニコチノイド系成分で、前2製品はジノテフラン、後者はクロチアニジンです。こんなものを台所などに置けというのでしょうか。
白元アース「ヨケリーナ虫よけプレート1年用」】ピレスロイド系のメトフルトリンを含む吊り下げ型のユスリカよけで、経営破綻した白元が、昨年、アニメキャラをいれて売り出した虫よけ剤「見た目に可愛いミクシング リラックマ」のデザイン重視のコンセプトを引き継いだものとのこと。

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作成:2015-07-27