街の農薬汚染にもどる

t28602#民家の樹木2300本にアブラムシ対策でネオニコ農薬散布〜青梅市からの回答#15-06
【関連記事】記事t28506記事t28704
【参考サイト】農水省:植物検疫に関する情報にある
           ウメ輪紋ウイルスの防除についてウメ輪紋ウイルスの関係情報
       青梅市:Top Pageウメ輪紋ウイルス(PPV)情報

 記事t28506で、梅輪紋ウイルス(PPV)が東京都青梅市の梅で感染が確認され、2009年から伐採などの対策がとられ、今年から媒介するというアブラムシ駆除の農薬散布が住宅地でも始まったことを報告しました。  当グループは、4月30日に、青梅市に住宅地通知を守っているかなどの質問を出しました。5月28日に回答が来ましたので内容を整理してお知らせします。なお、文中(  )は当グループのコメントです。

★住宅地での農薬散布について〜防除協力に法的根拠はない
 まず、青梅市が農薬散布を「消毒」と表現していることについて聞きました。回答は「ウイルスが梅の木にとって毒であるとの認識で消毒としたが、「農薬散布」の方が、より誤解のない言葉であるとのご指摘と承知しました。」とのことでした。
 住民に農薬散布への協力を求めているがその法的根拠は何かとの問いには、「防除 については、あくまでも「協力」であり、法的根拠はございません。散布したくない住民に対しては、農薬散布をしないことも含め、個別に防除方法を相談させていただいております」という回答でした。

★PPV宿主植物について
【参考サイト】木村康太さんの論文:
  ウメ輪紋ウィルス発生地域における媒介虫アブラムシ類の特定
【質問】強化対策地区(農薬散布をする住宅地)の民家や学校等の数は?
[回答]一般住宅が約4,000戸、学校が1校、保育園が2園、幼稚園が1園。強化地区内
  の学校、保育園、幼稚園については、宿主植物はない。

【質問】宿主樹木の種類別本数、伐採等処分した種類別本数、2015年に感染確認した
  本数を種類別に。
[回答]2015年現在、強化地区内の宿主植物は約3,200本。2009年以降2014年度までに
  青梅市内全域において廃棄処分した植物数は約31,000本。(種類別の回答はない)

【質問】今回農薬を散布した宿主樹木のうちアブラムシの生息が確認された樹木の本数、
  強化対策地区の自治会別に。
[回答]薬剤散布は、宿主植物にアブラムシが発生していることを確認した後に薬剤散
  布をしている。(本数を聞いているのにこれでは回答になっていません。)

【質問】梅の公園では、ウメを伐採した跡地に菜の花を植栽しているとのことだが、
  当該地の菜の花にアブラムシが生育していたか。また、発生した場合の対応は?
  農薬を散布した場合、散布月日と散布農薬名を。
[回答]強化地区内における薬剤散布の目的は、地区内のアブラムシをゼロにすること
  ではなく、アブラムシによるウメ輪紋ウイルスの感染拡大を防止することです。
  アブラナ科植物は、ウメ輪紋ウイルスの感染源とはならないと考えられているため、
  アブラナ科植物に発生しているアブラムシは、ウイルスを保持していないと考えら
  れます。このため、不必要な農薬散布を避ける観点から、防除は行っておりません。
 (アブラナ科に寄生するアブラムシはPPV媒介能力が高いという文献を示したので
  すが。菜の花のアブラムシが繁殖拡大、梅に飛翔してもいいのでしょうか。)
★農薬散布について
【参考サイト】バイエルアグロサイエンス:Top Pageバリアード顆粒水和剤(チアクロプリド30%)
【質問】住宅地での強制的とも見える農薬散布を始めたのはいつからか。
[回答]強制的な農薬散布は行っていない。市民の皆様は、「梅の里再生」を実現させ
  るために、強化対策にご協力いただいていると認識している。強化対策は、本年度
  から取組を開始した。

【質問】今回の散布に際して、住宅地通知の指導内容をどのように配慮したか。
[回答] 強化地区内の全戸に実施日時、散布薬剤名、薬剤散布にあたっての注意事項を
  記載したチラシを個別配布し周知するとともに、作業の際も戸別にご了解を得て実
  施している。強化地区内の学校等に対しても事前に周知している。
   薬剤散布時には、宿主植物の植栽状況や風向き等を踏まえ、適宜、ネットを使用
  するとともに背負い式の噴霧器で飛散低減ノズルを使用し、噴霧圧力を調整するな
  どの飛散防止措置を講じている。

【質問】散布委託防除業者名は? 業者委託に際しては、住宅地通知の散布者入札要件
  を遵守したか。
[回答]委託に際しては、農薬管理指導士等の資格を有している者の配置や、安全管理
  等について仕様として定め対応している。(業者とは随意契約だったことが判明)

【質問】安全確保はどうしているか。
[回答]散布時には、市の職員が同行し、安全確認を行っている。
  (散布後の立入禁止期間に回答はない)

【質問】農薬散布地域での散布件数は?
[回答]強化地区内全体で約2,300本。

【質問】使用農薬は?
[回答]今回使用した薬剤は、バリアード顆粒水和剤(登録番号:20618)。
  チアクロプリド30%の水和剤、希釈倍率は2,000倍。強化地区内全体について、
  4月21日から29日までの9日間で散布。

【質問】同剤は防護マスク、手袋、不浸透性防除衣の着用など使用上の注意があるが、
  守っているか。
[回答]散布業者には、「使用上の注意」を守るよう指導しており、散布時には、
  市の職員が同行し、安全確認を行っている。

【質問】散布中の各戸の安全確保は?
[回答]散布時には、市の職員が同行しており、安全確認を行っている。

【質問】使用農薬成分は劇物に指定されている上、ネオニコチノイド系農薬は水系を
  汚染し、土壌に残留し、非標的生物に影響を与えることが明らか。
  この農薬を選んだ理由は何か。
[回答]農薬取締法に基づく使用法を遵守することで、安全は確保されたと考えている。
  なお、現時点で、健康被害等の連絡は来ていない。

【質問】散布後の大気や水、土壌の環境調査や健康調査、生態系の調査を実施して
  いるか、なければ実施を。
[回答]調査は、実施していない。

【質問】広報に飛散防止にネットをかけるとあるが、その目的と実施方法は? 
  ネットを使用した散布件数は?
[回答]宿主植物の植栽状況や風向き等を踏まえ、適宜、ネットの使用を判断した。

【質問】ネット以外の飛散防止策は?
[回答]背負い式の噴霧器を使用し、噴霧圧力を調整するなど飛散防止措置を
  講じている。(住宅や対象外植物への飛散は不明)

【質問】アブラムシ対策としてデンプン製剤があるが、使用しないのはなぜか。
[回答]東京都で効果確認が行われた薬剤を使用した。なお、効果が十分でなかった
  場合は、追加散布を行う必要が生じるため、効果の確実な薬剤を使用した方が、
  農薬散布回数の削減には、望ましいと考えている。
(気門を塞ぐデンプン剤も登録されている。殺虫剤にたよると薬剤抵抗性も出現する)

【質問】農薬を使わない、ウメのアブラムシの防除・繁殖防止や駆除について、
  どのような方法を検討しているか。
[回答]やむを得ない場合は、宿主植物の伐採、新梢の切除等を提案しますが、
  宿主植物を損なうため、一般的な、対策とはなっていない。

【質問】広報では、「薬剤過敏症の方や薬剤の散布に不安をお持ちの方は個別にご相談
  させていただきます」となっているが、このような申し出があった件数は、何件か。
  また、届出人の個人情報の保護は、どのようにしているか。
[回答]個別訪問の際、10程度の申し出があり、個別に防除方法を相談。

【質問】住民からのクレームは?
[回答]数名の住民の方から、散布の際は安全に十分注意して散布するよう、
  ご意見を頂いた。
★防除経費について
【質問】緊急防除のため、費用は国が払うことになっているが、2009年以降の
  国からの交付金はいくらか。また、市も費用を負担しているか。
[回答]強化対策は、本年度から開始したため、交付金の交付実績はない。
  市独自の費用負担はない。また、個人的な防除に対する経費は支払わない。
★農水省の報告
【参考サイト】農水省:東京都青梅市による強化対策の実施状況(速報)

 6月10日公表の農水省植物防疫課による「青梅市による強化対策の実施状況(5月29日現在)」では、PPV感染木は下表のようで、感染が確認された158本のうち、119本について、青梅市が当面の感染拡大防止措置として枝の切除を実施、今後、東京都が伐採又は伐根を実施予定とのこと。
  地区名       調査植物数(園地数) 感染植物数(園地数)
  強化対策地区 3,305本(931園地)   158本(105園地)
   うち梅郷     775本(271園地)    56本( 33園地)
   うち和田町   629本(167園地)    19本( 15園地)
★アブラムシ駆除の農薬散布が必要か
 青梅市は、アブラムシ駆除によるPPV防除にどれだけ効果があるかも明確でないまま、9日間にわたって、住宅地域など775個所2321本にチアクロプリド製剤のみを散布、今後、アセタミプリドほかの散布を何回も実施するということです。
 住宅地通知に反し、民家の敷地に大規模な農薬散布をするのなら、健康調査や環境調査もすべきです。秋田県の松林でのネオニコチノイド散布では、翌年まで、土壌に農薬が残留していました。直ちに、地表土壌や被覆物、梅の葉などの農薬を調べる必要があります。
 また、アブラムシの根絶は不可能であり、市もそれを認めています。今回のような"はぐらかし回答"は止め、市民には、農薬の種類やアブラムシ対策のさまざまな手法についての選択肢を示すべきです。
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作成:2015-08-27