空中散布・松枯れにもどる

t29001#改定航空法で無人ヘリ農薬散布に届出を義務付け〜農水省 申請の簡素化を検討中#15-10
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記事t28902で報告したように、無人ヘリの使用について、航空法が改定されましたが、農薬散布が、具体的にどうなるか、さっぱりわかりませんでした。ここでは、農水省の説明会や航空法施行規則を改正する省令案へのパブコメについて、解説します。まず、改定航空法がどうなったか、その条文(太字は当グループ)をみましょう。

★無人ヘリに関する新条項
【参考サイト】首相官邸のHPにある審議会の頁:小型無人機に関する関係府省庁連絡会議にある農水省取組み資料(2015/12)
       国土交通省:航空法の一部を改正する法律案について報道発表(7/14)
             改定法の概要案文・理由
             無人航空機(ドローン・ラジコン等)の飛行ルールの頁

 いままで、法の対象外であった無人航空機を『航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うことをいう)により飛行できるもの』と定義されました。
 次ぎの3つの条文と違反の罰金の条文が新設・適用されることになりました。
 第百三十二条(飛行の禁止空域)では、1項で『航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるものとして国土交通省令で定める空域』、2項で『同省令で定める人又は家屋の密集している地域の上空』が飛行禁止となり、ただし書きとして国土交通省大臣が『航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認めて許可した場合』を除くとなっています。
 第百三十二条の二(飛行の方法)では、飛行可能な条件として6つのケースが挙げられています。すなはち、@日出から日没までの時間、A周囲の状況を目視により常時監視、B地上又は水上の人又は物件との間に国土交通省令で定める距離を保つ、C祭礼、縁日、展示会その他の多数の者の集合する催しが行われている場所の上空以外、D爆発性又は易燃性を有する物件その他人に危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれがある物件で同省令で定めるものを輸送しない、E同上の物件を無人航空機から物件を投下しない』、とされ、ただし書きで、これ以外の飛行の方法には、国土交通大臣の承認が必要となっています。
 第百三十二条の三(捜索、救助等のための特例)−省略−

 写真撮影と異なり、農薬散布の場合、上記の太字部分が特に問題となり、国土交通省大臣の許可や承認が必要となるわけです。なお、改定法施行規則案では、機体重量25kgを境に、適用事項が違いますが、25kg以上が単一ローター型無人ヘリ、未満が複数の小型ローターをもつドローン型が該当すると想定されます。両者の仕様が下表のように異なるのに、農水省は、無人ヘリ用として登録された農薬は、いずれで使用しても違法ではないとしていることには、疑問がわきます。
   表 無人ヘリコプターの仕様例
   無人ヘリ型    ドローン型 ローター型
   総重量(kg)    25以下    100
   ローター数     小型複数個 大型1個
   全長(含ローターm) 1.2-1.7   3.6-4
   エンジン       電池     ガソリン等5L
   飛行航続時間(分)   短(10数分)  長(60分以上)
   散布液積載(kg)  少い(3-7)   多い(24)
   散布速度(m/秒)  3-8      5.5
   散布高度(m)    低い(1-3)  高い(3-4)
   散布幅(m)     狭い(3.5)  広い(5-7.5)
   価格(万円)     80-100    1000-1500
★農水省説明会〜申請制度で許可は容易に
【参考サイト】農水省:「航空法の一部改正に伴う農薬散布等の無人航空機の利用に関する説明会」の開催及び参加者の募集について

 10月2日、農水省植物防疫課主催で「航空法の一部改正に伴う農薬散布等の無人航空機の利用に関する説明会」が開かれました。
 航空法改定で無人ヘリやドローンによる農薬散布をどうするか、この説明会で、現在使用されている無人ヘリコプターも含めて、国交省の許可をうけなければならないということが、明白になりました。
 農水省が対応方針を決めることは、はっきりしていますが、具体的内容は、航空法施行規則を決める省令案が決まってからになるでしょう。

【農水省から】
 消費者安全局長の話の要旨は、
『官邸にドローンが落下した後、省庁の連絡会議ができ、6月に小型無人航空機の骨子 ができた。すべての無人航空機が規制対象で、農薬、肥料の散布、播種なども許可を受 けることになった。農薬散布が確実に実施できるよう手続きが過剰にならないよう国交 省と話し合い中である。農薬散布にドローンも使われ、利用も高まっている。農林水産 航空協会と運航基準などを練っている。』

 農水省は、現在主流の100kg級の無人ヘリをさらに大型化し、一度に農薬の散布液をより多く積載できる150kg級の機種の開発を進めていますが、今まで、何の法的規制もなく突っ走ってきた無人ヘリ農薬散布を、国交省が航空法で許可が必要になったことに伴い、火事場泥棒のように、ドローン型での農薬散布も推進しようとしています。4月に発出された植物防疫課長の事務連絡では、ドローンでの散布に@対象作物への確実な散布や安全飛行が確認されていない、A農薬の飛散や残留基準オーバーの恐れ、B作業者や一般市民への事故等の可能性をあげ、調査依頼をしていたのに、それが一変して、「小回りが効き、中山間地域の狭い農地や生産者の高齢化対策として利用できる。」というドローン業界の言い分をそのまま取りいれたような農薬散布奨励に変わってきました。

【国土交通省から】
 航空局安全企画課は、『ドローンでの事故が相次いだため、緊急措置として、@許可を必要とする空域、A飛行の方法を決めた。改定航空法は12月10日までに施行する』として、改定法のルールの説明をしました。
 また、無人航空機は『活用して社会に役立てる。その中で支障がでてはいけないのでバランスが大事。許可は一回づつだと煩雑なので、飛行させる個人ではなく、飛行させる人がまとめて申請できるようにする。代行可。同一の申請者が同じように飛行する場合、まとめてもよい。90日以内も可。』などと農水省をバックアップする発言をしました。

★農林水産航空協会に検討会設置
【参考サイト】農林水産航空協会:Top Page
          「平成27年度ドローン等小型無人機による農薬散布調査委託事業」における協力企業の募集について
          ( 協力企業の募集について(10/23)と申請書
 農水省は、いままでの無人ヘリコプター利用技術指導指針になかったドローン型について、その安全対策や運航基準を策定する必要がでてきました。また、国土交通省への無人ヘリの許可申請についても、その簡素化が大事だと考え、本人申請だけでなく、代行者による申請や包括申請を念頭においています。
 すでに、農林水産航空協会が検討会を設置し、本年度中に、単一ローター型とドローン型無人ヘリについて、農薬散布に関する指導指針等の内容変更を進めるとのことです。 そのための調査事業を実施するとして、同協会は、10月23日〜11月5日の間、協力するドローン会社の募集を行っています。

★国土交通省へのパブコメ意見の概要
【参考サイト】国土交通省:航空法施行規則の一部を改正する省令案等に関する意見募集について
              改正省令等許可・承認の申請・審査要領案(別紙)施行規則付属文書
 国土交通省から航空法改正に伴う同法施行規則の案がだされました。私たちのパブコメ意見は【総括意見】と【個別意見】、【参考資料】の3部構成ですが、個別意見を中心にその概要を以下に示します。
   反農薬東京グループのパブコメ意見
     国土交通省:11月17日公表のパブコメ結果別紙 ご意見の概要及び国土交通省の考え方概要比較表
   官報11月17日:航空法施行規則の一部を改正する省令
          無人航空機による輸送を禁止する物件等を定める告示p5p6



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作成:2015-11-01、更新:2015-11-17