街の農薬汚染にもどる
t29004#11月にアブラムシ駆除の農薬散布予定〜青梅市発表PPV対策で住宅地#15-10
【関連記事】記事t28506、記事t28602、記事t28704、記事t29104
【参考サイト】農水省:植物検疫に関する情報にある
ウメ輪紋ウイルスの防除について、ウメ輪紋ウイルスの関係情報
強化対策の頁にあるH26年3月の第二回検討会概要
東京都青梅市による強化対策の実施状況(速報)(6/10)
青梅市:Top Page、ウメ輪紋ウイルス(PPV)情報
石原産業:Top Page、ウララDFとチラシ、MSDS
梅やモモ、プラムなどに被害を与えるというプラムポックスウイルス(PPV=梅輪紋ウイルス。以下「PPV」)による梅の感染が明らかになったとして、国、東京都、青梅市は、感染樹の伐採などを行ってきました。さらに、今年4月、青梅市の住宅地(約4,000戸)で、PPVを媒介させるアブラムシ駆除のためとして、バリアード顆粒水和剤(ネオニコチノイド系チアクロプリド30%含有)を775個所2321本に散布しました。
この件については、記事t28602、記事t28704で報告しましたが、青梅市では再び11月2日から10日まで、住宅地で農薬散布が実施されようとしています。11月の散布農薬はウララDF(フロニカミド10%含有)とのことです。
この農薬のADIは0.073mg/kg体重/日で、アセタミプリド並ですが、マウスを用いた発がん性試験で、肺腺腫、肺がんが認められたが、非遺伝毒性メカニズムとされています。また、ラットの発生試験では、胎仔に頚肋骨の発現頻度の上昇、ラットを用いた2世代繁殖試験においては、親動物で卵巣比重量減少、児動物の雌で子宮比重量減少及び性成熟遅延が認められたが、繁殖能力に悪影響を与えるほどものでないと評価されています。浸透性や残効性が高いため、残留基準は、茶40、コマツナ、チンゲンサイなど16、レタス15各ppmと高く設定されています。その点ではネオニコ系農薬と同じようなものです。(農薬評価書−第五版。残留基準と2014年のパブコメ意見)
★青梅市などへ散布中止の要望
当グループは、10月6日に以下のような要旨の要望と質問を青梅市と農水省植物防疫課に提出しました。
青梅市への質問・要望と回答:4/30、10/06、10/19、10/31
農水省への質問と回答;10/06(回答は10月28日)
【質問1】PPV感染樹について
@5月末以降、伐採された感染樹木数。
A農水省による第二回感染状況調査(6月1日から)、第二回感染状況調査(8月17日から)の結果。
【質問2】アブラムシの発生状況と感染力について
@5月のチアクロプリド製剤の農薬散布前から、現在に至るアブラムシの繁殖数の推移。
A発生したアブラムシのうち、有翅型の比率はどの程度か。アブラムシごとの推移。
B秋の農薬散布を前に、実施されたアブラムシ生息調査結果。
C最近5年間のアブラムシの発生状況を、種類、有翅型の比率。
D本年のアブラムシの発生状況は、アブラムシ対策のチアクロプリド製剤使用により、
どの程度抑制されたか生息数、有翅型の発生比率などで示してほしい。
E春と秋のアブラムシのPPV保持比率は、それぞれどの程度か。
【質問3】秋のアブラムシ駆除農薬
@11月からのアブラムシ対策に、ネオニコチノイド系農薬を使用しないとの話があるが、
どの成分の製剤を使用しないのか。その理由とともに明らかにしてほしい。
A今後、アブラムシ対策にどのような農薬の使用を計画しているか。
Bデンプン系や界面活性剤系農薬の使用や農薬散布以外の方法は検討しているか。
CPPVは海外からはいってきたウイルスと聞いているが、外国では、どのような
方法で、感染を抑制しているか。
【要望】アブラムシ駆除のために、樹木等に農薬を住宅地域で散布することは、農水省・
環境省通知「住宅地等における農薬使用について」の趣旨に反します。
PPV対策としての、アブラムシ駆除の効果が明確でないまま、試験もせず、また、
環境調査や健康調査も実施せず、いきなり、広範な住宅地域で、一斉農薬散布を実施す
ることは、やめるべきです。
ウメ等のアブラムシに適用される農薬には、下記のように神経毒性を有するものが多く
(有機リン、ネオニコチノイド、ピレスロイドなど)、人の健康被害が懸念されるため、
その摂取を出来るだけ減らすためにも、安易な農薬散布の中止を求めます。
この質問に対して、青梅市は、農薬は登録された農薬なので安全性に問題はないと回答しています。それ以外の質問に対しては、国に問い合わせているが、10月16日のPPVの検討会の後で回答するという中身のない回答をしてきました。そこで、国の検討会が終わった時点の10月19日にもう一度、質問と農薬散布中止の要望を出しました。回答はまだありません。青梅市や関係機関への聞き取りなどで疑問はふくれるばかりです。
★PPV対策への素朴な疑問
【参考サイト】東京大学植物病院:Top Page、PPV検出キット(09/07/27))
東京大学・農学生命科学研究科プレスリリース(09/04/08)
植物防疫所:Top Page、特定重要病害虫検疫要綱
虫ナビ:カメムシ目ヨコバイ亜目にあるアブラムシ特集
PPV問題の経緯ですが、2008年6月、青梅市の生産者から東京農業振興事務所に梅の病気の葉が持ち込まれました。2009年3月、東京大学植物病院が日本では検出されたことのないPPVであることを確認しました。
同病院は「PPVはモモ、スモモ、アンズなどのPrunus 属(サクラ属)の植物に広く感染する重要なウイルスであり、1915年にブルガリアのプラム農家において最初に発見された。その後、欧州全域、アジアの一部、北米、南米などでも発生が確認されている。PPVは果樹を枯死させることはないが、感染後、年月の経過とともに、果実の収量および品質の低下をもたらすことが知られている。」と説明しています。
つまり、感染後、徐々に樹勢が衰えていくということらしいです。しかし、梅への感染が発見されたのは世界で日本が初めてであり、どの程度の被害がでるのか、まだはっきりしません。今までの行政の説明では、葉に輪紋ができるということだけです。梅は果実が完熟するまで木にならせておかないので、なおさら、はっきりしたことはわかりません。
しかし、PPVは、農林水産省の「特定重要病害虫検疫要綱」で、輸入植物を介した侵入を特に警戒している植物ウイルスの一つとなっていたため、農水省は植物防疫法で決められている「国内緊急防除」を実施することになりました。以後、国の主導による蔓延対策がとられるようになりました。費用はすべて国が負担します。
★感染させるのはアブラムシ?
【参考サイト】農研機構:プラムポックスウイルスの発生に対応した緊急研究の成果(2010/04/22)
ウイルスを殺すことはできないので、感染対策としては、感染源を断つしかないとのことです。PPVはアブラムシが媒介するほか、汚染した苗木や接木を経由して感染する。ただ生果実は感染経路とはならないとされています。
結局、感染樹の伐採、抜根、移動禁止以外は、農薬によるアブラムシ駆除しか方法はないとのことです。しかし、アブラムシを根絶するのは不可能で、それは国も市も認めています。ではなぜ、住宅地で農薬散布をするのかと聞くと、アブラムシを減らせば、感染も減るというのですが・・
アブラムシは春に卵から生まれますが、それは全部雌です。生まれた雌は、交尾することなく胎生で次々と直接子虫を産みます。その子虫がまた直接子虫を産むという具合に増え続け、ある時期になると翅のある虫が現れ(有翅型)、飛び立ちます。これであまり動かないアブラムシが他の草木へ移動するわけです。この距離は500mと言われています。なぜ翅の生えたアブラムシが出現するのか、詳しいことはわかっていません。
★1時間しか感染能力がない
しかも、アブラムシがPPVを感染させることができるのは自分が感染してから1時間から数時間の間とされています。何故そうなるのか原因は不明だそうです。もし、アブラムシが体内でウイルスを殺しているのなら、その物質を特定することのほうがずっと効率的ではないかと思われますが。こんな不安定な感染源を、しかも絶滅させることはできないとわかっているアブラムシ駆除に、住宅地での農薬散布をさせていいのでしょうか。
そもそも、PPVは、梅の木のどの部分にいるのでしょうか。ウイルスがどれくらいの割合になれば発病するのか。また、どのくらい繁殖すれば木のどの部分にどのような被害が出るのか。季節変動はあるのか、質問しても回答はありません。
★フィールドでの農薬散布の効果も不明
今年4月に実施された青梅市の強化地区での農薬散布の効果はどうだったのでしょうか。農水省や青梅市に聞いても、まだ結果が出ない、10月の対策会議で発表するとのことでした。しかし、効果があったかどうかはっきりしないうちに、既に青梅市は11月の農薬散布を決め、「広報おうめ」で公表しています。対策会議で年2回のアブラムシ駆除農薬散布が決められているからでしょう。
4月に住宅地で散布された農薬は、ネオニコ系のチアクロプリド剤でしたが、青梅市は、東京都の防除基準から選んだといっています。そこに掲載されているアブラムシの気門封鎖作用のあるでんぷん系の農薬などについて検討したのでしょうか。通知「住宅地等における農薬使用について」を守ろうと思ったら、少なくとも効果調査くらいはやるべきです。最初から、神経毒のある農薬しか考慮してなかったのではないでしょうか。
★環境調査をやるべき
周辺の他の植物で繁殖したアブラムシがウメなどの感染樹木に飛んできた場合は、二次感染させることはないかの調査も必要です。また、農薬を住宅地で大規模に散布する場合、住宅地通知を遵守したうえで、飛散量、大気汚染、土壌、河川水などの調査をすべきではないでしょうか。
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作成:2015-12-28