空中散布・松枯れにもどる

t29201#改定航空法12月10日より施行〜国土交通省はドローンによる農薬散布禁止意見を無視#15-12

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【参考サイト】首相官邸のHPにある審議会の頁:小型無人機に関する関係府省庁連絡会議にある農水省取組み資料(2015/12)
       国土交通省:無人航空機(ドローン・ラジコン等)の飛行ルールの頁
           無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン
           無人航空機に関するQ&A無人航空機に係る規制の運用における解釈について
       パブコメ:航空法施行規則の一部を改正する省令案等に関する意見募集について
        反農薬東京グループのパブコメ意見11月17日公表のパブコメ結果
        別紙 ご意見の概要及び国土交通省の考え方概要比較表

 ドローン型無人ヘリコプターの使用を認知する改定航空法が、10日から施行されました。警視庁は、許可・承認を得ず侵入したドローンを網で捕獲する大型迎撃ドローンのデモフライトを行いましたが、農薬散布の100kg級の無人ヘリなどを捕らえることを本気で考えているのでしょうか。
 法施行前、10月実施の「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」(以下、要領という)原案についてパブコメ意見募集結果が、国交省から公表されました。(本文中*印は当グループのパブコメ意見に [理由]記載)

★恣意的なパブコメ意見の公表
 国交省の発表では、パブコメ意見は222の個人・団体等から622件の意見があったそうです。内容別件数は、下表−省略−のようです。
 通常、パブコメ意見については、原案に対する賛否意見や質問に担当省庁からの回答・見解を併記したものが公表されます。今回、国交省が示したパブコメ結果及び審査要領(原案が97個所修正されている)を見ると、ドローン型を含む無人航空機の使用を規制するといいながら、提出された意見内容の開示は恣意的になされ、同省案よりも厳しい規制を求めた意見は、完全に無視されていました。以下に、主な問題個所を紹介します。

★国による機体や操縦者管理は今後検討
 私たちが提出した総括意見内容をも含む、機体登録・機体検査・免許制度を導入/安全を管理する仕組みを導入/事故報告を義務化/保険加入を義務付等については、『頂いたご意見については、今般の意見募集の対象ではありませんが、 本年 12 月 10 日の改正航空法施行後も、技術の進歩や利用の多様化の状況等を踏まえ、関係者との十分な調整の上で、無人航空機の機 体の機能や操縦者の技量の確保等を図るための方策について検討を加え、必要な措置を講じることとしており、その際の参考にさせて頂きます。』との回答でした。
 喫緊の問題は、現に多発している事故防止なのに、なんとも、無責任な言い分です。

★飛行禁止空域拡大 ×
 国交省の法改定の目的は、無人航空機の不具合等による落下により、人及び物件に対して危害を及ぼす蓋然性が高くなるため、人家密集地域等や地上の人及び物件等の安全が損なわれるおそれがある場合について、飛行禁止空域を定め、そこでは、許可・承認を得ねばならないとすることです。
 農薬散布の場合、無人ヘリが墜落したり、架線事故を起こさないことはもちろんですが、後述のように危険性の高い農薬を積載かつ投下しているので、10件の理由*1を挙げ、ドローンの農薬散布を飛行を禁止すべきだと主張しましたが、意見は、開示された結果のどこにも掲載されていません。
 国交省は『地域の実情や無人航空機に対する様々なニーズがあること等を踏まえ、地方公共団体から要望を聞き取り、人又は家屋の密集している地域から除外を希望する場所がある場合には、無人航空機の飛行による危害の発生を防止するための安全確保措置を講じていること等を条件として、この場所を上記の地域から除くことも検討しています。』として、なんとか、条件付きで、無人航空機の利用を拡大する算段をしているのです。
★農薬散布の申請簡素化反対 ×  パブコメで一番多かった意見は、許可・承認申請に関する事項でしたが、私たちが提出した『農薬散布の計画内容は、HP等で国民に開示する/代行者による一括申請は行わない*2/包括申請の期間を限定化する*3』などは、意見の開示もなく、許可内容の公表について『業務等に支障がある場合は、公表することはありません。このため、非公表としたい場合は申請時にご相談ください。』と答えるのみです。

★安全距離拡大 ×  農薬散布で、緩衝地帯の設置を求める私たちの意見は受け容れられず、審査要領は、原案通り『無人航空機と地上又は水上の人又は物件との間に保つべき距離を、30mと定めること』と決まりました。国交省は、安全距離を地上又は水上の人又は物件と衝突することを防止するためとしており、農薬の飛散による非対象作物の危害、人や環境に対する影響は考えていません。このことは、国交省の次ぎのような解釈例に表れています。<>は事務局のコメントです ・「人」とは、無人航空機を飛行させる者及びその関係者(無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)以外の者をいう。
<農薬散布者や補助員との距離には適用しない>
・「物件」とは、自動車、鉄道などの車両、ビル、住居、工場、倉庫、橋梁、高架、水門、変電所、鉄塔、電柱、電線、信号機、街灯 等で、無人航空機を飛行させる者及びその関係者が所有又は管理する物件以外のものをいうとされ、さらに、田畑用地及び道路、堤防、鉄道の線路などの土地、樹木、雑草 等の自然物は、本規定の距離を保つべき物件には該当しない。
<散布者の所有・管理物との距離に適用しない。農薬散布の安全距離とは別問題ということ>

★ドローン型の農薬散布禁止要求 ×
 『ドローン型を含む25キログラム以下の無人航空機での農薬散布を推進すべきでなく、拙速な使用認可をやめ、禁止すべきである。*1』という意見も無視されました。
国交省が農薬散布で明確にしたのは、
「危険物の輸送の禁止」の項で、『これらの物件を輸送する無人航空機が墜落した場合や輸送中にこれらの物件が漏出した場合には、周囲への当該物質の飛散や機体の爆発により、人への危害や他の物件への損傷が発生するおそれがある』とし、危険物に農薬が該当するとしていること。また、「物件投下の禁止」の項で、『水や農薬等の液体を散布する行為は物件投下に該当する』としていることぐらいです。

 いずれにせよ、今後、農水省が農林水産航空協会とともに作成する農薬散布の運用指針に、眼を光らせていかねばなりません。

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作成:2015-12-28