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t29402#無人ヘリコプター空中散布の新指導指針と通知〜拙速なドローン認定より法規制強化を#16-02
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【参考サイト】首相官邸のHPにある審議会の頁:小型無人機に関する関係府省庁連絡会議にある農水省取組み資料(2015/12)
       農水省:無人ヘリコプターに関する情報
           空中散布等における無人航空機利用技術指導指針
           空中散布等を目的とした無人航空機の飛行に関する許可・承認の取扱いについて(両局長通知)
       国土交通省:無人航空機(ドローン・ラジコン等)の飛行ルールの頁
             無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領概要
             無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン
             無人航空機に関するQ&A無人航空機に係る規制の運用における解釈について
       農林水産航空協会:産業用無人航空機運用要領
           新たな農林水産業用回転翼無人航空機の利用に関する検討会の中間とりまとめ
           「マルチローター式小型無人機による農薬散布の暫定運行基準取りまとめ」

             農薬散布に使用される無人ヘリコプター等について、昨年9月に航空法の一部が改定され、12月10日から施行されました。この間に、パブコメを経て、11月17日に「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」(国空航第684 号、国空機第923 号。以下審査要領)が制定されました(記事t29001記事t29201参照)。
 さらに、農薬散布については、12月3日に、農水省消費安全局長による「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」(27 消安第4545号。以下新指針という)と、農水省消費安全局長及び国交省航空局長による「空中散布等を目的とした無人航空機の飛行に関する許可・承認の取扱いについて」(国空航第734号、国空機第1007号、27消安第4546号。以下両局長通知という)が発出されました。
 私たちは、上空を飛ぶ無人航空機が機体の不備や操作ミス、飛行場への侵入などで事故を起こさないことだけでなく、高濃度で、高い位置から、広い範囲に、短時間で農薬を空中散布することによるによる対象外作物への飛散、自然環境・生態系や生活環境・ヒトの健康への影響を防ぐことが重要だと考えて、いままでも、法規制の強化を求めてきました。

★農薬空散は申請しないと罰金50万円
 改定航空法では、@許可が必要な飛行空域とA承認が必要な飛行方法が決められ、無人航空機の使用者は国交大臣に申請することが義務づけられ、大臣の許可や承認がないまま飛行すると罰金が科せられることになります。無人航空機を使い、危険物である農薬を田・畑に投下する農薬空中散布は、Aに抵触すると、「無人航空機の飛行等に関する罪」で50万円以下の罰金です。
 いままで、無人ヘリコプター散布は、農薬取締法に基づく「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」で、適用のある食用作物に、空散登録のある農薬を、定められた希釈濃度、散布時期、散布回数、使用量を遵守しさえすれば、個人が勝手に、どんな無人航空機で、散布しても、それを止めることが出来ませんでした。今回の申請義務付けで、なんとか、法規制の緒についたわけですが、まだ、まだ、不十分で、今後とも、法規制の強化を求めて行きたいと考えます。ともあれ、新たな指導指針に主眼をおいて、内容を紹介します。

★新指導指針
 無人ヘリコプター利用技術指導指針から、無人航空機・・・と名を変えています。これは、ドローン型も対象としたためです。
 指針にでてくる散布関係者は、防除実施者、実施主体、都道府県協議会、地区別協議会、オペレーター、ナビゲーターなどです。旧指針にあった無人ヘリコプター協議会は消え、都道府県協議会となりました。また、オペレーターは旧指針では、無人ヘリコプターを操作する者とされていたのが、新指針では『農林水産航空協会(以下「農水協」という。)から安全かつ適正な空中散布等が実施できる技術や知識を有する旨の認定を受けた者』となりました。
 第3[関係機関の役割]では、都道府県協議会、地区別協議会、農水協のほか、都道府県や農水省植物防疫課が、それぞれが担う役割について記載されています。
 前2つの協議会は、都道府県レベルと市町村レベルの違いがありますが、ほぼ同じ役割で、空中散布実施、事故情報、実施主体による周辺住民への事前周知の補完などを行います。
 農水協も従来と変らず、@散布技術や知識等を習得するための教習体制を整備し、必要な教習を実施し、オペレーターとして認定すること(運用要領の改定で 1又は2ローターの無人ヘリには「無人ヘリコプターオペレーター技能認定証」、3以上のローターを有するドローン型には「産業用マルチローターオペレーター技能認定証」を機種ごとに交付)。A無人航空機及び散布装置を機体ごとに登録、農水協認定の整備事業所で行った定期点検内容を確認し、その証明をすること。B実施状況や事故に関する情報の収集等による実態把握、都道府県及び地区別協議会、実施主体等への情報提供が役割として記載されています。

★第4[空中散布等の実施]は殆ど新設
 旧指針「空中散布等の実施に当たって遵守すべき」の表題がかわり、「実施計画」という名称は「事業計画書」になりました。
 計画書は実施主体が作成し、実施主体名(防除業者、実施者名)/オペレーター名・認定証番号/機体登録番号/市町村名/実施予定日/実施日数/作物名/実施面積/農薬名/散布量/機体数を記し、空中散布等を実施する月の前月末までに、空中散布等の実施区域内の都道府県協議会に提出し、協議会は内容チェックの上、都道府県や農水省植物防疫課に提出、農水協には写しを提供します。なお、実施後の散布実績を示した事業報告書の提出先も同様です。
 旧指針にはありませんでしたが、空中散布による蜜蜂被害防止のため、都道府県協議会には、県農政担当⇒畜産担当ルートで養蜂家に散布情報の提供が求められました。
 また、航空法に基づき許可・承認が必要な申請書は、後述の両局長通知に基づき、飛行開始予定10日前までに、国交大臣に提出するようになっています。
 申請は、実施主体だけでなく、農水協、都道府県協議会等が代行申請することができますし、教習飛行や点検整備の飛行は、教習施設や整備事業所が申請することもできます。

★事前周知や空散方法は旧指針のまま
 事前通知や空中散布等の方法の取り決めは、旧指針と殆どかわりません。
 たとえば、『実施区域及び実施区域周辺にある学校、病院等の公共施設、居住者等に対し、あらかじめ空中散布等の実施予定日時、区域、薬剤の内容等について連絡するとともに、実施に際しての協力を得るよう努めること。特に、学校、通学路等の周辺で実施する場合は、実施日及び実施時間について十分調整すること』とされていますが、こんなことは、10年以上も前から指針にあります。しかし、単なる努力規定であるため、実施されているとはかぎりません。散布計画の周知を義務化する必要があります。
 また、散布方法には、『空中散布等の基準は、別表2のとおりとすること。農薬を散布する場合にあっては、農薬取締法に基づき無人ヘリコプター散布用として登録を受けた剤のみを使用し、使用上の注意事項を遵守して使用すること。』とありますが、別表に掲載されている無人航空機は10機種すべて従来型無人ヘリコプターで、ドローン型はありません。すなはち、このままでは、ドローン型は使用できないのですが、ザル法の常で、これは努力規定にすぎません。今後、機種が追加されることがあっても、表にない機種を法的に使用禁止することはできず、航空法の運用で、別表にない機種の飛行を承認しないようにする以外はありません。
 ドローン型を拙速に認可するより、農水協任せの現行を改め、法規制をもっと強化する方が先決です。

★危被害防止対策も変らない
 農薬空散による危被害防止対策が7つ列挙されていますが、これも旧指針とほぼ同じです。合図マンという呼称をナビゲーターに変更したほか、『実施主体は、当該地図を保管し、次回以降の防除実施者に確実に引き継ぐこと』が追加されていますが、地図を公表するとはありません。
 危害防止のために、私たちは、農薬飛散による被害(対象外作物や有機農産物への飛散、自然環境や生活環境の汚染、生態系やヒトの健康への影響など)を起こさないように、禁止地域や緩衝地帯を作ることを求めていますが、これも実現していません。

★このままでは事故防止につながらない
 無人ヘリコプターの事故は2013年36件、14年49件と多発している上、ドローン型の事故も数々報道されています(中には、搭載した動力用電池に使われた可燃性電解物質による火災もあり)。新指針には、第5[事故発生時の対応]の項があり、旧指針の4項目が7項目に増えました。これは、事故報告書の提出先が、都道府県協議会、都道府県、農水省植物防疫課、農水協、国交省運航安全課などになったためで、肝心の報告すべき事故は、軽微なものを除くとなったままで、事故原因の調査や事故責任のある実施主体や散布者の処分規定もありません。せめて、次節の国交大臣への申請書には、実施主体や機体やオペレーターの事故履歴記入欄をつけるべきでしょう。

★両局長通知について
 無人航空機の飛行の申請、許可等(許可と承認を含む)に関するのが両局長通知で、審査要領が適用されるとして、申請/許可等の手続き/許可等の基準への適合性の確認/その他に分けた記述があります。
 申請には、氏名・住所の次ぎに農薬散布のため、危険物輸送、物件投下を行う旨のチェックをいれ、飛行日時や飛行経路・高度、無人航空機機能・性能(本体と操縦装置のメーカー、名称、重量等、仕様がわかる資料)、飛行経歴や飛行のための知識・能力、安全確保体制に関する事項などの記載が求められます。
 申請内容の適合性が確認されると、許可等期間1年を限度として、許可・承認書が与えられます。そこには、許可及び承認事項/許可等の期間/無人航空機/無人航空機を飛行させる者/条件が記載されています。これらは国交省に提出するもので、農薬の具体的な散布計画は前述の農水省指針により、農水省関係者が知るだけです。
 私たちが、申請に対して求めるのは、事故防止のため、許可承認を厳しくすること、許可承認を与えた場合、散布計画の公表を義務付け、事故の場合の責任者を含め、その原因調査結果を公表すべきことです。

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作成:2016-03-31