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t29502#ドローンによる農薬空中散布の『暫定運行基準』策定へ#16-03
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【参考サイト】農水省:3月9日の説明会と全国農薬協同組合HPにある配布資料
農林水産航空協会:定款、社員名簿、産業用無人航空機運用要領(2015/12/03)
新たな農林水産業用回転翼無人航空機の利用に関する検討会:中間とりまとめと
「マルチローター式小型無人機による農薬散布の暫定運行基準取りまとめ」
国土交通省:無人航空機(ドローン・ラジコン等)の飛行ルールの頁
無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領と概要
無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン
無人航空機に関するQ&Aと無人航空機に係る規制の運用における解釈について
首相官邸のHPにある審議会の頁:小型無人機に関する関係府省庁連絡会議にある農水省取組み資料(2015/12)
昨年12月、航空法が改定され、無人航空機*で農薬散布をする場合、事前に国土交通大臣の許可・承認が必要になりました。農水省は従来の「無人ヘリコプター利用技術指導指針」を廃止し、16年12月3日付で「空中散布等における無人航空機*利用技術指導指針」(ガイドライン)と「空中散布等を目的とした無人航空機の飛行に関する許可・承認の取扱いについて」(両局長通知という)を制定しました。(*注:無人航空機:従来型の無人ヘリコプターとマルチローター式小型無人機(以下ドローンという)を意味する)
農水省と国交省は、このガイドラインは農薬空中散布等の安全対策が十分に盛り込まれているため、ガイドラインに基づき、農薬散布等を行う生産者や事業実施者については、国土交通大臣による許可・承認の手続きを簡素化するとしました。すなはち、両局長通知で、国交省の許可等を得るための申請手続きなどについて、農林水産航空協会(以下、農水協)や都道府県協議会等が代行申請をまとめてできる、許可期間は1年を限度として有効などです。一旦、国交省の許可等を受ければ、堂々と農薬散布ができるわけです
。
両局長通知では、申請書に『農水協が性能確認を行った無人航空機を飛行させる旨』『農水協が技能認定を行った者が無人航空機を飛行させる旨』を記載することで、手続きが簡単になりますが、ガイドラインにある無人航空機のリストにはドローンはなく、認定オペレーターもいません。
私たちは、これまでパブコメやそのほかの機会をとらえて、少なくともドローンでの農薬散布は許可すべきでないと主張してきましたが(記事t29201)、農水省は、拙速にも、今年のシーズンからドローンでの農薬散布ができるようにしたいとしていました。
★提示された暫定運行基準案
そのため、農水省は、3月9日に「マルチローター式小型無人機による農薬散布のための安全対策に関する説明会」を開催し、「暫定運行基準取りまとめ」を示しました。
これは、農薬空中散布の推進母体として発足し、有人ヘリから無人ヘリに至るまでの農薬空中散布を取り仕切ってきた農水協が農水省の委託を受けて、検討会を設置し、取りまとめたものです。
『現時点では、ドローンによる施肥や播種等での利用は想定できない』、『ドローンは25kg未満の機体がほとんどで、1回の飛行で農薬散布が実施できる面積は少ないが、機動的な飛行が可能となることから、中山間地域等の狭小な生産ほ場で利用されること』を前提に、農薬散布に関しての運行基準が策定されることになりました。
基準は、@機体関係基準、Aオペレーター関係基準、B飛行方法基準の3項目にわかれ、それぞれ、従来の無人ヘリと異なる個所は下線で示されました。
@については、機体の性能確認、機種の認定・機体の登録、整備・定期点検、整備事業所・認定整備士に関する事項が挙げられ、
Aについては、オペレーター資格要件、その操作実技や学科などの教習内容、教習施設の指定要件が決められています。
Bの飛行方法では、適用機種(現在未定)、飛行高度は2m、散布間隔は3〜4m、飛行速度は15km/時(上限20km/時)、風速は3m/秒(高さ1.5mの位置で、無人ヘリの場合と同じ)と決められました。
さらに、安全対策マニュアルでは、作業前の安全確保や、均一散布、安全操縦の項があり、『地デジ放送電波、携帯基地局電波、送電線の下では、電波の干渉を 受ける可能性があるので注意する。』『ダウンウオッシュ(下降気流)が弱く、横風を受けやすいため、散布時の風向、風速には十分注意する。』『マルチローターは小型かつ低空を飛行するので、オペレーターとナ ビゲーターの連携を特に密にし、安全飛行の徹底を図る。』などの記載が気になりました。
説明会での質疑では、5月までにオペレーターを認定するというが、教官すらこれから認定するという段階で間に合うのかという質問に対して、できるだけ早くしたいとの回答がありました。
また、この案に違反した散布があった場合、罰則はあるのかという質問には、農水省は、ガイドラインなので法令違反にはならない。ただ、ガイドラインに従わないと 農薬取締法違反になるかもしれない。残留基準違反になれば食品衛生法の規制を受けるとのことでした。国交省は、国交省の許可を持っていない場合は航空法に抵触するということでした。
★農水協に任せていいのか
農水省の運行基準でも、何から何まで、農水協が面倒を見ることになります。同協会のHPにある正会員は、有人ヘリ航空会社、無人ヘリメーカーや散布会社とその関連会社、農薬工業会、全農等の農業者団体など36社が名を連ねていますが、ドローンのメーカーは入っていません。
農水省はドローンが従来の無人ヘリコプター空中散布と比べ、『飛行高度、飛行間隔、飛行速度を厳格に保持する必要があり、横風が基準範囲内(風速3m/s以下)であっても、風下に防除対象植物と異なる農作物が栽培されている場合や民家がある場合等には、特に農薬の飛散(ドリフト) に十分配慮した散布飛行を心掛けるべき旨を技術指導指針に明記する必要がある。』としています。地上散布より100倍もの高濃度で、地上散布とかわらぬ2m高からまいて、残留基準をクリアできるのか、また、住宅地に近いところで散布することの危険性が一層増すのではないかなどの懸念を払拭させるような試験データも提出されていません。
機体は農水協が機種を認定し、その機種が販売された場合には、機体を登録し、認定整備事業所や認定整備士も認定する。さらに、実際にドローンを飛ばすオペレーターの認定、認定のための教習内容、教習施設、指導教官まで認定するというのは、いままでの無人ヘリと同じです。業界まかせでは、事故対策もなおざりになります。
今回の基準は、調査に使用した製造者が試作中の機体や散布装置を利用して作成したため、今後開発される機体や散布装置に応じて変更の可能性があるため、「暫定基準」としたとのこと。
運行基準の終わりに『今後の技術革新の成果や新たな性能を有する機体・散布装置の 開発等に基づき、運行基準等を随時見直していくべきものと考える。』とあります。こんな未熟な技術を仲間うちだけで、構成される農水協に丸投げしていいのでしょうか。
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作成:2016-03-31