室内汚染・シロアリ駆除剤にもどる


t29905#ジカ熱ら感染症媒介蚊対策〜増え続ける殺虫・忌避剤の使用#16-07
 厚労省は、ブラジルなどでのジカウイルス感染症の拡大に伴い、パブコメ意見募集を経て、「蚊媒介感染症に関する特定感染症予防指針」の一部を3月30日に改訂しました(
記事t29608参照)。その後、同省は、「夏の蚊対策国民運動」を展開する旨の事務連絡を、5月31日に発出しました。

★蚊対策国民運動の事務連絡
【参考サイト】厚労省:「夏の蚊対策国民運動」における蚊の対策に関する協力依頼について
            事務連絡(5/31厚労省発出)

【1】蚊の対策に関するリーフレット(公募された以下の強化月間の標語を埋め込んだ3つの文書)の活用が求められています。
@一般国民向け(ジカウイルス感染症等の蚊媒介感染症の感染予防)
 ジカ熱・デング熱対策と大書きされ、標語「身支度の 仕上げに虫よけ ジカ予防」
A一般国民及び施設管理者向け(蚊を減らすための対策)
 ヒトスジシマカの発生源を叩け!として、水が溜まりやすい場所が図示され、標語「まぁいいカ!では困ります。放置の溜め水、濁り水」
B児童の保護者等向け
 ヒトスジシマカに注意!とした、先生や保護者、子どもへの呼びかけで、標語「小さくも 大きな脅威 蚊に注意」

【2】 厚労省が提供するジカウイルス感染症予防に関する政府広報オンラインについてで、ジカウイルス感染症を防ぐためのポイントや関連リンクの紹介、流行地域へ渡航する人への注意点などの情報が含まれているので、周知するよう求められています。具体的には、お役立ち情報として「ジカ熱 何が危ない?どう防ぐ? ジカウイルス感染症(ジカ熱)予防のポイント」が政府広報オンラインに掲載されています。

★新たな蚊忌避剤
【関連記事】記事t16803記事t16901記事t24708
【参考サイト】厚労省:防除用医薬品及び防除用医薬部外品の製造販売承認申請に係る手続きについて(薬生審査発0615第1号)と
           手続きに関する質疑応答集(Q&A)(6/28)
       医薬品医療機器総合機構イカリジンの審査報告書(イカリジン5%含有のエアゾール剤)
       フマキラー:有効成分「ディート」ならびに「イカリジン」の高濃度製品の開発・販売へ(6/27)、
             天使のスキンベープ(イカリジン5%)と同プレミアム(8/08、イカリジン15%)
       大日本除虫菊:虫よけキンチョールDF(イカリジン)

 感染症媒介蚊対策の中で、生活圏にいる蚊にさされないようにすることは重要です。  私たちは、室内での蚊帳の利用、屋外・外出時は肌を出来るだけ露出しない衣類を身につけたり、網戸を利用して室内への蚊の侵入を防止する物理的手段、殺虫剤を使用しない蚊の捕捉機器など、薬剤を使用しない対策が優先されるべきだと考えています。
 いままでにも、ディートを主とする蚊忌避剤について、いわゆる不快害虫用虫よけ剤と明確に区別した上、安易に使用することのないよう、蚊対策の指針に問題点と注意事項を記載するとともに、新たな通知でディート使用の注意を喚起することを厚労省に求めましたが、いまだ、実現されないどころか、前記のリーフレットは「虫よけ剤」となったままです。
 これに輪をかけるように、厚労省は、2016年6月15日薬生審査発0615第1号を発出し、いままでになかったディート30%含有と新成分イカリジン15%含有の忌避剤の防除用医薬品及び防除用医薬部外品の製造販売承認申請手続きを迅速化し、9月30日までに承認する旨を通知しました。早速、アース製薬とフマキラーがこれに応じています。わたしたちは、2つのスプレー製剤について、補助成分を含め、人や環境への影響試験データの開示し、毒性を示した上で、使用上の注意の表示強化を求めました。ディートについては、いままで12%以下で6カ月未満の乳児には使用しないとなっていたことに加え、30%剤では、12歳未満を使用禁止としていることが、徹底されねばなりません。

  厚労省への要望と質問(7/05);
   感染症媒介蚊対策の殺虫剤について
   感染症媒介蚊用忌避剤について


★忌避剤入り衣料製品は野放し
【関連記事】記事t16803記事t25206記事t30005
【参考サイト】帝人フロンティア:スコーロン帝人カタログ
       (アース製薬/帝人ネステックスの特許 国際公開番号WO2005/018329 では
         フェノトリン(商品名スミスリン)使用の実施例あり。
       カタログハウスインセクトシールド社メッシュパーカや虫よけメッシュクロス(ペルメトリン)
       マックハウス防虫ウエア(ピレトリン)
       モスキーヒ;ネットパンツ(ディート系マイクロカプセル)
       Yahoo Shopping:日除け付防虫サファリハット(ディート系とヒノキチオールのマイクロカプセル)

 アメリカでは、2015年のウエストナイル熱発生数は全米で2060人(うち死者119)で、これに加え、ジカウイルス感染症が広がることが懸念され、有人ヘリコプターによる空中散布がボウフラ対策で実施されています。たとえば、ニューヨーク州では、地区毎に計画が立てられ、殺虫剤メトプレン系粒剤やBT(バチルス・チューリゲネシス)系の生物農薬が散布されました。しかし、カリブ海のプエルトルコに対し、アメリカのCDC(疾病予防センター)やEPAは、蚊にピレスロイド耐性がついているとして、有機リン系のBRP(ナレド))剤*を空中散布することを強く求めています。同国政府は、ヒトや環境への影響を懸念して、論議が続いています。
 *注:BRP(商品名ジブロムなど)の農薬登録は、2006/12/19に失効している。代謝物にDDVPがある。薬事法にもとづく殺虫剤指針に掲載されていたナレド乳剤、ナレド油剤は、1990年指針では削除されている。

 日本では、いまのところ、空中散布の実施計画はありませんが、殺虫剤メーカーが前述の蚊忌避剤の製造販売にのりだしているだけでなく、蚊の忌避成分や殺虫成分で加工した衣料製品の販売が目立ちます。
 帝人の「スコーロン」(フェノトリンを固着処理したポリエステル製)による衣料品がフォックスファイア社から、ペルメトリンを用いたインセクトシールド社のメッシュパーカーなどがカタログハウス社から、ピレトリンを用いた防虫ウエアがマックハウス社から、さらには、ディートをマイクロカプセル化して生地にコーティングしたネットパンツや、日除け付防虫サファリハットも販売されています。
 また、大日本除虫菊(キンチョウ)が、不快害虫用に、直接、衣服に噴射する「虫コナーズPRO 服にかける虫よけスプレー」を販売しています。その成分はブチルアセチルアミノプロピオン酸エチルという新たな忌避剤で、アルコールや香料ほかも含有されています。
 これらの製品が、いずれも、薬機法の規制の対象外であることも懸念材料です。
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作成:2016-08-31