空中散布・松枯れにもどる
t30205#2015年度の無人ヘリコプターの都道府県別農薬散布実績〜防除面積も、機体数も、事故数も前年増#16-10
【参考サイト】農水省:平成28年度以降に向けた無人航空機の安全対策の徹底及び平成27年度の事故情報の報告状況について
平成27年度 農林水産航空事業 実施状況:全国、都道府県別有人ヘリ、都道府県別無人ヘリ。H21-27年推移
農薬空中散布を行う無人ヘリコプターの事故は、2014年49件、2015年53件と増加しています(記事t30303、記事t30405参照)。
今号では、その背景にある無人ヘリ散布状況を、2015年度の無人ヘリコプター機体数、オペレーター数、対象作物別防除面積が農水省のHPにアップされましたので、当グループが実施し、前号で一部紹介した都道府県アンケート結果とともに、紹介します。
★無人ヘリ空中散布面積105.8万ha
【関連記事】記事29002(2014年散布実績)
表には、2015年度の無人ヘリ空中散布実施状況を都道府県別に示しました。
延べ面積は前年より8142ha増え105万7978ha。水稲に限れば、散布面積は全体の87.3%の92.34万haで(水稲には、播種も入っていますが、その比率はわずかで、殆どが農薬散布)、前年よりわずかに減少したものの、有人ヘリ空中散布面積の25.6倍でした。麦類及び大豆防除はそれぞれ、前年から1万ha、3300ha増えています。その他の7565haには、松くい虫対策が含まれており、約3分の2が該当します。
【散布面積】都道府県別の順位は前年と同じで、北海道が一番多く、18万8985ha,ついで、山形10.2万ha、秋田9.9万ha、新潟7.6万haと米どころが続きます。散布されていないのは、沖縄、東京、神奈川、大阪、和歌山の5都府県で、面積が少ないのは、群馬459、山梨247、奈良246各haです。前年からの面積変動の大きな県は、増えたのが北海道18101、熊本4324、長崎4062、栃木3474、新潟2055各haで、減少したのは、大分7732、兵庫4064、佐賀3235、青森2893、岩手2302haでした。
【機体数】農林水産航空協会が認定した機体数は、前年から147増の2802機となりました。なお、この年には、ドローン型の認定機種はまだありません。
100機以上保有する県は、北海道284、新潟210、秋田207、大阪193、山形181、東京149、栃木146、福岡114、青森104でした。秋田で前年から17機、岐阜で10減少した反面、山形で23、新潟で18機増えています。また、防除面積がゼロの大阪と東京で、それぞれ前年から54機、44機増えました。
【オペレーター数】同協会の認定者数は前年より1219人減り、1万591人となりました。大阪、奈良、和歌山、沖縄が変わらず、他の都道府県ではすべて減少、北海道126、秋田123、山形108人減ったのが目立ちます。来年からは、無人ヘリとドローン型の認定者数に分けて公表されることを期待しています。
表 2015年度の無人ヘリコプター空中散布の実施状況 (*は当グループ都道府県アンケート結果)
*実施 *16年度 機体数 オペレー 散布面積(ha)
県名 主体数 計画数 ター数 水稲防除 麦類防除 大豆防除 その他 合計 前年増減
合計 − 2,802 10591 923,365 70,989 56,059 7,565 1,057,978 8142
北海道 112(8) − 284 1619 164,747 17,992 3,772 2,474 188,985 18101
青 森 89(5) 29 104 534 48,859 94 2,920 290 52,163 -2893
岩 手 768(69) − 62 293 24,434 1,280 1,665 130 27,509 -2302
宮 城 266 78 93 285 46,437 3,670 13,539 342 63,988 732
秋 田 97(0) 4 207 986 94,759 74 2,471 1,803 99,107 -1870
山 形 138(1) − 181 864 97,643 32 3,862 0 101,537 -565
福 島 139 25 9 100 9,886 117 819 51 10,873 532
茨 城 157 53 60 412 23,525 2,518 1,806 146 27,995 -1289
栃 木 255 42 146 365 38,168 7,580 715 343 46,806 3474
群 馬 9 4 6 26 331 128 0 0 459 51
埼 玉 28(5) 86 35 54 3,494 2,821 270 48 6,633 412
千 葉 156(0) 156 70 245 25,446 227 223 39 25,935 -844
東 京 0 0 149 12 0 0 0 0 0 0
神奈川 0 0 0 8 0 0 0 0 0 0
山 梨 2(0) 2 3 29 232 0 15 0 247 -11
長 野 44 12 42 154 5,551 72 692 314 6,629 284
静 岡 119 19 23 148 3,439 112 36 160 3,747 57
新 潟 70(7) 39 210 769 71,479 311 3,926 768 76,484 2055
富 山 26(4) 224 45 228 22,889 1,916 2,070 58 26,933 689
石 川 19 2 92 220 23,402 1,547 1,323 132 26,404 -591
福 井 26 32 46 182 21,640 3,970 1,481 0 27,091 1285
岐 阜 33(0) 216 19 188 9,484 2,641 1,128 0 13,253 -681
愛 知 30(14) 245 29 107 3,380 3,333 1,535 18 8,266 364
三 重 18 57 42 144 9,442 1,869 527 0 11,838 -1731
滋 賀 35(3) 32 58 271 11,014 4,754 3,498 0 19,266 338
京 都 4 3 7 18 2,731 105 31 118 2,985 -312
大 阪 0 0 193 9 0 0 0 0 0 0
兵 庫 36(5) 31 56 128 11,006 616 218 10 11,850 -4064
奈 良 12 − 5 9 70 124 42 0 236 92
和歌山 0 − 0 0 0 0 0 0
鳥 取 6 − 11 42 6,399 1 226 0 6,626 183
島 根 114 3 23 91 5,419 400 104 0 5,923 269
岡 山 34(0) 3 27 64 5,517 776 169 30 6,492 -507
広 島 231 5 29 78 5,841 12 47 26 5,926 -177
山 口 23 − 50 194 14,422 928 461 30 15,841 -699
徳 島 12 − 2 24 944 0 0 0 944 -207
香 川 2 3 7 11 813 59 20 0 892 -229
愛 媛 10 117 20 53 4,644 908 182 0 5,734 271
高 知 8 12 18 68 4,347 0 0 0 4,347 1621
福 岡 回答なし − 114 332 13,286 4,840 1,623 161 19,910 -573
佐 賀 140 31 52 269 21,752 2,447 3,970 0 28,169 -3235
長 崎 27 17 38 185 13,051 736 344 6 14,137 4062
熊 本 43 46 48 234 23,379 1,850 77 3 25,309 4324
大 分 18 2 40 194 6,474 83 18 0 6,575 -7732
宮 崎 13 2 14 212 12,312 46 178 65 12,601 -602
鹿児島 56 56 33 126 11,277 0 56 0 11,333 306
沖 縄 0 1 0 7 0 0 0 0 0 -246
★都道府県アンケート調査より
【関連記事】記事t30102
反農薬東京グループの無人航空機に関するアンケート調査
「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」が、昨年12月10日から施行されました(t29402参照)。
この通知で、都道府県の役割は、
@実施主体に対し、空中散布等の安全かつ適正な実施のために必要な指導及び助言を行うこと、
A空中散布等の安全かつ適正な実施のために必要な情報及び資料の収集及び提供を行うこと、
B都道府県協議会の構成員として参画するとともに、都道府県協議会が設置されていない場合は、当該都道府県の植物防疫部局等が当該協議会の役割を担うこと、
となっています。
記事t30102で述べた、当グループが5月に実施した都道府県アンケートでは、この役割に関する質問をしました。その結果の概要を示します。
【協議会について】各都道府県には、実施団体、農業関連団体、機体メーカー、農薬関連団体ほかにより、無人ヘリ協議会等が設置されているところがあり、これに、県の担当部署や病害虫防除所ほかが参画することもあります。実態は以下でした。
・協議会等がない:群馬など14都府県
・協議会等があり県が構成員である:青森など27府県
・構成員でないが助言などする:北海道など6県
【2015年度の実施主体数】2015年度の実施主体数を尋ねました。結果を表に示しました(表中()は内数として個人数)。実施主体数の県別で岩手県が768と特に多かった理由はわかりません。
【2016年度の実施計画数】アンケートを実施した5月には、具体的な散布計画が出揃っておらず、表に示したような数値しか回答が得られませんでした。
【国交省許可・承認の確認について】無人航空機による農薬散布について、国交省に申請、国交大臣の許可・承認が必要になりましたが、実施主体が航空法に違反していないか、都道府県が、との程度確認しているかを問いました。
大部分の都府県は、農林水産航空協会、協議会、実施主体などから、許可・承認を受けた旨の情報で知るとしていますが、航空法の許可・承認情報を把握していないところが、以下の14道府県ありました。
北海道、宮城*、新潟、茨城*、千葉*、京都、三重*、和歌山、島根、広島、岡山、宮崎、熊本、鹿児島(*は個人情報なので確認できないとした)
★国土交通省の許可・承認報告から
【関連記事】記事t29402
【参考サイト】国土交通省:無人航空機の飛行ルールの頁にある「許可・承認を行った内容の公表」の項(H27年度、H28年度リストあり)
農林水産航空協会:Top Pageとお知らせにあるマルチローター式小型無人機による農薬散布の暫定運行基準取りまとめ
ドローン型の指定教習施設:エンルート、丸山製作所、ヨコヤマ・コーポ、東光鉄工
国土交通省が公表している資料によると、8月20日現在、無人航空機よる農薬散布の許可・承認件数(航空法132条の2により、危険物輸送と物件投下に該当するもの)は248件あります。
申請者別の件数(数値は複数の実施主体の代行者としての包括申請があり、散布計画実数ではない)は、個人が一番多く85、農林水産航空協会41、ドローンメーカーの東光鉄工14、エンルート7、丸山製作所6と自作機販売の山本商会6件と続きます。
この資料では、個人の申請はすべてドローン型又は自作機で、期間が2ヶ月から1年となっており、実施地域の多い順は、北海道10、栃木8、千葉と熊本各7件です。
農林水産航空協会の申請は、5月までは殆どが無人ヘリですが、その後、ドローン型が増えています。実施場所は多くの場合、農用地や教習施設が定める場所となっており、その期間も最長1年です。
実施地域が記載されている団体で多い順は、北海道16、岩手14、山形12、秋田と千葉各11件ですが、この資料では、全国で何件の空散が行われているかわかりません。
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作成:2016-12-30