:空中散布・松枯れにもどる

t30303#2015年の無人ヘリ事故が件数は53件〜農水省の事故報告と対策#16-11
【関連記事】記事t28801(2014年の事故報告)、記事t30205記事t30405
     空中散布・松枯れの記事一覧
【参考サイト】農水省:平成28年度以降に向けた無人航空機の安全対策の徹底及び
           平成27年度の事故情報の報告状況について
           平成27年度 農林水産航空事業 実施状況全国
            都道府県別有人ヘリコプター都道府県別無人ヘリコプターH21-27年推移

 記事t30205で、2015年度の無人ヘリコプター機体数が2800機を超え、そのうち、53機が事故を起こしたことを報告しましたが、本号では、農水省植物防疫課が発表した個別事故の詳細を紹介します。15年は死亡・人身事故はありませんでしたが、総件数は14年と比べ、4件増えました。

★架線への接触事故が92%の43件
 事故事例は、次頁の表に挙げたとおりですが、発生年月日と大まかな事故状況、被害状況が開示されているだけで、私たちの開示要求している発生場所は明らかになっていません。
 水稲防除での事故が50件、大豆防除が3件で、すべて7-9月に発生しています。前年1件あった人身事故は2015年はありませんでした。なお、不時着など軽微なものは、事故報告には入ってきません。
  【事故状況別件数】( )は2014年
   ・架線(電線、電話、電柱支線、ケーブルテレビ等) への接触:49件(41)、
   ・建物などへの接触: 1 件(6)、
   ・立ち木への接触;1件、
   ・旗掲揚ポールへの接触:1件、
   ・電波混信による墜落:1件
   架線接触事故のうち、11件は機体移動中に発生しています。

  【被害状況別件数】
   物損事故は前年4件増の52件。延べ件数で一番多いのは、機体損傷で48件(うち大破14)と
   架線等の切断・破損48件(うち停電7)でした。昨年2件づつあった農薬流出と農作物被害はありませんでした。

  【事故原因別件数】( )は2014年
   表には、〇番号(内容は以下と同じ)で事故原因と延べ件数を示してありますが、各事項の件数は以下のようです。
   @事前の確認不足による障害物の見落とし:27件(17)
   Aオペレーターとナビゲーターの連携不足:36件(25)
   Bオペレーターの操作ミス、目測誤り:31件(23)
   C飛行の高度、方向等が不適切:26件(33)
   Dその他(足を滑らせる、通信機器の故障等):7件(15)
  一番多いのは、オペレーターとナビゲーターの連携不足(情報共有不足、不適切な配置、指示の遅れ等)で36件ありました。

★原因追究が不十分
上記の事故原因は、すべて、散布関係者の報告によるもので、第三者が機体やコントローラーの整備不良の有無をきちんと調査することもなく、操作ミスとしてオペレーター等に責任を押し付けるケースが多いと思われます。また、事故を起こした当事者に認定証の取消しなどのペナルティーを科する制度もありません。
★農水省の2016年通知では
 事故調査で架線接触事故が最も多いことを踏まえ、農水省は本年度の通知で、事故防止ポイントとして、@空散実施前の実地確認すること。A散布中に、ナビゲーターは、オペレーターに対して障害物等に関する情報を正確に伝えること。B実施区域に隣接していないほ場又は飛行経路上に家屋、架線等がある隣接したほ場に移動させる場合は、無人航空機を着陸させ、陸上で運搬することなどを挙げています。また、ドローン型については、風の影響を受けやすい周辺に農薬が飛散しないよう十分注意することや機体が小さいことから、機体とオペレーターの距離が、水平距離で50mを超えないこと、地上デジタル放送電波や携帯基地局電波等の干渉を受けやすいことに十分注意すること、としています。
 しかし、私たちが求めている住宅地周辺での空散布禁止、緩衝地帯の設置は、一向に実現しないどころか、散布計画のHPによる周知も、なかなかすすみません。

★無人ヘリ事故に警察の捜査は入るか
【参考サイト】国土交通省:無人航空機の飛行ルールの頁にある
       「許可・承認を行った内容の公表」の項(H27年度、H28年度リストあり)
●無人航空機に係る事故等の一覧(国土交通省に報告のあったもの):
      2015年度2016年度

 2015年の報告は、昨年12月に施行された改定航空法による法規制が、まだ、適用されていない時期のもので、以前の行政指導の延長線上にあります。
 本年度から事故については、ドローン型を含め、航空法違反の有無についても捜査が行われることもあると思いますが、現在のところ、無許可で人口密集地や夜間に飛ばした人が書類送検された程度で、農薬散布事故に関する報道はみられません。

   表 2015年の無人ヘリコプター事故状況(農水省公表資料より) −省略−


購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いくださ い。
作成:2017-03-30